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5-15.マリル侵攻戦

リンガルシア北西の魔道車で

2時間ほどの距離の海沿いに

かって栄えた港町マリルの、、

遺跡がある。

むかし、マリルという場所は

北側と南側の国家の海運の

拠点として栄え、真っ白な壁の

美しい家が立ち並ぶ、きれいな町

だったと聞く。

しかし、現在そこは、通りの舗装が

えぐれ、そこかしこにおぞましい

血だまりの跡が残る魔族の住処と

なっていた。


俺たちは途中まで魔道車で移動して、

マリルまでの並木通りと呼ばれた

かっての正門へと続く道を慎重に進み、

目的地へ近づく。

崩れた外壁が見える。そこかしこに

何かが直撃したようなえぐれた跡があり、

不気味な黒いシミも確認できる。

遠目でも複数の影が動くことが

確認できるから、おそらく外壁には

魔族が待ち構えている。

防殻魔法で身を守りつつ、おれたちは

少しずつマリルの外壁へ向けて前進した。


外壁まであと数百mまで迫ったあたりで、

遠くから不気味な叫び声が聞こえてきた。

そして、次々と魔族が現れた。

上空から飛来した中級魔族が次々と

滑空攻撃を仕掛けてくる。

魔族が雨粒のように次から次へと

降り注ぐ様は、魔族へトラウマを

かかえる人が見れば、

地獄とすら感じただろう。

リーニャは光系の魔法攻撃を使い、

滑空してくる魔族の体を次から

次へと射抜く。

攻撃を回避して着地した魔族については

おれが一匹ずつ潰していく。

最初こそ数の多さに圧倒されたが、

やはり中級の魔族程度であれば、いまの

おれたちの敵ではなかった。

やがて、草すら枯れた死の大地に

どこまでも魔族の死骸がころがる

戦場が出来上がる。

無事に戦い抜いたおれは深いため息をつき、

その場に腰を下ろした。

リーニャの広域型の攻撃魔法が

なければ全滅していたかもしれない。

やはり、彼女の魔法の才能はすごいな

と感じる。


大規模な戦闘で負った傷の回復と

休息のため、おれたちは近くの木陰で

少しの間休憩することにした。

「すごい数の敵でしたね。私、

びっくりしちゃいました。」

リーニャは驚きの声をあげる。

先ほどの敵の数は確かに

尋常じゃないものがあった。

徐々に北に追い込まれていっている

魔族にも焦りが出はじめたのか。

「はやくご飯食べちゃお。ぼく、もう

お腹が減ってヘトヘトだよ。」

食いしん坊のネリーは、少し

お疲れのようだ。

おれたちは食事をとり、

マリルの市街に入ってからの行動を

確認した。

目標地点はマリル市街広場、

そこにいたる道では二手に分かれて

戦力を分散化して戦う方針とした。

途中、魔族との戦闘がいくつかあったが、

おれもネリーたちも無事に市街広場の

そばまで到達した。


おれたちは山のような魔族の死体に

囲まれ、吐き気を抑えながら

マリル中心部に歩を進める。

「灰色の空、充満する死臭、残骸の山、

あいつら魔族のいるところはいつも

こうだ。」

ネリーは悲しそうにつぶやく。

「魔族って何なんだろうな、

あいつら何がしたいんだろうな。」

おれは答えになっていない返事を返す。

「道中、お話しを聞かせてくれた方は、

彼らは破壊衝動が実体化したものだ!

と言っていましたよ。」

リーニャは破壊衝動という言葉を強調した。

「破壊衝動か、、、。分かる気がする。

ここにはかって、たくさんの人が住んで、

幸せに暮らしてたはずなのにな。」

おれは大きなため息をつく。

その時だった、前方から影が迫ってくる。

おれはとっさに剣を抜き、

ネリーたちも戦闘態勢をとる。

しかし、現れたのは人間だった。

「た、、たすけて、、。」

泥で汚れ、ところどころ破れた布をまとった

その男性の姿はまるで奴隷のようだった。


男性はディルと名のった。

ディルの話から驚愕の事実が明らかになる。

ルイド城で囚われている人間以外にも、

その土地にもともと住んでいた人間の

一部は奴隷として生かされている

というのだ。

マリルでは、ディル以外に500人ほどの

人間が囚われているという。

そして、この不利な戦局にあって魔族は

人間側の奴隷を殺し始めたというのだ。

おそらく人間側に奴隷を奪われ、

その人間たちが戦力化するのを

恐れたのだろう。

「くそっ、どこまでくさってやがるんだ。」

おれたちはすぐにディルから教えられた

旧市街の広場の北側の庁舎に向かった。

そこでは、すでに戦闘が始まっていた。

3体の最上位魔族が人間側の奴隷と

たたかっている。

人間側は貧弱な装備のため、

押されているが一方的な虐殺には

なっていなかった。

すぐれたチームワークで巨体を

御しきれない魔族を翻弄している。

しかし、地面に転がる死体の多さからも

もう長くは持たないことがわかる。

おれは駆け出すと、戦火の中心に

飛び込んだ。

「あ、あんたたちは人間か!?

そうか!助けに来てくれたんだな!

ディルも無事だったか!よかった。

やっぱり、噂は本当だったんだ。

人間が魔族に勝てる日が来るんだ!

おれはノイルだ。力を貸してくれ!」

「ああ!任せな!おれはリネスだ。」


魔族の巨大な腕が振り下ろされる。

その腕に着地して、おれは愛刀を抜き、

魔族の首元まで一気に駆け上がる。

そして、魔法剣を使う準備を始める。

「火の精霊フォイア、我が声を聞け。

熱き炎よ、悪しきものへ制裁の一撃を!!」

真っ赤に輝く刀身に紅蓮の炎が宿る。

おれはその一撃を、敵の首から顔面、

眼窩へとたたきこむ。

魔族は大きな叫び声をあげ、尻餅をつく。

「よし、こっちはしばらく動けない!

ノイル、手伝うよ。援護してくれ。」

「すげぇ、、。なんだよあれ。

人間技じゃねぇよ!」

ノイル、ふくめて囚われの人々は

感嘆の声をあげる。

そして、人々の心に湧き上がる希望は

勇気と力を湧き起こす。

奴隷たちの弓や槍の攻撃はほぼ

効いていないが、魔族の気をそちら側に

引きつけてくれる。

おれは最大火力の魔法を敵のど真ん中に

放つため、詠唱を開始する。

「光の精霊リヒト、我は汝の祝福を求めん。

聡明なる天使の槍は邪悪なる種を打ち貫き、

聖なる波動をもって浄化せん!」

敵の眼前まで接近し、おれは必殺の一撃を

魔族の眼球めがけて打ち込んだ。

敵は一撃で絶命し、俺たちとは別に

残りの魔族と戦っていたリーニャも

勝利したことで、マリルを魔族から

取り返すことには成功した。

しかし、亡骸の前で泣き崩れる人々を

見ていると、とても勝利の余韻には

浸れない。

マリルを取り返したのち、

帝都への連絡を行いマリルに人間側の

拠点が築かれた。

東側ルートについてはやはり突破は

叶わなかったようだが、敵の軍勢の多く

を倒したことで、突破も夢ではなくなり

つつある。

マリルの生き残りの人々については、

一度帝都へ移動してもらい、身体検査を

行うとのことだった。


やがて、北側国家群の戦況は旧本営の

人々を救うため、舞台をルイド城に

うつすこととなる。

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