5-12.東西同時攻勢作戦
おれたちの帰還ののち、数日後には帝都からの
精鋭も集めて戦略会議が開かれた。
まずは現状報告と斥候兵による調査報告が行われた。
「つまり、魔族側は旧マリルに最上位魔族を複数体配置、
西側ルートから攻めてくる人間を迎撃するつもりか。
また、東側ルートは渡らずの橋があいもかわらず
強固な守りで突破できずということだな。」
そこでリーニャが手をあげる。
「あの、、、私たちが聞いた本営からさらわれた人々の
居場所はわかったのでしょうか?」
「はい、リーニャ様。旧ルイドの城から毎日、少しずつ人間が
旧レムルスに移送されるのを斥候兵が確認しています。」
参謀官が威勢良く返事する。
「もう悠長なことは言ってられませんよ!
魔族どもは巨大な力を手に入れる準備を進めているはずです。
こうしている間にも魔源の力が解放されるかもしれない。」
おれは焦りから早口で言葉を続ける。
「いま俺たちに取れる手はほとんどないはずです。」
おれの発言の続きをネリーが引き受ける。
「戦力の分散はリスクを伴いますが、いまは東側ルート、
西側ルートへの同時攻勢しかないと思います。
戦力が拮抗しているいま、東側ルートは突破は難しいです。
しかし、東側の魔族を引きつけてくれさえすれば、僕たちが
西側から旧マリル、旧ルイドへ攻め込む時間が生まれます。」
その後も議論は紛糾したが、結論はネリーの発言した東西同時攻勢作戦に決まった。
それから1週間、リンガルシア、帝都、ガルベンシア近郊の砦は
兵士・武器の再配置、平坦輸送ルートの調整などで
非常に慌ただしたかった。
そんな中、おれはアリーに会話する時間が欲しいと言われ、
夜の酒場で2人きりで会うことになった。




