今日のおススメの一品 トングのフライ 250円
長らく更新おまたせしました。
再開した本作の応援よろしくお願いします。
あるところにひとりの少年がいた。
彼はとある事件で頭角を現したエージェントであり裏社会では千眼と呼ばれている。彼の実態は普通の少年である。
運が悪いのかいいのか偶然に偶然が重なり合い解決した事件は数多。
着地と仕事をこなしどこの組織にも属さないその姿は一匹狼。全てを見通すようなその未来予知ごとき動きから名付けられたその名が千眼である。
先日、ロシアにて二重スパイをやっていたエリックを助けた彼、五味秋人は、超重要排除対象に指定され監視されていた。
暗殺を何度も失敗させた元凶を許すはずもなくロシア情報局の傭兵集団anbegを送り込み殺害を試みたのであった。
そんなことが起こっているとはつゆ知らず、人の論理感を失ったクズ。ゴミ秋人はせっせと小麦粉を運んでいた。
ヒーローショーを終えたあとまたきて欲しいと頼まれた彼は、追加ボーナスと安定したバイト先を見つけたことに喜んだのもつかの間、デパートは焼け仕事を失い明るい未来も失った。ザマァ見やがれ!天罰が食らったんだよ。
そんなわけで途方に暮れていた彼は知人から紹介された飲食店で働き始めた。
大手大衆レストランの桃屋一腹堂。
今日とて今日も楽しく働いて見事に給料泥棒をしていたのであった。
「ゆーじぃ!見ろよこれ」
「ぎゃははは!やっべぇ!ひゃはははは!なんだそれ?なんだそれ!!」
「今日のオススメのトングのフライでございますっぶふ!!ひひひ」
「インスタ映えぱねー!」
「載せんなよ?載せたらバレる」
「いやいやみんな見てるし、これは載せなくても時間の問題っしょ!」
「あー、もう3時かよ。店長返ってくるか?」
トングのフライという料理を作って遊んでいた秋人と一緒になって笑っている友人の悠次郎はバカッターと呼ばれるバカな行動をしていた。
やらかし行為をネットに晒す行為である。その行為による存在は本人だけの責任にとどまらず、店側しいてはグループ全体にたいしてイメージダウンに繋がるのだ。
そろそろ店長が返ってくると厨房を綺麗にし始めた二人。
髪を黒く染めピアスを外しメガネをかけた五味秋人はすっかり優等生な明るい少年な見た目になっていた。もちろん見た目だけだが。
黒髪に白のメッシュ、背中に和柄の刺青を入れた悠次郎が店内にいる他の店員に見たことを黙ってないと殺すと脅し作業を再開した。
トングのフライを片付け忘れた彼らは急いで散らかした厨房を片付け、食材を切りうどんを作り始めた。
「おおーい、ちゃんとやってたか?」
「うっす!やってました」
「はい、問題なく」
「そうかそうか、頑張ってんなーアイス食うか!?」
いち早く返事をする2人。
問題なく?問題だらけ。
全く白々しい。
この間抜けな男、48歳独身。桃屋一腹堂の店主。稲葉竜人という。
チョコミント愛好家でこいつがアイス食うかといえばチョコミントアイス他ならない。
他にない。
チョコミントとか歯磨き粉なんて言った日には大目玉を食らうどころか給料の減額もありうる。
最近はココアシガレットp作曲の絶対にチョコミントアイスを食べるアオイチャンがお気に入りである。
店内で流そうとして本社から派遣されてきた副店長に止められたくらいだ。
そのかわり、カラオケに誘われると必ず歌わされる。
見つかるのは時間の問題と言ったが、思いのほか早かった。
人数分のトングが用意されていたこの厨房にて、帰ってきた店長は着替えて手伝いに入ろうとした。
しかし何故かトングがない。
食洗機の中にもない。
探しても探してもない。
そして中央テーブルに不自然に放置されたフライ。
店員を見る。みな顔を背ける。
稲葉は震えながらフライを手に取った。
カリカリに上がった衣。
フライに力を入れた桃屋一腹堂の技術の粋を集めた機械による一品だ。
きつね色の衣を剥がすと中から現れたのは光り輝く銀色。
秋刀魚やアジと言った、光り物とはわけが違う。
眩しく輝くその表面は、天井につけられた蛍光灯を反射しより強く輝いていた。
「トングだな」
「はい、トングですね」
面白くなってきたと首を突っ込む秋人。
犯人は必ず現場に戻ってくるというがまさか自分から誰よりも先に行くとはこりゃあいかに。
「どうして、トングが、フライに、なってる?」
怒りを滲ませて震える店長。
ただえさえ日焼けで赤くなったその肌は怒りで鬼のように真っ赤になっていた。
「どうしてだッ!」
摑みかかるように聞く店長
「それは……」
言葉を詰まらせて怯える店員。
「アイツが!大森がやったんですッ!!」
悠次郎が同僚の大森に責任転嫁をした。
「はぁ!?ざっけんじゃね!」
キレる大森。それが逆効果だった。
バラされてキレたと勘違いしたのか怒りを炸裂させた。
「でめぇがぁぁぁあ!?!」
ブチギレて摑みかかる店長。とばっちり、いや完全に言いがかりをつけられた大森は"俺じゃねー!"と言いながら逃げる。
しかし秋人に足を引っ掛けられ転ばされると蹴りを腹に入れられ押さえつけられた。
「テメェら……許さねぇ」
「店長、こいつが言ったら殺すって……」
と秋人談。
いや、それは悠次郎が言った言葉だろうなんて言う話は知らない子だよ。
追い詰める追い詰める。
酷すぎる茶番劇。
他の店員は完全に無視して仕事を続けている。
触れるなんちゃらに祟りなしと言うやつだ。
大森太晴、17歳。イキリヤンキーいや、地元では知らない人がいないくらいの札付きのヤンキーだ。
彼は桃屋一腹堂に入るなり序列をつくり、貢がせた。
店長も知るには知っていたが、彼の所属する暴走族を恐れ強くは言えなかった。
そこで店長、稲葉竜人は甥っ子の悠次郎に協力を要請し、それに答える形で札付きどころでは済まない悪を召喚したのであった。
つまりトングのフライの下りは茶番である。
何か理由をつけて叩きのめそうとした結果だ。
稲葉竜人としては大森には一刻も早くバイトを自主的にやめて欲しかった。だから出て行けと言おうとした。しかしそれを遮る声があった。
「まあまあ、稲葉さん。彼は反省さていますし、もう少し様子を見てみては?」
「ふーぅ、ふーぅ、ごろす、殺してやる!」
「いや、どう見ても反省してるようには……」
「オラァ!兄貴が話しているのによそ見してんじゃねーぞワレ!」
悠次郎が殴る。いや叔父だろ?
本業感出しているところ悪いがお前の背中の刺青、いわゆるタトゥーシールってやつじゃん?
「殺す?てめえ生きて返せねえな?そうだ!今からこいつでフライ作ろうぜ!トングで作るより絶対、映えるって!」
急にサイコパス感を出す秋人。いや最初からか……。
それからは殴る蹴るの大嵐。厨房で何をやってんだかと言いたくなるが、誰も言わない。
濡れた床、血と水とその他でびちゃびちゃになった大森。
自慢の金髪は引きちぎられ面白半分に手で抜かれた。
殴られ蹴られた彼はアザだらけだった。
すっかり上下関係が染み付いた彼は
「働きます、働かせてください!死ぬ気でやります!給料いりませんから」
必死に店長に頼み込んでいた。
殴っている途中で刷り込まれた嘘には、こんなものがあった。
この店舗はヤクザのフロント企業で、従業員から金をカツアゲして挙げ句の果てには辞めさせたりしたお前に腹を立てた上が、俺たち(悠次郎と秋人)を派遣した。と。
いや嘘ばっかし。
それで怯えているのもあるが、包丁を片手に、叩いて味を染み込ませた後は衣をつけて油であげようと、料理法を呟きながら秋人が耳元で囁いたからであった。
ヤンキーをボコした五味秋人。
この話は前座に過ぎなかった!
次回!ママ襲いまかかるま暗殺者のまのて!?(まぬけ)
※ピンポーン
触れぬなんちゃらに祟りなしは触らぬ神に祟りなしのことを言っています。
2019/10/07 誤字報告ありがとうございます。早速、適用させていただきました。