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オークと女騎士、死闘の末に幼馴染みとなる  作者: さかもり
第三章 存亡を懸けて

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残る目的

 北の大地にある星形要塞都市ゴリョウカク。

 アザエルは四日後になってナゴヤ陥落の一報を受けていた。


「陥落したのが四日前とかどうなっているんだ?」

 流石にご立腹である。予てから四天将の行動には不満を感じていた彼であるが、本土の拠点としていた基地を失ったことには文句を言わすにいられない。


「全滅のようです。ガブリエルとウリエルが討たれ、ミカエルがナゴヤへ向かうまで情報が一つもありませんでした……」

 ナゴヤの指揮官として新たに配備される予定だったミカエル。その彼が現場に赴くまで天軍が状況を確認できる術はなかったらしい。


 アザエルへの報告にはラファエルだけでなく、実際に現場を見たミカエルが同席している。


「共和国軍を侮っていました。まさかあれ程の部隊を編成できる力を残しているなんて。恐らくはガブリエルとウリエルも油断していたことでしょう。あの様子であればギフが陥落するのも時間の問題です」

 ミカエルの報告にアザエルは長い息を吐いた。あとに戻れぬ戦いを続けてきたのだ。現状は前進したようで、後退であるようにも思う。


「まだ魔界門は開かぬのか? ヤゴヤとて無条件で降伏したわけではあるまい?」

「その通りなのですが、魂の数が足りないとしか……」

 天軍は焦っていた。想定外の反撃から、まさかの拠点陥落まで。常に攻め手であった彼らは敗戦という言葉を上手く消化できない。


「してラファエルよ、これからどうするつもりだ? 我らは人族を殺めなければならんのだぞ?」

 アザエルの質問に対する回答はない。防衛の柱であった飛竜まで失っていたのだ。現状で使役できる飛竜は見つかっておらず、兵を増強するとしてもオークしかない。またオークは単体での繁殖が期待できるものではなく、捕らえた人族の女は既に一人も生きていなかった。


「陛下、もう我々は戦えないように存じます――――」


 散々な一ヶ月であった。破竹の勢いで人族を圧倒するつもりが、気付けば追い込まれている。


 ラファエルの出した結論は子供にでも理解できるものであった。

「ラファエル、もう戻れはせぬ。我らが滅びようとも、原初の悪魔さえ喚び出せたなら構わん。新世代が新たな天軍を築き上げてくれるだろう」

 アザエルの話はこの先を予感させるものであった。今さら和平などあるはずもなく、彼らは人族を殺めるだけなのだ。原初の悪魔を喚び出すという最低限の目的を遂げようとしている。


「了解しました。最後に足掻いて見せましょう。ギフにはミカエルだけでなく、私も赴きます。人族共を一人でも多く道連れにしてやります」

「頼む。余は魔界門が開くときをゴリョウカクにて待つ。けれど、行き着く場所は同じ。これまで仕えてくれたこと。余は感謝しておる」


 既に敗戦以外の未来はあり得なかった。戦う術がない天軍は人族を巻き添えにして自爆するより他がない。よって再会などあるはずもなく、この会合が今生の別れとなる。


「長いようで短い九百年でした。できるなら黄泉もお供したかったですね……」

「目的地は同じだ。会うこともあるだろうて……」

 最後にアザエルは二人と握手を交わし、この報告を打ち切っていた。


 二つの侵攻が失敗した時点で詰んでいる。更には前線基地ナゴヤを失ったのだ。どうあっても巻き返す余力など残っていない。


 天軍の目的は既に魔界門を開くことだけに絞られていた……。

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