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オークと女騎士、死闘の末に幼馴染みとなる  作者: さかもり
第二章 騎士となるために

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玲奈と伸吾

 玲奈と伸吾もまた指定エリアへと向かっていた。

 二人の担当エリアは一番遠くにある。出発した当初は他にも候補生たちがいたけれど、ポツリポツリと減っていき、そのうちに二人だけとなった。


「うーむ、近場の担当は仕事なんてないのではないか?」

 玲奈がぼやくように言った。それはそのはずここまで一匹の魔物も見ていないのだ。道中に配置へとついた候補生に仕事などないだろうと考えてしまう。


「街に近いエリアはBクラスの担当だからね。彼らはまず壁外の雰囲気を感じることから始めるんだよ」

「伸吾は落第者並によく知っているな? 真の落第者である莉子だって知らないのではないか?」

「それはないって! 流石に一年もいたのだから彼女も分かってる。それに金剛さんは落第したけれど、次席だったんだよ?」

 意外な話に玲奈は息を呑んだ。落第者は概ねBクラスである。だから二席が落第しただなんて話はとてもじゃないが信じられない。


「本当の話か? どうやったら次席で落第できる?」

「最後の最後で必修科目である広域実習を落としたかららしい。彼女が話してた魔力切れは落第に相当するんだ。魔力切れする前衛士なんて邪魔なだけだからね……」

 常に魔力を消費する莉子。魔物の数によっては真っ先に魔力切れを起こしてしまう。

 玲奈は考え込んでいる。莉子が次席であったこと。過去に何があったのかを。


「伸吾は全てを知った上で莉子をエリア2に向かわせたのか?」

 結論は直ぐに出た。昨年度の話にあったエリア2で死亡者が出たという話。莉子の魔力切れと関連付けるのは難しくなかった。


「まあそうだね。ただしトラウマを克服して欲しいってことだけじゃないよ。最終試験のエリアは通常よりも範囲が広い。今回指定されたエリアより、ずっと奥まであるんだ。だから今回に限って言えば、彼女は上手く戦えるだろう。万が一にも魔力切れするほどの魔物は現れないよ」

 どうやら伸吾は莉子に自信を付けさせたかったらしい。トラウマを抱えたままでは戦えないのだと。班員として適切な処置をしたようだ。


「なら組み合わせに意味はあるか? エリアが奥までないのであれば、別に一八をつける必要もないだろう? 貴様は意図があって全体を誘導した。まずは脅かすことで今里と生駒をエリア3に配置したのだからな……」

「岸野さんは言葉が悪いね? 確かに誘導したけれど、全員が納得してたでしょ? だからこれで良いんだよ。信じ合えなきゃ戦えないからね」

 玲奈は薄い目をして伸吾を見ている。どうにも策士だという印象。ただ彼が話す内容は間違っていないと思う。


「奥田君をつけたのは気付いてもらえたらと考えてだ。奥田君は真に剛の剣。嫌でも彼女は目撃する。自分との違いというものを……」

 納得せざるを得ない。伸吾の思惑通りとなっていたのには腹も立つけれど、彼の選択は概ね正しい。ただし、最後の疑問を聞くまで完全には信用できない。


「ならば私と組んだ理由はなんだ?」

「んん? 岸野さんとしては不満だってこと? まあ僕は名もない剣士だけれど、この組み合わせはしょうがないじゃないか。生駒君と今里君、それに奥田君と金剛さんを組ませたのなら僕と君しか残らない。実に理路整然としてるでしょ?」

 最後まで食えないやつだと思う。誤魔化されたのは明らかだ。恐らく何らかの意図があったに違いない。


 さりとて玲奈はもう問い質すのを止めた。もうすぐ指定エリアである。どうせはぐらかされるのならば、冗談でも返して話を終わらせようとした。

「ま、私は絶世の美女だからな。一緒にいたい理由は分かるぞ?」

「そういうことにしといてくれるかな? 君が意外と面白い人だって分かっただけでも有意義だよ」

「なら私も分かったぞ。伸吾は剣士などではなく……」

 これで雑談は終わりだ。嫌味っぽく返された玲奈は笑顔を見せつつも皮肉で返す。切り替えて行くためにも精一杯の嫌味を。


 本当は詐欺師なのだろう?――――と。

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