日本人、礼儀正しい神話
事故が起き投稿する文章が消えてしまったので、思い出しながら書き直しました。
そのため本来なら今回含め2回で終わる本章が少し長くなります。
では!
※女=櫻井綾子(菅野優子)
※谷口旭=公安の人
side 谷口旭
ペルソナスーツと呼ばれる裏表で羽織れるスーツを着込み、マグネット式のピアス、白いスーツ、趣味の悪い紫色の毒々しいネクタイを締めた俺はさきほどまで向かいに座っていた女を追跡していた。
見た目はチンピラというよりもヤクザものというような風貌で、歩くだけで皆人が避けて行く。流石に近くに座っていた人物が行き先を反対方向な変えても変えてもいたら怪しまれるだろうと思い変えた変装だったが失敗だったかもしれない。
端末に送られてきた情報を見て息を飲む。まさかあの女があのカルト教団の幹部だったとは。
小型カメラで全身を撮影して本部のデータベースで照合したところ99.8%でインコ真理教幹部・菅野優子という結果が出た。
100%ではないのはおそらくカラーコンタクトやメイク、口に詰め物をして輪郭を変えているからだろう。
どうせ奴らは自己防衛のためにナイフか隠しピストル系を持っているだろうから今すぐ持ち物検査をしてやってもいいが暴れられたり暴走して人を殺されたりしては溜まったものではない。
とりあえずアイツが何かする直前で後ろから取り押さえればいいだろう。
カツカツカツと足音を響き渡らせながら走る女。
まだ電車は止まっていない。
池袋で起こっている銃撃戦だがここで電車が止められては道が渋滞して警察車両が通れなくなる可能性があるため鉄道会社に圧力をかけ運行させているのだ。
がしかし池袋駅は封鎖されており外に出ることは出来なくなっている。
奴ら教団にもそれくらい知れるネットワークは持っているだろう、何処から地上に出るつもりなのか知らないが、捕まえるついでに教団の使用経路まで発見できるとなれば俺の昇格も期待できそうだ。
ガトゴトと揺られる電車。
いつもと何一つ変わらない速度で走る電車。そして何処か焦りを見せる女。
そうだろう、どうやら教団の連中はどこから湧いたのか強力な武器をもつ集団に殲滅されたらしいからなあ。
ならなおさら行っても仕方がないような気がするが。
もしや、仲間が全滅していることを知らない?
やられる前に救援に行こうっていうのか?
いや、それはどうだろう。
見るからに貧弱そうな格好で銃弾飛び交う危険地域に飛び込むほど狂信ではないとの証言がある。
だが野次馬みたいにただ見に行くなんてこともありえない。
わざわざ事件のある場所に行かず幹部から部下に任せに行けばいいはず。
と、いうことは。
……何処かに銃撃戦の地帯に飛び込んでいけるほどの兵装を保管していると言うことか!?
ようやく到着した頃にはホームは一刻も池袋から離れようとする人間でいっばいだった。
電車がまだ止まってもないし開いてもないというのに乗ろうとする人がいるものだから電車がホームについてもドアが開けられないらしい。
外で何か叫ぶ駅員。集団の波を抑える警備員。
けたたましく鳴り響くサイレン。
銃撃戦が終わってからそこそこ時間が経っているらしいが、とんでもないことになっているらしい。
おそらく銃撃が鳴り響いていた際は野次馬になっていた人々も静まり返ったあと犯人が一向に捕まらないことを聞いて不安になったのだろう。
駅にいたら殺されるかもしれない。
いや、どうだろう。全く馬鹿な奴らの考えはわかったものではない。
もしも集団を撃ち殺そうとしているような人物であれば、一番人が殺せそうな電車に乗り込んで来そうだが。
俺なら歩いて駅から離れるが、もしかして駅の周りが危ないから駅から出るなと警察が言っているのかもしれないな。
そうだとしたら、こうなるのだろうか
。
考えても仕方のないことを考えながら遠い目で駅のホームをみた。
何時でも礼儀正しく並べる日本人様はどうしたのだろうか。
いつ駅に降りられるのだろうと思いながら死んだ目で腕時計を見ていた俺は異音に気がついた。
ガタガタと揺れる車両。
いつまでも開かない電車に痺れを切らした人間達が中と外からドアをこじ開けようとしているらしい。
ああ、そんなことしたら営業妨害とか、器物破損とかでとんでもない額取られると言うのに……。
俺の思いは伝わらなかったようで擦れるような音を立ててドアが開いて行く。
黒い塊が電車に押し寄せる様子はさながらゾンビ映画のよう……。
少し空いた隙間から入ろうとする人、
さらにあげようと押す人、流されまいと捕まる人、出ようとする人。
あーあー、こりぁ。
パニック映画さながらの光景に冷や汗をかく。
長岡の花火の後みたいだ。
人の波をするりと抜けていく女を見失わないように、力技で人を押しのけて行く。
我先に電車に乗ろうとしてくる人間を突き飛ばしながら進んで行く。
途中で殴りかかってくるやつがいたが裏拳でこめかみを殴りつける。
非常時、一般人に対してこのくらいの暴力を振るう権限は持っている。
もしも、俺が公安の谷口と身が割れて訴えられても逆に公務執行妨害で相手を逮捕できるのだ。
精々上司に小言を言われるくらいだ。
そもそも正当防衛だ。
大丈夫だろう。
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次回、櫻井side と、逃げた砂森達を書いて行きますのでお楽しみに〜