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大きな靴下


初雪の夜、俺が壊れたテレビを見つめて絶望している間、朝宮はリビングの窓から見える裏庭で、小さな雪だるまを何個も作って遊んでいた。


掃部かもんさんも遊びません?」


そしてたまに窓を開けて、こうやって話しかけてくる。


「寒い。窓開けんな」

「そんな画面見つめてたら、本当に頭おかしくなりますよ?」

「年末から新年にかけて、見たい番組あったのに‥‥‥特番いっぱいあったのに‥‥‥」

「そんな時こそ遊んで忘れましょう! それぇ!」

「冷たっ!」


外から雪玉を投げられ、こういう時の朝宮は遊んであげないと、ずっとしつこいことも知っている俺は、厚着をして裏庭に回った。


「やっと出てきましたね! 一緒にかまくら作りましょ!」

「かまくら? どうせ中でミカン食べたいとか、そんな理由だろ」

「よく分かりましたね! 先に作っておくので、ミカン買ってきてください!」

「いつもパシリに使いやがって。たまには自分で行けよ」

「夜に女の子を一人で行かせる気ですか?」

「分かった分かった。ミカンだけでいいのか?」

「プリン! なんかこう、上にモンブランが乗ってるやつがあると思うんですけど、それがいいです!」

「コンビニにあるのか?」

「はい!」

「んじゃ行ってくるから、完成に近づけておけ」

「了解です!」


かまくらは朝宮に任せて、寒空の下を歩きながらコンビニへ向かった。

寒くて嫌だってのに、プリンにモンブラン乗ってるやつとか、ちょっと高そうなの選びやがって。

しかもコンビニのミカンって割高なんだよな。





不満を抱きつつもしっかり目的のものを購入して、早歩きで家に帰ってきた。


いったんプリンを冷蔵庫に入れてから裏庭へ行こう。

そう思ってリビングへ入ると、朝宮は椅子に座り、何故かタライに足を入れていた。


「なにしてんの? かまくらは?」

「飽きたのでやめましたよ?」

「それじゃ俺、何のためにミカン買ってきたの‥‥‥?」

「いいじゃないですか! 普通に食べましょ!」

「その足は?」

「足湯です! 掃部かもんさんもどうぞ!」

「きったね」

「はい?」

「わーい、朝宮の浸かった足湯だー。わーい」

「そんなに嬉しいなら飲んでどうぞ」

「すみませんでした」

「はい。プリンありました?」

「あったぞ」

「ありがとうございます!」


朝宮は嬉しそうにモンブランプリンを開けて、プラスチックの小さなスプーンで一口分取ると、それを俺の口に近づけた。


「あーん!」

「やめろ」

「私はまだ食べてませんよ? 買ってきてくれたので、一口目あげます!」

「ど、どうも」


素直にモンブランプリンを一口貰うと、朝宮は当たり前のように同じスプーンでプリンを食べ始めた。

ド天然なのか、間接キスぐらい誰とでもするのか、そもそもなんにも気にしてないのか。

俺だけ変にドギマギしてしまう。

それはちょっと悔しい気もする。





テレビ破壊事故から四日が経ち、クリスマス五日前。

朝宮は自分で言った通り、毎日掃除をしてくれている。


「お風呂掃除終わりました!」

「どれどれ? おー! すごいじゃん!」

「えっへん!」


雑!!泡残ってる!!

そんなのが毎日だが、クリスマスが終わるまでは毎日褒めてやることに決めている。

褒めて伸びるタイプかもしれないし。


「さぁ、綺麗になりましたし、入って良いですよ!」

「ありがとうな!」

「はい!」


そして俺は一人になった瞬間、素早く追加の掃除をして風呂を沸かす。

それができたら、朝宮の部屋に行かなければいけない。

何故なら、朝宮が掃除しているのを俺に見せたいのか、ずっとドアの前で待っているからだ。


「あっ! 来ましたね! お部屋見てください!」

「おう」


朝宮がるんるんで部屋のドアを開けると、ペットボトルが部屋の隅にまとめられ、ゴミはゴミ箱から溢れている状態だったが、足の踏み場に困る今までと比べれば百点をあげたい。

まぁ、まとまったゴミが増えていくのを毎日見てる感じなんだけど。


「どうですか? これならサンタさんも入って来れますよね!」

「バッチリだな!」

「やったやった! これ見てください!」

「デカッ!」


枕元に下げられたドデカ靴下で、どれだけクリスマスを楽しみにしているのかが伝わってくる。

学校では大人で、家にいる時は本当に精神年齢が下がるな。


「これで準備バッチリです!」

「あとは掃除を毎日続けて、サンタを待つだけだな!」

「はい!」


こんなデカい靴下に写真立て一個って、なんかヘボく感じるな。

朝宮が欲しいものだから別にいいんだろうけど、写真立ては安そうだし、島村あたりに協力してもらって他にも買うか。





翌日、俺は朝から新聞部の部室へやってきた。


「よっ」

「ここに来るの久しぶりですね」

「ちょっと頼みがあってな」


島村は相変わらず、死んだ目をしながら新聞作りに励んでいた。


「情報屋ならやってませんよ」

「違う違う。ちょっと親戚にクリスマスプレゼント買わなきゃいけなくて、女の子が好きなものとか分からないからさ、一緒に選びに行ってくれないか?」

「そういうことですか」

「行ってくれるか?」

「今日の放課後ならいいですよ」

「ありがとう! んじゃ放課後にまたここに来るから」

「分かりました」


島村が協力してくれることになり、俺は教室に戻って陽大を廊下に呼び出した。


「どうしたの?」

「今日の放課後暇か?」

「雪で部活も無いから暇だけど」

「訳あって島村と買い物行くんだけど、陽大も行くだろ?」

「行く!」

「よし、んじゃ放課後、約束な」

「うん!」


これで陽大も島村との距離が縮まるかもしれないし、一石二鳥だな。

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