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オークと女騎士、死闘の末に幼馴染みとなる  作者: さかもり
第二章 騎士となるために

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入学式の前に

 気持ちの良い朝。春先の気温はまだ低くあったけれど、目を覚ますという意味合いにおいては有り難い。一八は窓を全開にして大きく背伸びをしている。

「早いね、奥田君……」

 伸吾も起きてきた。まだ六時である。入学式は八時からであり、もう少し眠っていても問題はなかったのだが……。

「悪い、起こしちまったか?」

「いや良いよ。朝食前にロードワークでもする?」

 寝起きであったというのに伸吾は一八をロードワークに誘う。恐らくは日課に違いない。騎士学校へ合格するような者は日々鍛錬を続けているはずなのだ。


「いいな! 早朝稽古がないのは身体が鈍って仕方がねぇし」

 二人はジャージに着替えて寮を飛び出している。校内の探索も兼ねて騎士学校を一周することになった。

 割と朝から走っている候補生を見かける。やはり意識は高い。全員が狭き門を通ってきた者たちだ。高校の同級生たちとは明確に異なっていた。


「あれが食堂だね。隣は女子寮になってるのか……」

 試験を受けたグランドを越えた先が魔道棟。伸吾曰くその奥にあるのが女子寮らしい。

 二人がゆっくり走っていると、背後から声をかけられた。


「おい一八!」

 思わず一八は実家にいるような気がしてしまう。人生において幾度となく聞いた呼びかけに。

「玲奈、お前もロードワークか?」

 振り返ったそこには玲奈の姿。ただ彼女は一人ではなかった。

「おお、君が奥田一八?」

 誰なのか分からない。恐らくは玲奈に話を聞いたのだと思う。しかし、初対面の女子に対して適切な台詞が思いつかず、一八は頷くだけである。


「でっか! 流石に斜陽を扱うだけはあるね! 超合格だよ!」

 まるで意味不明だ。一八は少しですら内容を理解できない。よって彼は堪らず玲奈に耳打ちをする。一体彼女は何を言っているのかと。

「ああ、彼女は金剛莉子。貴様の奈落太刀を打った刀鍛冶の血筋だ。また貴様の奈落太刀は斜陽という銘であるらしい。合格ってのは私も分からんが、莉子は底抜けの馬鹿だから気にするな……」

 その紹介には流石に莉子も怒っていたけれど、意味不明な話をしたのは彼女である。だからこそ早速とその理由を口にした。


「斜陽はウチが鍛刀した中でもとびきり重いからね。つまりは刀士を選ぶって話。無理をして振ると、太刀筋を乱すだけでなく身体まで壊すよ。だから君は超合格なの!」

「何だ平民かよ。まぁた貴族かと思ったじゃねぇか……」

 初対面の女子であったこともそうだが、玲奈がまた貴族を連れているのかと勘違いしていた。彼女のトレーニングウェアはかなり上質なものであったのだから。


「あたしは貴族だよ?」

「マジで!?」

 言葉遣いは平民そのものというより、更に知能指数が足りない感じ。同じ貴族でも恵美里とは似ても似つかない。

「莉子、嘘は良くない……。お前みたいな馬鹿が貴族であるはずもないだろう?」

「玲奈ちんまで!? ガチで貴族だし! 男爵家のご令嬢にしか見えないっしょ!」

 説明するたびに信憑性を失っていく。玲奈たちには少しも伝わらなかった。


「岸野さんに金剛さん、よろしく。僕は鷹山伸吾。奥田君のルームメイトなんだ」

 莉子を放置し伸吾が挨拶をした。人間関係の構築も候補生時代に済ませておくべきこと。同期と仲良くするのは決して悪いことではない。

「岸野玲奈だ。よろしく。この馬鹿と私もルームメイトなのだ」

「また馬鹿って言った!? 今馬鹿って言ったっしょ!? 不敬罪だよ!?」

 莉子一人が騒がしい。かといって全員が構うのを止めた。それよりも朝ご飯を食べて入学式の準備をすることに。


 これより初日が始まる。騎士学校は呼び名とは異なり軍隊というべき場所。非常に厳しい毎日が予想されるけれど、ここに集ったのは精鋭ばかりである。


 四人は不安よりも期待をし、入学式へと向かうのだった……。

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