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オークと女騎士、死闘の末に幼馴染みとなる  作者: さかもり
第二章 騎士となるために

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撤退

 伸吾は決断を迫られていた。

 最後まで舞子を生かそうとしていた彼であるが、予想よりもピュアリフィケーションの魔力消費が多く、このままでは最後の一本に手をつけるのは時間の問題である。最後の一本は帰路の予備として残しておきたいところだというのに。


 伸吾は剣を手に取る。どうやら彼はリーダーとしての使命を遂げるつもりのよう。

「伸吾っち、あたしも行くよ……」

 莉子もまた刀を抜いた。伸吾の覚悟を推し量った彼女は共に最後を向かえようと思う。仲間を逃がすために囮となるのだと。


「金剛さんは護衛を。小松君しか宮之阪さんを運べないんだ。道中の魔物は君に任せたい」

「いやでも!?」

 死地へ向かうような伸吾を莉子は放っておけなかった。まず確実に死ぬことになる。二人であれば、共に逃げ出す隙があるかもしれないのだ。


「君は撤退。これはリーダー命令だ……」

 莉子は過度に動揺していたけれど、伸吾は本気であった。彼は班員を生かす最善を選んだだけだと。また莉子にも時間がないことは分かっている。


「了解……。あたしは必ず全員を守るよ……」

「ありがとう。宮之阪さんをよろしく……」

 これにより脱出作戦が決定していた。伸吾が犠牲になることで二班の五人が生き延びるというもの。ヒュドラから一人でも多く生き延びる術はそれしかない。


「小松君、宮之阪さんを運んで欲しい。本郷さんはそのままピュアリフィケーションをかけ続けて。残りのポーションも君が飲んで本部まで持たせて欲しい」

 道中には本部へと連絡をし、魔力回復薬が必要であることを伝えるようにと伸吾は付け加えた。


 全員が理解する。伸吾はどうしても舞子を生かそうとしているのだと。自身が失われようとも班員だけは守り切るのだと。


「伸吾、あとは任せろ。俺は宮之阪さんを必ず守るからな……」

 小松が伸吾に返した。意志を汲み取ったその返答は伸吾を笑顔にさせる。


「ありがとう。君は立派な騎士になって欲しい」

「俺は二班で良かったよ。最高のリーダーが俺たちにはいた……」

 言って二人はフィストバンプを交わす。しかし、それは別れを知らせるもの。作戦が最終段階に入ったという合図であった。


「まずは一斉に飛び出す。悪いけど金剛さんはエアブラスタ―を撃ち放って欲しい。全員が猛毒を浴びては元も子もないからね」

「了解。飛び出すと同時に撃ち放つよ」

 小松が舞子を抱き、その傍らに真菜が立った。莉子は真っ先に飛び出すため、伸吾の隣にいる。これにて準備は万端整った。最後のミッションが始まろうとしている。


「みんな、頼んだよ。作戦開始!」

 それぞれが了解と返し、六人は各々に動き出す。莉子がエアブラスタ―を撃ち放つや、伸吾が彼女に続いた。更には舞子を抱き上げた小松にピュアリフィケーションをかける真菜が飛び出し、二人に付き添うように千尋がそれを追いかけていく。


 待ちに待った餌の登場に、やはりヒュドラは食いついた。即座に猛毒を吐いたものの、莉子のエアブラスターにて吹き飛ばし、危惧していた二次被害は免れている。


「全員、あたしに続いて!」

 直ぐさま追いついた莉子に四人が続く。伸吾の意を汲んだ莉子は振り返ることなく、全速力で山を下りていた。


「伸吾っち、あたしがみんなを助けるから……」


 絶対に失敗できない。犠牲となった伸吾のため。彼の本懐を遂げることでしか、伸吾に報いる方法はない。


 全員を守り切る使命を莉子は受け継いでいたのだから――――。

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