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併せって何?


「──だよね。やっぱりあのシーンだよね」

「あおばも初めから話してくれればよかったのに」


 二人の話は盛り上がっている。俺はなかなか二人の話に入っていけず、ちょっと寂しく感じる。

でも、白石さんは自分の本心を打ち明け、生き生きと笑顔で話している。

それが、なんだか嬉しい。


「ごめん、ちょっと昔色々あってね。でも、広瀬君に写真を撮ってもらうって決めたの。だから、親友にも告白しようって」


 告白? あれってそういう意味だったの?

危ない危ない、変にとらえていたぜ。俺はもう勘違いしない。

彼女は推しが好きで、俺の事はただのクラスメイトだ。

なるべく好意を持たないようにしよう。好意を持つこと、それは彼女にとってきっと足かせになってしまう。


「撮影? 何の撮影?」

「真凛のコスプレ写真。広瀬君カメラマンなの。すっごく撮るのうまいんだよ、ねっ」


 白石さんの視線の先には俺がいる。


「う、うまいかはわからないけど、今度コンテストがあるみたいなので応募用に撮ることが──」

「いいな……。私も一緒に撮りたい。あおばとあわせたい」


 あわせ? なにを併せるんだ?


「里緒菜と私で天魔併せ、か……。私もやってみたい」

「撮影っていつなの? そのコンテストって私も応募してみていい?」

「応募は個人で応募だけど、せっかくだし併せも撮りたいね。里緒菜ってコスするの?」

「したこと無いよ。でも、推しのコスプレはしてみたいと何回か……。あおば、いろいろと教えて」

「私にわかる範囲であれば。広瀬君、里緒菜も撮ってもらっていい?」


 俺は何の話なのか全く分からない。どんな話が進んでいるんだ?

二人一緒に撮るってことなのか?


「あ、あのさ。併せってなに?」

「んー、同じ作品とかで二人とか三人、複数人数で撮る事かな?」

「みんなで撮るの?」

「そ。みんな違うキャラで集まって、シーンの再現とか。きっと楽しいと思うの」

「ふーん、そうなんだ」


 俺の知らない世界が広がる。

でも楽しそうに話す二人を見ていると、こっちも少しだけ心が温かくなる。


「あおばと二人でコスの写真。楽しみだね。どこで撮影するの?」

「コンテストに応募したいから、外でちゃんと撮ってみたいんだけど……」

「そ、外? 私い一回もコスプレしたことなんてないんだけど?」

「私も外で撮ったことはないよ。でも、イベントは定期的に開催さてているから……」


 すると白石さんはスマホで何かを調べ始めた。


「あった。ここならどうかな?」


 画面を俺たちに向け、俺と槻木さんは映し出された画面を見ていく。

駅から遠くない。というか、この場所は行ったことがある。


「あおば、ここに行ったことあるの?」

「イベントではないけど、買い物には何回か」

「私もここ知ってるけど、そんなイベントやってたんだ」

「うん、どうかな? ちょうど連休でイベント開催するみたいだし」


 彼女のスマホを見るとゴールデンウィークの日程で三日間連続コスプレイベント開催と書かれている。

会場はここからそう遠くなく、最寄り駅からシャトルバスも出ている。


 アウトレットモールでのコスプレイベントか。

なになに、参加者にはニンジン一本まるまる使ったハンバーグランチをサービス。 

近くの公園や店内、水族館、デッキなどほぼ自由に撮影ができるらしい。

レンガ調の壁や洋風の窓、城のような屋根、そして隣の公園は芝生が多い茂り気持ちよさそうだ。

あ、この喫茶店すごいこった造りしているな……。


 これはコスプレ関係なく撮ってみたいかも。


「いいんじゃないか?」


 空いた時間でいろいろと撮ってまわれそうだし、勉強にもなるかも。


「広瀬君の参加費用はこっちで持つから、気にしないでね」

「参加費用? オカネカカルの?」

「そうだよ? コスはコスの。撮影も撮影者のほうで参加費が必要。あ、そんなに高くないから気にしないで」


 ふんっ! 女性に払わせるわけにはいかない! 俺は男の子だから!


「いや、俺も初参加だし自分で出すよ。色々と勉強したいし」

「そう? じゃぁ、お言葉に甘えて」


 こうして俺の初コスプレ撮影の日程が決まった。

絶対にいい写真を残してみせる。


「あおば、私何も用意してないんだけど……」

「大丈夫。二人とも、がんばろう」


 俺はこの後に起きる惨劇をまだ知る由もなかった。

まさか、あんなことになるなんて……。


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