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オークと女騎士、死闘の末に幼馴染みとなる  作者: さかもり
第二章 騎士となるために

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討伐のあと

 伸吾を助けた一八たち一班はヒュドラの死体を回収することなく、山を下りた面々を追いかけていた。

 坂を下りながら、玲奈が西大寺に通信をしている。


「西大寺教官、既にヒュドラは討伐した。現在は二班を追いかけているところです。下山を急いでいる小松たちにはどこかで待つように伝えて欲しい」

 小松たちも全力で戻っているのだ。どこかで合流しなければ、追いつけるはずもなかった。


『救護感謝する。小松たちには発光弾を撃つようにと伝えておく。直ちに向かってくれ』

 言って通信が切れた。恐らくはルートを辿っていけば合流できるはず。しかも、位置確認の発光弾を撃ち放ってくれるという。


「みんな、何も問題ないぞ。舞子は助かるし、誰も失われていない」

 玲奈が班員を鼓舞するように言う。正直に一班は誰も疲れていなかったのだが、落ち込むような伸吾を見ては口にせざるを得なかった。


「ありがとう、岸野さん……」

 伸吾も彼女の気遣いを理解したようだ。小さく呟くように返したのは少しばかり悔しかったからだ。こんな今でも洞窟に入ったことは正解だと思っている。しかしながら、その過程に不満があった。


「僕は剣術科の一班に慣れすぎていたんだ。だから、判断を見誤った。魔道科と支援科との連携には時間が足りなかったね……」

 口にするよりも早く動いてくれる玲奈とずっと一緒だったこと。伸吾がエリアの割り振りをするだけで一班は機能していたのだ。同じことを魔道科と支援科にも求めていたことは間違いなく失態であった。


「気にするな。誰も失われていない。以降は各員の実力をよく見極めておけ。私や一八のような人間はそうもいないのだ。各員の個性を考えて行動してくれ……」

「君は本当に立派な士官になれるよ。別に皮肉じゃなく本気でそう思う。たった一日で混成班をも上手く導いている」

 基本的に伸吾は貶すような話をしない。だから、玲奈は褒められたとして、特に嬉しくもなかった。何を考えているのか分からないのは出会ってから今まで何も変わっていないのだ。


「まったく。貴様はもっと仲間を信用しろ。貴様ならば、ヒュドラくらい何とかできたはず。あの巨体なんだ。見つかるよりも早く適切な行動をすればよかっただけ。猛毒を吐かせぬように剣士が対処し、魔道科の二人がトドメを刺せばいい。どうせ自分が倒さなきゃと気負ってしまったのだろう?」

 見透かされた伸吾は不満そうに、やや口を尖らせている。だが、反駁は唱えない。何しろ、その推論は図星であったのだから。


「まあね。ずっと一緒だった岸野さんがいなくなったこと。割とプレッシャーだったね。君の雷撃は万能だ。零月に持ち替えてからは攻撃力も劇的に上がったし。だから、少々強引だったかもしれない。完全にスタンドプレイだった……」

 素直に反省できるところは彼の美点である。また反省点を次に活かせるところも彼が四席にいる理由だった。


「莉子をもっと信用してやってくれ。救いようのない馬鹿ではなく、あいつは使える馬鹿なんだ……」

「そうだね。岸野さんや奥田君と比べてしまったんだ。反省してるよ……」

 玲奈は笑っている。だが、別に面白かったわけではない。視界の先に煌々と輝く発光弾が撃ち放たれたからだ。


「ほら、急ぐぞ! 誰も失われてはいけない!」

「うん、ありがとう」

 もう全員が助かる未来しか見えなかった。共に先頭を飛ぶ玲奈に加え、しんがりを務める一八の存在。また両サイドを担当する魔道科の射撃もまた安堵感を増幅させていた。


「それはそうと……」

 玲奈が続けた。彼女にはまだ何か文句があるのかもしれない。

 かといって、伸吾は指摘を全て受けるつもりだ。首席の考えとやらを吸収するためにも。


 ところが、続けられた話は伸吾を唖然とさせてしまう。任務どころか剣術にも関係のない話であったからだ。


 笑みを浮かべた玲奈がいう。横目で伸吾に視線を送りながら……。


「帰ったらセラガトの感想文を書けよ?――――」

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