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ここで何を?


 俺の手にはきわどい服を着た序女性が表紙を飾っている雑誌が握られている。

のぅぁぁぁぁぁ! 心の中で叫ぶ。


 『月間コスプレイヤー』


 俺は思わずバッグの奥に無理やり突っ込む。

心拍数が高まり、少しだけ手が震える。

マ、マスターに見られた? 気になり視線を上げる。

幸いなことにマスターはカウンターの奥の方におり、俺の手に持っていた雑誌は見られていなかった。


 気を取り直し俺は機材の準備をする。

しかし、さっきの表紙はすごかった。服装も派手だけど、映っていた女性は結構奇麗な人だった。


 カメラにストロボを付け、充電済みのバッテリーを入れる。

シャッタースピードと絞りを調整し、外に出て何枚か試し撮り。

こんなもんかな。


 ホームページに掲載する場合、個人情報とかの問題で人を出さない方が良い。

俺はファインダーを覗きながらシャッターを切っていく。


 数十分後、外装と内装を撮り終わりカウンターに戻る。

液晶に映ったお店の外観や店内の写真をじっくりと見る。

いい感じじゃないか? 自画自賛である。


「では、メニューの方も撮影していきますね」

「よろしくお願いします。オーダーお願いします。サンドイッチとナポリタンをカウンターに」


 マスターはカウンターの奥にある厨房に向かってオーダーを入れる。

しかし、厨房からは返事はなく、誰もいないような感じがした。


「厨房にいるのは娘でね。接客が苦手みたいなんで厨房なんですよ。本当はフロアに出てほしいんですけどね……」


 接客が苦手。コミュ障なのか? でも、家の手伝いなんだし、それはそれでいいのか?


「コーヒーは私がいれますね。オリジナルブレンドがおすすめです」


 出されたのはコーヒー。きれいなカップに入っており、いい香りが漂ってくる。

危うく飲みそうになってしまった。


「きれいなカップですね」

「このカップは娘のお気に入りでね。では撮影を始めててください。後ほどサンドイッチとパスタを持ってきますね。紅茶とケーキは最後に」

「わかりました」


 コーヒーを撮影している間に、サンドイッチとパスタをマスターが持ってきてくれた。

撮影中、俺は地獄を感じる。おいしそうな香りが漂い、激しくおなかが鳴っています。


 一枚一枚、丁寧に撮影し、ファインダーに収めていく。

撮影もひと段落し、椅子に座りながら撮影した写真を確認していく。


「どうですか? おいしそうでしょ?」

「えぇ、今すぐに食べたいくらいおいしそうですね」

「撮影が終わったら食べてもいいですよ」

「いいんですか!」

「それくらいはサービスしますよ。栗駒さんにもよろしくお伝えください」

「伝えておきます!」


 俺は撮影を終わらせ、大変おいしそうなパスタとサンドイッチをいただく。

コーヒーもおいしくいただき、おなかも膨れた。

特にパスタがおいしい。丁寧に作ってくれたのか、家庭の味というのか。

これはプライベートでもまた来たくなる一品ですね。


「次は、ケーキと紅茶のセットを。おーい、持ってきてくれるかー」


 厨房にいた娘さんとやらが、トレイに紅茶とケーキを乗せて持ってきてくれた。

俺は手に持っていたカメラをテーブルに置き、やってくるケーキセットの方に視線を向ける。


──カシャ


「おまたせ──」


 どこかで聞いた声がした。

目の前にエプロンを付けた白石さんがいる。

え? 白石さんにそっくりな人?


「広瀬、君? ここで何を?」


 白石さんはビックリしていると思うけど、なぜか無表情だ。

白石さんトレイを持ちながらゆっくりと俺に向かって歩いてくる。


「えっと、バイト……」

「バイト? ここでバイトしているの?」

「ちが、違うよ。こっち、写真を撮っているんだ」

「写真?」


 学校ではほとんど会話を交わしたことのない白石さんは無表情のまま俺に話しかけてくる。


「あおばの友達かい?」


 マスターが声をかけてくる。


「うん。クラスの、隣の席」

「そうだったんだね。全く知らなかったよ。挨拶が遅れて申し訳ない、あおばの父です」


 カメラのファインダーに映ったこの店の看板が俺の視界に入ってくる。


『喫茶店 ホワイト・ストーン』


 ホワイトストーン。

白、石。うん、ホワイトストーンですね。


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