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オークと女騎士、死闘の末に幼馴染みとなる  作者: さかもり
第三章 存亡を懸けて

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目覚め

「雷霆斬!!」

 最後の踏み込みよりも早く玲奈は逆風に斬った。命の灯火を全て乗り移したような全身全霊の一振り。あまりの勢いを玲奈は受け止めきれず、零月に身体を任せてクルリと身を翻している。


 その目に映るもの。零月は確実に空を切ったはずだが、視界に映る結果はこれまでと明確に異なっていた。


「見事……だ…………」


 ディザスターは下腹部から首筋にかけてを斬り裂かれていた。土壇場で玲奈が繰り出した雷霆斬によって……。


「岸野……玲奈…………」

 一瞬のあと、ディザスターから大量の血が噴き出していた。加えてディザスターはその巨体を徐に横たえていく。


 勝負あったようだ。放たれた超圧縮魔力波は川瀬が言っていたように仲間を救う力となっている。立ち塞がるネームドオークエンペラーを斬り裂いたのだから……。


「やったぞ……一八……」

 ところが、玲奈もまた限界であった。度重なる試行錯誤の末に魔力枯渇していたのだ。特に最後は目一杯に魔力を圧縮したのだから。


 しかしながら、玲奈は笑みを浮かべている。この状況は彼女にとって最悪ともいえるものだというのに。オークに取り囲まれ、二人して気を失うだなんて、明確な死が待っているだけであった。


「また天界で会おう……」

 言って玲奈は膝をつき、ゆっくりと地面へと伏す。魔力切れである彼女はもう立ってはいられなかった。


 けれども、地面が目の前に迫ったそのとき、彼女の身体はピタリと停止。どうしてか地面に引き寄せられていない。


「あとは任せろ……」

 薄れゆく意識に響く野太い声。もう死ぬだけだと考えていた玲奈に希望を持たせるものであった。


 徐に担ぎ上げられたかと思えば、玲奈は魔力回復薬を口に突っ込まれている。

「まだ寝たりねぇんだがな……」

 玲奈を担ぎ上げたのは一八だ。彼は玲奈を肩に乗せたまま立ち上がっていた。

 まだ左腕に力が入らない。もしかすると骨が折れているような気もする。けれど、右腕一本であっても一八は戦うしかない。


「か、一八……」

「黙ってろ。魔力切れだけなら、その内に落ち着く……」

 玲奈の心配とは異なる返答だった。しかし、玲奈は頷いている。少しも動けそうになかったのだ。だとしたら一八の気遣いに甘えさせてもらおうと。


「さっさと帰るぞ。俺たちの仕事は終わりだ……」

 一八はハンディデバイスにディザスターの死体を収納。使命を果たしたのだと証明するために。


「雑魚共、かかってくるなら斬ってやんよ……」

 言葉が通じているかは不明だ。右手一本なのだ。しかも玲奈を担いでいる。できれば戦闘を避けたいと願って。


 しかし、一八が望んだようにはならない。ディザスターが失われたオーク軍であったが、相手はたった一人なのだ。しかも女を担いでいるのだから、オークが見逃すはずもない。


「退けって言ってんだろっ!?」

 右手一本で斜陽を水平に振る。右薙ぎに払ったあとは、直ぐさま左薙ぎ。一八は進路に現れるオークを斬り裂いていた。


 これまではディザスターに指示され待機していたオークたち。最初の三体が斬られたけれど、それを皮切りにして一斉に襲い来る。


「幾らでも相手してやんぞ!!」

 一八も負けていない。全方位に刀を振り回し、襲いかかる全てを一刀の内に両断していく。必ず生きて戻るのだと斜陽を降り続けた。


 第一師団との合流まで一八は斬り続けるしかない。エアパレットを取り出す隙すらなく、少しずつ歩んでいくだけだ。


 一八は信じている。その一歩ずつが未来へと繋がっているだろうと……。

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