表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/50

5-17.誰かを救うってことは

ルイドとレムルス、その二大国家はその昔、

互いの国境付近に検問を設けて通行者を

厳重に管理していた。

ルイド城を連れ出された人々はそちらの

方角に連れていかれたそうだ。

おれたちは魔道車を走らせ、雪に埋もれた

道無き道を地面の足跡に沿って進む。

この吹雪の中の死の行進だ。

足跡の途中には息絶えた屍が

複数、転がっていた。


吹き付ける大粒の雪の中、視界の彼方に

大勢の人影を確認した時、おれは全力で

突進しそうになったが、すんでのところで

リーニャにとめられる。

「きっと魔族もいます。

不用意に近づいても犠牲者を

増やすだけです。」

「わかってる!わかってるけど、、、。」

「リネスさん、アリーさんから

連絡はありましたか?」

「いや、ないよ。

さっきから何度も通信石に

呼びかけてるんだけどね、、、。」

おれはその時、冷気による寒さ以外の

ものを感じ、身震いした。

それは戦場で何度も感じてきたもの、、

まるで鋭利な刃物のように

おれたちを狙う殺気であった。

「誰だ!?

隠れてないで出てこいよ!!」

おれは雪で視界の悪い中、殺気が

伝わってくる方向に叫ぶ。

「やはりバレてしまいましたか。」

空間が歪み、その中から殺意をまとった

ルベルが現れる。

「私の優秀な部下ロディスを

殺したのはあなたですね。

ここで息の根を止めてやりましょうか。」

ルベルは不敵な笑みを浮かべる。

「ロディスが、、副長官はやはり魔族側の

人間だったわけか。それじゃあ、本営が

襲われた時の手引きもやつが!?」

「その通り、人間という生き物は

愚かですね。

私の言葉に簡単に乗せられてしまうの

ですから。」

その言葉が終わる前にルベルは火炎系

魔法をおれたちに向けて放つ。

「てめぇ、ロディスに何を吹き込んだ!?」

「簡単なことですよね。

力を欲するものに力を与えるとね、、。

実際、魔鉱石で強化された彼は

なかなかの腕前だったでしょう?

人間にしておくのが惜しかった

くらいです。」

ルベルはおれとの間に少し距離をとった。

「あの赤髪の子はとどめを刺す前に

逃してしまいましたが、

あなたたちを血祭りにあげたあと、

息の根を止めてやりますよ。」

「赤髪の、、、?アリーのことか!?

アリーに、何をしやがった!?」

「少しばかり痛めつけただけですよ。

放っておいても死ぬでしょうが、

ここに亡骸を持ってこられなかったのは

残念ですね。」

「てめぇ!!」

おれは雪の地面を踏みつけて、ルベルに

向かう。

リーニャは火炎系魔法で、おれの進路を

確保してくれる。

「リネスさん!後方支援は任せて

ください!」

「リーニャ!助かるぜ!」

おれは雪が溶けきった地面を思い切り

蹴って宙を舞う。

「雷の精霊ドナーよ!我が声を聞け。

卑しき魂に雷神の鉄槌を!!」

剣から飛び出した電撃はまっすぐに

ルベルの対魔力装甲の隙間を狙う。

「我々、魔族はあなたたち人間を甘く

みすぎた。

魔族の勝利は永遠だと信じていた。

まさか、ここまで追い詰められる

ことになるとは。

しかし、まだ甘いですね。」

ルベルはおれの攻撃を軽々と避けると

漆黒の爪を振り上げて襲いかかってくる。

「あなたたちをこれ以上先に

進ませるわけにはいかないのです。

もう間も無く魔源の力は覚醒される。

我々は今からでも人間に対して

優位に立てる。

奪われた同胞のぶんまで、あなたたち

人間を虐殺してやりますよ。」

「そんなことさせるかよ!!

てめぇはここで終わりだ。

そしておれたちはアリーを助けて、

マルサスを倒す!」

おれは愛刀ではなく、時渡で出土した

別の大ぶりの剣を抜く。

そして、ルベルへ斬りかかった。

やつの漆黒の爪と剣が打ち合い、

激しく火花が散る。

踊るように、時として噛みつくように

斬撃の応酬が交互に繰り返される。

やがて、先に膝をついたのはルベルで

あった。

「くっ、体の力が抜ける。

これは、、その剣の能力ですか?」

「そうだよ。

お前とおれが打ち合えば打ち合うほど、

お前の力は失われて、おれの力が

増大していく。これは守りの大剣と

呼ばれる人間の英知だ。」

その戦いを見つめるリーニャにネリーは

話しかける。

「リーニャ、あれって時渡の、、?」

「はい、時渡の宝物の1つである

守りの剣です。

どんなに強大な相手に対しても有効で、

相手の魔力、体力を少しずつ奪っていく

魔剣です。

魔族は強い、でも強い相手であればあるほど

高い効果を発揮するあの武器をリネスさんは

最後の戦いの前に装備したんです。」

「じゃあ、リネスはもう

怖いものなしだね!

この調子でマルサスも

倒せるんじゃないかな。」

「いえ、あの武器は使用者の心を蝕む

魔剣でもあります。

相手から奪い取る力の快楽に支配され、

普通の人間では長くはふるえません。

リネスさんもこのたたかいだからこそ、

あの剣を取られたんだと思います。」

「この戦い、、、?」

「最初はアリーさんを欠いた状態での

上位魔族との戦闘。

そして、いまはアリーさんを少しでも早く

見つけるための戦闘です。」

リーニャは、燃えるような決意と

怒りをにじませるリネスの姿を

見つめていた。

やがて雪原の死闘は終息へ向かって

動き出す。

強烈なぶつかり合いののち、ルベルは

一度大きく距離をとった。

「もはやこれまでというわけですか。

私ですら、追い込まれるとは想定外

ですね。

ならば、せめてあなたたちを道連れに

、、、。」

やつは腕を大きく振り上げ、むき出しの

地面に突き立てる。

どわっと周りの雪が持ち上がり、

巨大な雪の煙が辺り一帯を覆う。

「どこいきやがった!?

出てきて闘えよ!」

「心配しなくともここにいます、、、。」

一瞬のことだった、いつの間にかやつは

おれの背後に回り込んでいた。

そして、警告を発するような真っ赤な瞳が

魔力の暴走を告げる。

吹き付ける巨大な熱量、体を

切り刻まれるような衝撃波が

生まれる。

やつはおれの目の前で自爆した。

あのとき、淡い繭のようなものがおれを

覆わなかったら、おれは確実に死んでいた。

その奇跡は、、アリーが起こして

くれたんだとのちに知ることになる。


次に目覚めたとき、おれは見知らぬ天井の

見知らぬ廃墟で寝かされていた。

そして、隣には、、、アリーがいた。

おれは震える手でそっとアリーの手を握る。

アリーはそれに気づくと、おれの手を

そっと握り返し、心配させんな、と

つぶやく。

おれも心配したんだぞ、と返すと、

ぷっと吹き出してしまった。

また、こんな風に話せる日が来るなんて、

心が踊るようなワクワク感で

いっぱいだった。


あの爆発の瞬間以降の記憶がおれにはない。

その話については、帰ってきたネリーと

リーニャが説明してくれた。


ルベルの自爆で瀕死の状態になったおれを

救助した際、突然通信石が共鳴し

はじめたそうだ。

アリーが近くにいると確信した

ネリーたちは周囲を捜索し、

雪原で倒れるアリーを発見した。

彼女もかなりの重症だったようだが、

リーニャの治癒魔法で回復し、最後に

目を覚ましたのはおれだったようだ。


「そんなことがあったんだな。

ものすごく昔のことのように思えるや。」

「しょうがないよ、リネスはずっと

眠り続けてたんだから。」

ネリーはくすくすと笑いながら

教えてくれる。

その言葉を聞いたとき、おれの頭に

疑問が生まれる。

「そ、そうだ!アリー!

母ちゃんはどうなったんだ?」

「お母さんは無事よ。

それに旧本営の人たちもティムスが

助けてくれたわ。

いきなりルベルが襲ってきたせいで、

全員を助けることはできなかったけどね。」

「あの屍の山はそういうことだったのか。」

「ええ、もう全員帝都に移送されたから

安心してね。

それにね、東側の渡らずの橋の戦いにも決着が着いたわ。」

「やっと、東側も落とせたのか・・。」

「ええ、とても長い時間がかかったし、

その分犠牲も多かったけど、

やっと取り返したわ。

あとは、魔族の最後の砦であるレムルス城のみよ。」

「あと少しだな・・。

もう誰も犠牲になることなく勝ち抜こう。」

俺はそう言って皆の顔を見ていく。

誰もが自身に満ちた表情を浮かべていた。

最後の戦いの火蓋は切られようとしている。

「何も守れなかった俺たちが、誰かを守れるように

なったんだ。魔族め、待ってろよ。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ