1-7.限界と勝利
業火に包まれる魔族。勝利への確信を得たおれは安堵した。
しかし、人間と魔族の実力の差はおれの想像をはるかに超えていた。
最後の魔法でもやつの体力を削りきることはできなかった。
突然、炎がかききえ、怒り狂った魔族はランスをまっすぐにおれに向かって打ち込んできた。
「ダメだったか・・・・・。」
おれはゆっくりと目を閉じた。しかし、来るはずの死は訪れなかった。
金属が激しく衝突する音が鳴り響き、おれは目を開ける。
「ここまで戦って諦めるの?」
謎の女がそこにいた。最上位魔族の一撃を盾一枚で防いでいる時点で、
おれは目の前の女が只者ではないことを理解した。
美しい赤色の髪、爽やかなブルーの鎧、剣も杖ももたず、
細腕と盾一枚で強大な敵に立ち向かう姿は、彼女の美しさとあいまって、神々しささえ感じさせた。
「あんた一体何者だ?後方からの救援か?」
「いいえ、違うわ。あの丘からずっとあなたたちの戦いを見てたの。
人間が魔族に勝てるはずないと思って。でも、そこの魔族は相当弱ってる。
最上位魔族とまともに戦って、ここまでやって見せたあなたたちを、見殺しにするのは気が引けたの。」
「今更って感じだが、手を貸してくれるならありがたい。共闘といこうか。」
「いいわ、力を貸してあげる。
命の精霊レーベン、我が声に従え。
あたたかな吐息ですべての生命を癒せ!」
淡い光が体を包み込んだ直後、おれは戦闘が始まる前、
いやそれ以上に身体中に力がみなぎるのを感じた。
おれは指輪の通信石に向かって声をかける。
「ネリー、聞こえるか?」
「うん、リネス無事だったんだね。
一時はどうなるかと・・・。」
「あぁ、おれも死んだと思ってたがどういうわけか生きてる。
とにかく、その話は後だ。やつをやるぞ。悪いが魔力を高める補助魔法を頼む。」
「わかったよ!魔法の精霊マギー、我が声を聞け。
かの者にあたたかな祝福を!」
体をあたたかな光が包み込むのを確認してから、おれは謎の女に向き直り声をかける。
「対魔力装甲ははがれてやつは完全に生身だ。
その上、こちらは魔力も満タンだ。一気に攻めるぞ!!」
「ええ、あなた光の魔法は使えるわよね?
高位魔法は?」
「ああ、使えるがあんたは?」
「もちろん私だって使えるわ。それじゃ、私の後に続けて!」
俺たちはモテる魔力の全てを結集して詠唱を始めた。
「光の精霊リヒト、我は汝の祝福を求めん。
聡明なる天使の槍は邪悪なる種を打ち貫き、
聖なる波動をもって浄化せん!」
俺たちの手のひらから美しい光の槍が現れ、それは少しの狂いもない正確な直線を描いて、
魔族の体を貫いた。一瞬、世界そのものが光になったような錯覚すら覚える大光量の爆発の後、
空を覆っていた灰色の雲はなくなり、ボロボロになった帝都正門だけがそこに残された。
「終わった・・・のか?最上位魔族を人間が倒したのか?」
ネリーとおれは、自分たちが成し遂げたこととはいえ、驚きを隠せなかった。




