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汝、欲望に忠実であれ

自分を常識人だと思っている人ほどロクでもない。

挿絵(By みてみん)


前回のあらすじ


自称"普通"の大学生、五味秋人はゲームで垢BANされてイラついた。

彼は朝早く街へ繰り出し腹いせにおっさんを突き飛ばしてカツアゲでしたら、奇跡的なすれ違い、神さまのイタズラか。

スナイパーの凶弾からスパイを助けたを助けていた。

もちろん、本人はストレス発散をしてスッキリ。助けられたと思っているおっさんスパイは秋人に感謝。


おお神よ、……なんて平和な世界なのでしょう!



<<<<



都内の人混みの中で暗殺未遂事件に巻き込まれたというのになんにもなかったかのように学校に向かう秋人。さすが主人公枠である。

まあ、本人は本当に何が起こったのか知らないのだ。

彼としては超級のドMに絡んで、また絡まれたらどうしようとか勘違いをしていたのだが。

……そもそも絡んだのは秋人からだ。


群馬県出身の秋人は大学に進学する際に埼玉に移り住んだ。

群馬人だからといって半裸で屋根の上を飛び回ったり、槍を片手に踊っていたなんてことはない。もしそう思っているならば、考えを改めて欲しい。ただの偏見だ。田舎者だからといって都会の人間と何も変わらないのだ。

田舎者だといって何も知らずに馬鹿にするのは良くない、頭だって悪くない筈だ。


彼が何故地元の大学に行かず、わざわざ東京の大学へ進学したかと言えば、なんかカッコいいからだ。

……前言撤回、馬鹿であった。

高校時代、進路指導の先生になぜ東京の大学に進むのか聞かれ『東京の大学に行く俺カッコよくないスカ?モテますし』と謎理論を語った秋人。

東京の大学に通っただけでモテるのならばなぜ田舎よりもリア充爆発を望む人が多いのであろうか。

しかし、先生も先生だ。

そのアホな理由に対して

『そうか……。』の一言で済ませてしまったのも悪い。

秋人は残念ながら良くも悪くも単純なのだ。

先生のその一言には違う意味が込められていたが、秋人的には先生も応援してくれたことになっている。

そうかという言葉自体、応援には繋がらないと思うが、彼は幻聴でも聞いているのだろうか。

『そうか (馬鹿じゃねーの、呆れました。私は責任をとりません)』

と先生はいいたかったのであろう。

先生哀れ。

しかし、その判断ミスによって知らず知らずのうちに救われた多くの命があるのだ。

そこまで聞いて黒いスーツを着た冴えないけれど人当たりが良さそうなおじさんは、となりに座った若い部下の女を見た。

私服で流行りなのか知らないがクリーム色のドレスを着た若い女だ。

一見、援助交際か父娘の関係、どちらかにしか見えないが実情はかなり闇が深い。

彼らは国家安全保障なんとかという肩書きを持つ公安の職員なのだ。

公安と言っても軍事政権化の秘密警察のような過激さはなく、一般の警察の手に負えない危険度の高い事件を調査したり、情報収集をしたりする健全な組織なのだ。

アメリカの機関と違って無差別に攻撃する危険なコンピュータウィルスをネットに散布したり、都合の悪いことを書き込む人間を追いかけて国家反逆罪で捕らえたりとフィクションであるような危険な組織ではないのだ。

そんな組織の人間が何故電車にガタゴトと揺られているかと言えば五味秋人からの指令待ちだ。


この五味秋人という見た目チンピラにしか見えないイケてないメン……略してイケメンな彼は中学生にしてエージェントになり、大学生の今では日本を代表する最強のエージェントとして名を馳せていた。

なんてことのない行動全てに意味があり、その行動一つ一つが計算高く冷血な思考の上に成り立っていると言われている。実際、彼の部下になった二人はそう感じていた。

そう、先程起きた事件もそんな感じだった。


長らく部下をやっている二人さえなんだこいつは?と感じさせるほどだった。



XXX



遡ること2時間前。

ストレス発散のため早く家を出すぎた彼は暇を持て余して街をぶらぶらしていた。

ちなみに性欲ももて余しており、股間はぶらぶらはしていなかった。

若い男というのはどうも性欲がコントロールできなくなると理性が吹っ飛ぶらしい。

東京の大学に通ってモテモテになっている筈の彼はモテていなかった。まあ当たり前である。イケてない方のイケメンなのにナルシストで性格も不細工な彼と誰が付き合いたいと思うのであろうか。

だが世界とは不思議な者で"君の魅力は見た目じゃなくてその優しさだ".とか反吐の出そうなキモいセリフを言っていた彼の友人はモテていた。

ちなみに秋人の友人だけあって付き合う女は見た目で決めていた。クズである。

まあ、男ってこんな者である。


顔も見たことのない人物のSNSに乗せられていた裸の写真で下品な笑いを上げ妄想と運動に励んでいた遊び人の秋人くんはこれからもモテることがないだろう

同じ遊び人だが残念ながら某ラノベ作品と違い賢者に転職できてもきっと明るい未来は待っていない。


そんな未来を深層心理で感じでしまったのか性欲が爆発し変態くそ猿野郎になってしまった秋人はこんな人混みの中拉致をしようとしていたのだから頭がおかしい。

……普通というのを教えて欲しい。

普通だと思うなら自重しろ。


何もしてないのに生きているだけで事件が巻き起こる少年名探偵とは訳が違う。

彼は自分から事件を巻き起こして最近不幸だなと言っているわけだ。神さまにも手に負えないだろう。

これだけ犯罪行動を働きながら捕まってないことに神さまに感謝するべきではないのであろうか。

しかし、人間とは愚かな者で習慣と化したことにはなかなか感謝ができない者だ。

まあ、五味秋人はそれ以前の問題の気もするが。



拉致をするのをやめようと思ったのは仲間からの連絡だった。

自分をイケメンだと勘違いした冴えない男が集まるサークルに入っている秋人は

ジーパンの右ポケットから鳴るバイブ音を聞いてスマートフォンを取り出した。

どうやらサークル仲間からのメッセージらしい。


砂森"あきっち、今暇?今からアレやるんだけど来る?"


アレとはなんであろうか。

彼の仲間であるからにはきっとロクでもないものだろう。

"いくっ、イクゥ〜"

と下品な返信をした秋人は電車で池袋へ向かった。

ちなみに"あきっち"とは秋人のあだ名で、秋人がいないところではゴミヒトと呼ばれているのだが、クズ同士の友情など、そんなものである。


……それと今から行くと学校に間に合わないのだが。普通の大学生、勉強しろ。




大学は9時始まりなのだが、埼玉にホームがある彼はそれなりに早く出ても移動にかなりの時間がとられてしまう。

大学が東京なのだから移り住むなら東京に住めよと思うが、土地の高さやゴミの分別に面倒くさを感じて埼玉にしておいたようだ。

書類上100億を超える資産と大量の部下を持つ彼なら金の問題もないし、めんどくさいことは部下に丸投げしろと言いたいがいかんせん本人が認識していないのだから仕方がない。

よくまあここまで勘違いが進んだものだ。

超能力なんてありえないが、超能力者と見間違うほどの偶然の重なり合いである。

殺人事件スポナーとか呼ばれ始めている子供探偵もびっくりなシナリオである。

事件自体は彼が起こしているが、上手くその後が綺麗につながっていくのはかなり不気味である。

ことわざを作るなら、"秋人が歩けば事件に出会う"だ。

意味は、……そうだな。

秋人の行動は全て事件につながっているとかどうだろうか。


ガタゴトと電車に揺られ寝ているふりをしながらいやらしい目で正面に座ったOL美人を視姦しているのにも……きっと何か意味があるであろう。


彼は口元を歪ませ、小さく「おっぱい」と呟いた。


前言撤回、ただのエロガキだった。


"女々しく揃えられたするりとした足、少し短く見えそうで見えない黒いスカート、くびれたウエスト、そしてはち切れんばかりの胸。"


彼はメールを打つフリをしてメモ帳に突然こんなことを書き始めたのだからびっくりである。

変態もここまで行くともはや清い気もしてくる。まあ、そんな訳はないのだが。


となりに座ったおっさんも同じく舐め回すような眼で見ているのだから同類である。

男は欲望に忠実なのだ。

だからといってやって言い訳ではないが。

人間性を無くし、欲望のままにやりたいなら動物園の檻の中でも入っていればいいのだ。


一通り舐めまわした後、彼は満足しながら水道橋駅で降りていった。



満足し過ぎたのか、サークル仲間との約束はすっかり忘れていた。


読んでいただきありがとうございます。

次回はside で彼の行動を分析していきます。

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