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そんな下から撮らないでよ!


 着替えが終わった白石さんはメイクはしていないが、真凛のコスプレ衣装を身にまとっている。

黒っぽいミニスカをはき、若干胸が強調された服。長いしっぽの先がハートになっており、どこを見ていいのか迷う。


「どう、かな?」


 答えに困る。


「あおば、可愛い! なにそれ、写真撮ろう!」


 槻木さんは鞄からスマホを取り出し、写真を撮り始める。


「いいね、可愛い!」

「あっ、ちょっと、そんな下から撮らないでよ!」

「なんで?」

「なんでって……。アンダーはまだはいてないから……」

「そうなんだ。じゃぁ、一緒に撮ろう」


 顔をくっつけて二人で撮っている。

俺はその様子を見ながら、裁断していく。

俺も撮った方がいいのか? でもまだメイクとかしてないしな。


 しばらく撮影会が行われ、二人とも楽しんだようだ。


「そろそろいいか?」


 俺は裁断が終わった布をまとめ、白石さんに問いかける。


「ごめん。すっかり任せちゃったね」

「いや、それはいいんだけど。この後は?」


 少し頬を赤くしながら、俺の袖をつかんでくる。


「あ、あのさ。このままでもいいから、何枚か撮ってほしいな」

「メイクとかは?」

「メイクは無くてもいいの。どんなふうに撮ってもらえるのか、ちょっと試したくて」

「だったら私も! あおばの後に撮ってよ」

「別にいいけど……」


 幸い栗駒さんは不在。せっかくなので、スタジオのセットを使わせてもらおう。


「じゃ、こっちで」


 簡単にスタジオの準備をして二人を案内する。


「ここがスタジオ……」

「こんなところで撮ってもらえるんだ!」


 二人がはしゃいでる。


「何枚か撮ったら終わりにするよ」


 白石さんにレンズを向け、何枚か撮る。


「もう少しあご引いて、ちょっとだけ右向いて」

「こう?」

「右手の先をもう少し上に」

「こうかな?」

「おっけ。撮るよ」


──カシャ


「じゃ、次は座って目線は右に」

「こ、こんな感じ?」

「んー、もう少し足を開いて、目線は高く」

「こ、こうかな?」

「左手を少し上に、そう。そこで止めて」


──カシャ


「ふぅ。こんなもんかな? 終わりにしようか」

「んー、疲れた! 撮ってもらうって大変なんだね」

「写真見てみる?」

「見るっ」


 パソコンに転送した写真を三人で見てみた。

ん、いい感じじゃないか? でも、もう少し近くでライトを当てた方がきれいに映るかな……。


「あおば可愛い! なにこれ、いいねっ」

「自分で撮るよりもすっごく奇麗。広瀬君ありがとう」

「でも、ここが……。あと、この角度とか……」


 真剣な目で、写真をアップにしたりまじまじと見てしまう。

まだだ、まだうまく撮れない。


「広瀬っち、目が怖いよ」

「里緒菜、広瀬君は真剣に見てくれているんだよ。ほら、私たちの声なんて届いていない」


 どうしたら。もっと、もっとたくさん撮って、色々なところで撮影して、何枚も見ないと。

経験が足りない。今まで人物を撮ることから逃げていたつけが回ってきてしまった。


「ひ、広瀬っち?」


 我に返る。


「ん? どうしたの?」

「私の話聞いてくれてた?」

「ごめん、聞こえてなかったかも」

「次は私の番。よろしくねっ」


 虎耳を付けた槻木さんも何枚か撮ってみた。

彼女は少しふざけた感じで、四つん這いになったり、転がったりしている。


「どうかにゃ?」

「まー、いいんじゃないか? テスト撮影だし」

「……なんかあおばの時と比べて、雑じゃない?」

「そんなことないよ」


 でも、白石さんの写真を見たとき、少しだけ見ほれてしまった。

あの日、公園で撮った写真。その写真と同じ目をしている。


 この、どこまでも遠くを見ているような、澄んだ瞳。

この瞳はカメラのレンズを経由して、俺にだけ向けられている。


 そう考えると自然と鼓動が高くなる。


「でも、こうして実際に着てみるとコスプレって楽しいね。早く完成させたいよ」

「そうだね、早速作業に取り掛かろうか」


 二人は衣装を着たまま作業に取り掛かる。


「里緒菜、ちょっと立ってみて」

「こう?」


 白石さんが裁断した布を槻木さんの衣装に合わせていく。


「こんな感じになるんだね。うん、いい感じ」

「そんな風になるんだ。かっこいいね」

「やばい、楽しい。早く完成して、写真撮りたいっ!」


 時間が過ぎるのを忘れ、俺たちは遅くまで作業に没頭する。


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