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オークと女騎士、死闘の末に幼馴染みとなる  作者: さかもり
第一章 転生者二人の高校生活

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一夜明けて

ストックがなくなってきたため次回より隔日連載となります。

悪しからずご了承くださいませ。

 大騒動となった前日とは異なり、翌日のキョウト市は平穏を取り戻している。

 授業が終わったあと玲奈は愕然としていた。なぜなら定例の体育祭実行委員にて二人三脚人気投票の集計結果を見たからだ。


「何だ……これは……?」

 まだ数日あるのだが、途中経過の速報はこれが最後である。玲奈が驚愕したわけはボーダー辺りを彷徨いていた一八が一日にしてトップとなっていたからだ。


「恵美里殿下、これは何の印象操作が入ったのでしょう!?」

 思わず聞いてしまう。今朝から学園中が騒がしかったのは分かっていたけれど、こうもあからさまな結果が出てしまうとは考えていなかった。

「玲奈さん、この結果は仕方ありませんよ。昨晩から彼と玲奈さんの報道ばかりでしたでしょう?」

 付け加えて恵美里は改めて玲奈に礼を言った。昨日は玲奈も疲れ果てて直ぐに家まで帰ってしまったのだ。


「いえ、別に感謝されるようなことなど……。まあしかし、一八と私の役割が異なっておれば、あのような結果には結びつかなかったでしょう」

 今も思い出す。砦にて七条小隊と合流し、一八の元へ駆けつけた瞬間を。

 玲奈は目撃したのだ。それは脳裏に焼き付く光景であった。奈落太刀が真円を描き完璧に振り抜かれる様子。一瞬のあと落下するエンペラーの右腕まで……。


「玲奈さん、ご謙遜を……」

 恵美里は冗談のように受け取る。それこそ報道では玲奈の扱いも大きく、彼女が如何に優れた剣士であるのかを伝えていたのだ。

「いえ、私では時間稼ぎすらできなかったでしょう。けれど、一八は魔力もスキルもない状態でエンペラーに立ち向かった。兵士として考えるなら勇敢というより無謀です。勝つ見込みなんて少しもなかったのですから……。それでも一八は戦った。師である父は叱責の言葉を投げるでしょうが、私は素直に称賛したいと思います。力みなくそれでいて強さのある一太刀。エンペラーの腕を切り落とした攻撃は達人の域に達していましたから」

 素振りでも見たことがないほど見事な一振りであった。土壇場でそれを繰り出した一八。付け焼き刃的に放てるものではない。濃密な稽古の結果であり、一心に剣を振り続けたからこそ体現できたものである。


 二人の話に舞子が頷く。彼女もまた報道に看過されたようだ。

「いやぁ、一八君はカッコいいよ。見直しちゃった!」

「か、か、か、一八君!? 舞子殿、熱でもあるのでしょうか!?」

 昨日まで呼んだことのない呼び名を口にする舞子に玲奈が驚いている。加えてカッコいいとまで言ってしまう彼女に。


「実はあたしも投票しちゃったんだよね。剣士に転向して半年で超一線級になるなんて凄いと思う。うちは取り潰しとなった元貴族だけど、彼がいたらまた爵位が与えられそうな気がするよ」

「しかし、一八は野獣ですよ? 家格に相応しいとは思えないのですが……」

「まあ玲奈ちゃんは色々あったのだろうけど、あたしが見ている一八君は普通というより優しい人って感じ。いつかもケルちゃんを助けてくれたし」

 どうやら舞子はスタンスを変えたらしい。怖がっていたのが嘘のように切り替えている。


「確かに奥田会長は一度に株を上げましたねぇ。爵位の多くが廃止されて久しいですけど、英雄を輩出したとなれば復位もあり得ますから。今後の奥田会長は引く手あまたかもしれません」

「このみん殿までそのようなことを?」

「いやあ、私の家は普通の家系だから畏れ多いよ!」

 皆が態度を翻している。春先は野蛮な柔術使いでしかなかったというのに。

 剣士という肩書きは乱世にあってかなり重視されている。戦える者。柔術も間違いなく戦う者なのだが、戦場に向かう者とは見做されていない。


「玲奈さん、本日はお礼も兼ねてわたくしも同行いたします。理事会からの新しい通達がございますし、昨日は声すらかけられませんでしたので……」

「はいはい! あたしも行く!」

「わ、私もお邪魔していいでしょうかね?」

 何といつもは遠慮していた武道学館への報告に全員が参加するという。


 流石に困惑する玲奈だが、断る理由などない。既に武道学館生は誰一人として玲奈に楯突かない。全員が従順な下僕と化していたのだから。

 玲奈は思う。世間の変わりように。一八の身を案じずにはいられない。


「これは大変なことになるぞ、一八――――」

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