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知ることができて良かった


 白石さんの熱意のこもった話は終わり、なんとなく俺にも真凛ちゃんの良さがわかった気がする。

多分だけど。


「あのさ、この写真自分で撮ったの?」

「そう。スマホで」

「この写真の下にある撮影、編集って項目は?」


 どの写真にも同じように撮影と編集の項目があり、それぞれ名前が書かれている。


「撮影はその写真を撮った人。編集はレタッチとか加工した人かな」

「レタッチするんだ」

「もちろん」

「白石さんもレタッチするの?」

「するよ、私の場合はスマホのアプリだけどね」

「そっか、俺もバイトでよくレタッチするから、あの作業結構大変だよね」


 変なところで共通の話題ができてしまった。


「そ、それでさ……。どう思う?」


 どう思うと言われましても、そもそもオリジナルのキャラが全く分からないしな。

適当にはぐらすか? いや、それは良くない。


「ごめん、オリジナルのキャラがわからないから似ているのか、似ていないのかもわからない。あ、でもキャラを知らなくても、この子は可愛いよ」

「か、可愛い……」

「あ、白石さんじゃなくて、真凛がさ──」


 白石さんが普段は見せないような表情になった。

頬を赤くし、照れているみたいだ。


「あ、ありがと……。直接言葉にして褒めてもらえるって、結構恥ずかしいんだね……」


 そんな表情をしている白石さんを、間近で見ている私も恥ずかしいです。


「でもさ、真凛ちゃんを知っていれば、もっと何かコメントが言えると思うんだよね。残念だよ」

「だ、だったらこれを貸してあげる」


 勢いよく立った白石さんは本棚から何か手に取って、戻ってくる。

突然立ち上がり、振り返るもんだからその勢いでスカートがめくりあがり、結構きわどかった。

もし彼女が無意識でやっているのだったら大変危険だ。


「これと、これ。無期限でかしてあげる。家に帰ったらぜひ」


 満面の笑顔で俺にすすめしてくる。

差し出された物を見てみると、原作と思われる小説。

そして、コミックにパッケージに入ったディスク。

あ、ゲームの案内が書かれたカードまで。


「こ、これは?」

「これは私のコレクション。小説読んだら、コミック。そのあとにアニメを見て。最後まで見たらゲームをする。その順番が一番心に響くから」


 なぜ順番が必要なんだ? でも、白石さんがそう話すのだから間違いはないだろう。


「か、帰ったら読むよ。でも、この量は持ち帰れないから、小説だけでいいかな?」

「もちろん。読み終わったら返してね、次はコミックかすから」

「あ、はい」


 どうやら俺は彼女から逃げられないようだ。

でも、本当に意外だな。結構まじめでアニメとか疎いと思っていた白石さんがアニメ好きとは。

しかも、こんなに話す白石さんは見たことがない。普段は話さないようにしているのかな?


「わからないことがあったら、何でも聞いてね。あ、LIME交換しておく?」

「あ、はい」


 彼女とメッセージ交換用のアプリのアドレスを交換する。

同級生の女子と初めて交換してしまった……。

ふと、スマホの時計を見ると、結構いい時間になっている。

というか、まずい時間だ。


「ごめん、話の途中だけど、もう帰るよ」

「そう……。引き止めてごめんね」

「そんなことないよ。白石さんの事、知ることができて良かったよ」

「私も広瀬君の事、知ることができて良かった。また、明日学校でね」


 彼女に見送られ、喫茶店を後にする。

早く帰らなければ──。


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