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ミシン貸してもらえませんか?


 イベントの日まで約一週間、今日はバイトがあるので白石さんの家には二人が行っているはず。

サードストリートで買った古着をリメイクし、切ったり新しい布を当ててコスプレ用の衣装を作っている。


 大きな作業自体は白石さんがしているようで、部屋にミシンを持ち込みせっせと布を走らせているようだ。

槻木さんは衣装以外の装飾品の作成をしたり、白石さんにコスようのメイクを教わりながら四苦八苦している。


「終わりましたー」

「どれどれ」


 今日の撮影は予約なし。つい最近まで予約は多かったが入学シーズンが終わったのか予約件数は減る一方。

このままではこのスタジオがつぶれてしまうんじゃないか?

本気で心配する。


「なかなかうまくできているな。テストサーバーにはアップしたのか?」

「はい、言われた通りにファイルはアップロードしています」

「優一の初撮影の写真だ、先方にテストアドレスの方をメールで送っておいてくれ。問題がなければ公開しよう」

「わかりました。すぐに送りますね」


 栗駒さんにホームページの作成方法を教わりながら今回はほぼ俺がメインでホームページを作った。

初めは戸惑ったけど、一度覚えると結構簡単にできる。

仮ページのアドレスを張り付けて、メールを送信。

あとは連絡を待つだけだ。


「送りました。これで問題がなければこの仕事も終わるんですね」

「いやいや、ここからが本番だよ」

「本番?」

「そう。初めのページ作成は安く作る。そして、更新の時にも料金を頂戴する。更新しないと古いページになってしまうからね。高確率で再度更新依頼が来るのさ」

「なるほど……。というと、新しメニューとかが増えたら、また写真を撮りに行くんですか?」

「そうだ。その時はよろしくな」

「わかりました。任せてください」


 そんな話をしながら、ここ数日で撮った写真のデーターを整理し始めた。


──ピローン


 LIMEが届いた。誰だ? 未来みらいか?

夕飯までには帰るって言ってからバイトに来た気がするんだが……。


 送られてきたメッセージを見ると白石さんからだった。


『広瀬君、ミシンって持ってる?』


 ミシン? 家にもあるし、このスタジオにもあるな。


『あるけど? どうかしたの?』

『壊れた』


 こ、壊れた! え? だってイベントもうすぐでしょ?


『衣装は間に合いそう?』

『無理かもしれない……。新しいミシン買う予定もしばらくないってパパが……。広瀬君、ミシン持ってたら貸してもらえないかな?』


 貸してもいいけど、重いですよ?


「優一、どうした?」

「あ、えっと白石さんから連絡が来ていて……」


 バイト中に私用でスマホを見ているとは言えない。


「もう返事が来たのか、早いな。どうだ?」

「も、もうちょっと詳しく聞いてみますね」


 俺は慌てて画面を消し、店の電話から白石さんの自宅に電話をかける。


『はい、白石です』

「もしもし、栗駒スタジオを申します」

『広瀬君?』


 よかった白石さんが出てくれた。


「えっと、さっきメッセージを送ったんですが……」


 隣で栗駒さんが俺の話を聞いている。


『みたよ。ミシン持ってない?』


 おっふ。どうやってごまかしながら話を進めれば……。

ええーい、ままよ!


「ミシンはスタジオにもございます」

『ほんと! よかった! 貸してもらえないかな?』


 話がどんどんずれていく。


「はい、お貸しすることはできます。ただ、スタジオから出すことができないので、ご来店していただければ……」

『本当、助かる。じゃぁ、今から行くね! 里緒菜、広瀬君のバイト先にあるって。貸してもらえるみたい』


 まずい。まずい!


「お、お待ちしております……」


 通話が切れた。


 栗駒さんの目を盗み、スマホで短文を作る。


『お店の仮ページできた。来る前に見てきて! お願い!』

『もうできたんだ。わかった、行く前に見ておくね』


 セーフ! これでスタジオに来ても仕事の話はできそうだ。

あとは……。


「く、栗駒さん」

「どうした? 何か問題でも?」

「ありません。 何も、問題はありません」


 俺は力強く訴える。


「そ、そうか……」

「今から白石さんがこちらに来るそうです」

「そうか、何か細かいところの修正でもあるのだろう。来たらヒアリングしておいてくれ」

「わたりました。あと、お願いが……」

「ん?」

「スタジオにあるミシン貸してもらえませんか?」

「ミシン? あぁ、あれか。いいぞ、好きに使って」


 あざーっす。


「助かります。白石さんにミシンを使ってもらってもいいですか?」

「構わんが? それより、今日はこの後ちょっと打ち合わせが入っている。店番頼むぞ」

「わかりました。打ち合わせって何の打合せですか?」

「幼稚園で運動会があるんだ。その写真撮影の打ち合わせ。優一も撮影に行けるだろ?」


 そう。俺は栗駒さんに人物の写真も撮ることを伝えた。

その話をしたときはものすごく喜んでくれて、肩を思いっきりたたかれた。

薄っすらと瞼に涙っぽいものがあったけど、見なかったことにしている。


 俺は栗駒さんに恩返しもしないとな。


「もちろんです。園児の笑顔、カメラにおさめますよ」

「期待してる」


 栗駒さんの温かい言葉をもらい、スタジオには俺一人になった。

そして、ミシンの捜索を開始する。


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