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オークと女騎士、死闘の末に幼馴染みとなる  作者: さかもり
第二章 騎士となるために

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一八、オオサカへ

 短い春休み。ようやくと寒さも和らいだけれど、朝晩の冷え込みは相変わらずだ。

 一八は早朝稽古のあと庭先で顔を洗っている。騎士学校に合格した一八であるが、彼の日常は何も変わっていない。幾分かは睡眠時間を取るようにしていたけれど、夜間の勉強は今も続けている。なぜなら騎士学校はその名が示す通りに学校であって、入学が卒業を約束することはない。少なからず落第者を出すものであり、士官として配備されるには一定以上の実技と学力を備えていなければならなかった。


「いよいよ入学か……」

 入学式を明日に控えていた。騎士学校は全寮制であるから朝稽古も今日が最後だ。少しばかり感傷的になってしまうけれど、今まで地元を離れたことのない一八には新鮮でもあった。

 三人で食べる最後の朝食。このあと一八はオオサカへと向かう予定である。

「一八よ、一年間精一杯に努力しろ」

 食事の前に手を合わせたあと三六が言った。合格してからというもの大騒ぎであった彼も、ようやく落ち着いた感じだ。かといって師範代が騎士学校に合格との張り紙を大々的に飾り付けたりと今もなお興奮しているのは明らかである。


「あったりめぇだろ? ちゃんとやるよ。卒業してなんぼ。ここまできて士官になれないなんてあり得ん」

 騎士学校は一年で卒業できなくても、二年生として一年の猶予があった。しかし、落第生は基本的に二年目も同じように落第し、騎士となれるのはごく一部である。よって一八が頑張るべきは一年のみであり、それは気が遠くなるほどの期間ではない。一八は既に一年近くも努力し続けていたのだから。


「一八、身体には気を付けなよ? 幾ら頑丈だといっても人間なんだから……」

「分かってるよ。まあでも俺はオーク並みに強ぇんだ。無茶くらいするさ」

 清美の心配をよそに一八は全力でいこうと考えている。全てはあの日、誓ったまま。一八は人族を脅かす天軍を全滅させるつもりだ。誰の手でもなく自分自身の手でこの世界を守るのだと決めている。


 食事を済ませた一八。着替えなどは宅配便で送りつけていたので、手荷物は財布だけである。高校時代のように清美が忘れ物の心配をする必要はない。

「じゃあ、行ってくる……」

 手を挙げる一八に三六と清美は頷いていた。それはかける言葉がなかったから。立派に成長した息子はもう小言を必要としていなかったのだ。


 家を出た一八は期待に胸を膨らませている。初めての寮生活もさることながら、これから始まる新しい人生は希望に満ちあふれているだけであった……。

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