犯人はYAtSU
誤字報告ありがとうございます。
本当、助けられています^ ^
前回、何故脇道に誰も逃げ込んで来なかったのかと言う理由ですが池袋で人が大通りを走っていたのは、歩いてみたらわかるかもしれませんが結構通り抜け禁止の柵があって入れないのが多いんです。
そんな訳でパニックになった人達は脇道に入っても柵があって引き返してみんなで大通りを走ることになっていました。
それから題名は犯人はヤスとヤツをかけたダジャレです。誤字ではありません
週刊アクション4位、日刊アクション4位、444ptありがとうございます^ ^朝家出たら轢かれるのは自分かもしれません……ははは
では!
※時系列的には銃撃戦の後です。
とある老人が復讐に燃えていたころ、あるところでも事態は動いていた。
どんよりとした空、全てが灰色に染まった化のような街並みの中何かが近づいて来ていた。
ーーぶぉおおお
頭の悪そうな字面……ではなくて燃費の悪そうなエンジン音をたてながら黒塗りの外車が道路を爆走していた。
シャープというよりも重厚なフォルムに日本車に比べ無駄に長い車体。
貼られたヘビ皮のような座席が持ち主の趣味の悪さを醸し出していた。
乗っているのは白いジャケットに和柄のネクタイでもしたヤクザものであろうか。
白い煙をあげながら遥か遠くから走ってきた車体が見えてくる。
ハンドルを手のひらで回すナルシスト運転を見せる運転手。
そして前を見てない明らかな脇見運転。運転手はナニをしているのか片手を伸ばしながら何かを探しているようでまるで前を見ていない。
スピードがわかっていないのか、とても下道で出すスピードではない。風圧だけで道に捨てられていた空き缶を飛ばしとてつもない騒音を出しながら爆速して行く。
遅れてカランコロンと音を立てて転がる空き缶。
少し残っていた中身が溢れ道路に染みる。
危険な運転をする奴はどんなやつか、とのぞいてみればアラヤだステーキ♡
いや、素敵ではない。ステーキ肉になる牛さんのように太った人間がいた。
まるで牛のようなエンジン音を出す車に牛のような人間がッ!!なんたる奇跡!
みるからにたるんだ脂肪にふっくらとした丸い顔、腕はバルーンアートのように膨れ、きっと触ればムチムチしているだろう。
……赤ん坊ではない。最近無能扱いされつつある元外交官補佐のエリックだ。
車に乗るまでの間、暗殺者から逃れる為走り回り汗にぐっしょり濡れ、彼の一張羅であるシャツはピッチりと肌に張り付き体のラインを出していた。
うーん、これはたまらん。という人は少数だろう。
片方の手で何かをしていたのは武器がないか探していただけでナニもしていなかった。汗でグッショリ濡れているのも何もやましいことなど………いや……否定は出来ないが、そういうことはしてなかった。エリック、ごめんよ。
だが彼はそれなりの年だと相まってなんとも言えないオヤジ臭を放出していた。
娘がいたならば、"きゃーパパ臭い!"と言われ精神的にダメージを受けているだろう。
シルエット的には思わず抱きしめたくなるようなフォルムとそこから発生するなんとも言えない悪臭は凶悪コンビであるといえよう。
マスコットキャラクターみたいな見た目をしているのが悪い。
エリック痩せろ。
ソビエト連盟から支給されている《いかなるカーでもエンジンがかかる最強のチェムノター鍵》という最近のラノベのような長さとカタカナ使わないと死ぬ病気に侵された化のような名前のなんか凄い鍵である。
これを使いヤクザから、正確にはマフィアから車を奪い走らせているエリック。
日本で過ごし日本人の少しばかりお堅いタイプの意識が染み付いた彼にはこの意識高い系みたいなカタカナ語をふんだんに使った鍵の名前を呼び続けることが耐えられなかった。
それにこの鍵を知らない奴に名前を聞かれて正式名称を答えると"は?"とおかしなものを見るような目を向けてくるのも耐えられない一因だった。
悪口には耐性があるエリックは娘に臭いと言われる事に対しては大したダメージはなかっただろうが、まじめに仕事をしているのに一々この鍵のせいで馬鹿にしたような目で見られたり同情されたりするのが本当の本当に耐えられず、今日もまだ暗殺者に狙われていると気づくまではドブに捨ててやろうかと考えていたほどだ。
そもそも意識高い系の人が使っているカタカナ語も理解出来なかった。
アグレッシブなうんたらとか"な".って何だよとか思ったり、"そのコミット(約束)ちょっとウエイト(待って)して、まだ予定がフィックス(確定)してないから"なんて言われた日には同僚の日本人の頰をビンタしたのが懐かしい。
片方に日本人の親をもち英語圏で育ったエリックにはイマイチカタカナ語のかっこよさは分からなかったようだ。
てか、そんなに英語好きなら普通に英語話したら?なんて思っていたが、そうじゃないんだ、エリック……わかれ…!!
さて、何度も言うがエリックはこの鍵の名前が嫌いだった。
そんな鍵をぶらぶら、ぶら下げ走る車。時より凹んだ地面を飛びガタンと揺れる車体。
運転手が太ってさえなければハリウッド映画のような映えるシーンも紅の豚のせいで台無しだ。
いや、実際スパイの逃走劇で、イケメンとかないだろうし、ただのデブのおっさん出ないだけエリックはマジであろう。
妙に上手い、それから誰に向けたものなのかやけに格好をつけた運転で、ドリフトをしながら街角を曲がる。
相変わらず片手で掌でハンドルを押すような方法でである。
ーーキキキキッ……!!
激しくゴムが擦れる音を立てて曲がる車。
ざらりとしたアスファルトに白い線を残して行く。
バックミラーを軽く電柱にぶつけているのだが自分に酔ったエリックは気づかない。
暗殺されそうで逃げていた割に余裕である。
流石熟練のスパイというべきか。
普通だったらもう少し目立たないように逃げたりするだろう。
いくら周りに人や車がいないからと言って市街地を速度85kmで爆走していいはずがない。
アメリカならともかく。……いやそれは映画だけか。
〈PPPPP.PPPPP.PP〉
「もしも「エリックだ。なんかようか」
どうやら電話が来たらしい。
ピピピと高音の着信音がなり電話を持ったことによりついに両手放し運転に進化したエリックは最早無敵である。
……車をなんだと思っているのか、しかもアクセルを強く踏んでいるものだから85kmを超えたり戻ったりを繰り返している。
こんなので轢かれたものならひとたまりもない。
「いや、用がないのにかけるわけないだろう」
「それもそうか」
「俺はお前と違うんだぞ、誰が潜入任務の報告でディナーが美味しかったとか、暗殺者任務中に賭けに負けて芋虫を…」
「あー、もうはい。わかったから。でなんのようなんだ?」
エリックは不真面目だった。
暗殺者任務中に賭けに負けたというのは、以前も話したことがあるが、彼が大使館に勤めていた際に都合の悪い人間に冤罪を着せて本国送りにする途中で組織の息のかかった海軍、それも国境警備を任されている船に乗り込み輸送船に魚雷を打ち……誤射した時の話だ。
バッシャン!バッシャン!どデカイ水しぶきをあげとにかく壮大に暗殺して見せた彼は何発で沈められるかの勝負に負け、補給で立ち寄ったロシアの港の木にいたよくわからない緑色の芋虫を食うことになったのだ。
せ、せめて茹でさせてくれ。
そう言って茹でた芋虫を口の中にいれ咀嚼し、あれ?意外といけるわとか言いながら馬鹿騒ぎしていた所為で報告を忘れていた。
あまりに遅い、待てど暮らせど来ない報告に何かあったのではと焦ったオペレーターが、緊急の回線を使いエリックに通信を入れてきたのは仲間達全員で芋虫を茹でて食べていたところだった。
何が起きてそんなことになったのか、酒が入っていてよく覚えていないエリックは慌てた声で繋がった通信に、"へへへ、今芋虫食べてる"と返した話のことなのだが、そんな感じで思ったよりもいい加減なことをしているエリックであった。
だというのに鍵のせいで真面目にやってないと言われると怒っていたのは筋違いだと思う。100%お前のせいだよォ!
「お前も知っていると思うがお前を救出に展開中だった部隊が公安の手の者によって追い立てられて銃撃戦に発展した。これは知っているか?」
「知らない」
「まあ、知っているとおもうから……は?」
「知らないんだが詳しく」
「は?まあ、いいか。その後よくわからない白服の集団に攻撃され退けたんだが少々予定外のことがあった」
「いや、教え……今はいい。後で教えろ」
「ああ、合流は地下下水道でな。マンホールを開けておくからちゃんと来いよ。飯とか食べてくるんじゃないぞ?」
「いくらなんでも、そんなことするわけないだろ」
「いや、芋む…」
「うん、はいはい。それからなんかまだあるわけ!?」
「ん?今運転中か?」
「ああ、運転中」
「だったら前を見ろよ、あとスピードは常識の範囲内でな。あと人を轢くな、暗殺者でもあとあと問題になる」
「おーらい、おーるおっけいだ」
「本当か?」
いや、本当か?本当にオールokなのか?!
前見てないし、常識の範囲内が時速85kmっていうのは…その……。だめだこいつ。
「お前は私の母親か?」
「え?違うけど」
このネタは通信相手のオペレーターには通じなかったらしい。
「いくら母親が行方不明だからと言って
男のお前にそんなこと言うとおもうか?」
「ないな、なら」
「いやこれ、日本だとよく言う冗談なんだ。アレした?コレした?って色々聞いてくる奴にたいして、母親のようにお節介をしてくるというたとえだな」
「ん?俺の母親はナタで畑に入ってくるヘラジカを退治してたくらいで構ってくれなかったぞ?」
「そりぁ、おまえんところだけだ」
「そうか、いやすまんついつい話が弾んでしまったな。そろそろ上司に怒られそうだから話しを戻すがいいか?」
よくやく戻った話。本当、どこにそんな余裕があるのだろうか。
「どうぞ」
「は?いや……ああ」
いきなりまじめになったエリックに肩透かしを食らったオペレーターは眉をひそめたが話を続ける。
「ジェニー、ロニー、ザブが死んだ」
「ジェニー?ジェフじゃなくて」
「あ、そうだった」
「ロニーじゃなくてロフじゃ…」
「いや、いい加減なこというな」
ついつい余計なことを言うエリック。彼の為に間接的にだが命を落としたものがいると言うのにこれである。もう死んだ方がいいんじゃないだろうか。
それにしてもロニーが……
と悲しげに呟いた彼にオペレーターが返す
「あれ、仲良かったのか?あいつと」
「いや、ハゲネタがもう出来ないとなるとな……」
「不謹慎だぞ!!」
といいながらも「たしかにこれは組織の損失……(ボソ」
と聞こえた気がした
そして丁度目をつぶって十字を切りロニーに祈りを捧げていたエリックは何かから逃げるように道角から飛び出して来た人影を轢きとばした。
いや、轢いてかなり進んでから気づいたエリックは死んでるかわからない相手に十字を切ってそのまま逃げたのであったから最悪であった。
そして異音に気づいたオペレーターに今なにか轢かなかったか?と問われるも、いやちょっとパンクしたなどと嘘をついていた。
読んでいただきありがとうございます!ブクマ、評価等ありがとうございます^ ^
エリック主人公説…!
次回轢かれた人が登場します。
そういえば、なんかこの作品。登場人物がクズばっかりのような…。うん気のせいか。
あ、この前みた、魅力的なキャラクターの作り方という素晴らしいエッセイを読んだのですが、悪いキャラは魅力的とあり何故悪いキャラが書けないのかという問いにたいして貴方が優しいから……みたいなのがあったのですが……うん、言わないでおいてください。なんでもないです。
ただ悪いだけとか良くないですよね、大丈夫です安心してください!
悪いけど愛せるキャラクターもいますので!
キャラを大切に!
この信念で今後もやっていきますので……
次回もよろしくお願いします!!