1-4.彼女が裏切り者になるまで
父が消息を絶ってから、私は報償金で1年ほど
国の運営する魔道学舎に所属して、魔法を学んだ。
魔法、それは詠唱と呼ばれる精霊への祈りにより不可思議な現象を引き起こすものであり、
精霊名に続けて、
「我が声を聞け」と続ける下位魔法、
「我が声に従え」と続ける上位魔法、
「我は汝の祝福を求めん」と続ける高位魔法が存在する。
さらに失われた禁術と呼ばれるものもあるようだが、現在の学舎で習得できるのは高位魔法までだ。
そして、魔法を使える人間は大きく2種類いる。
まず、人々から悪魔と呼ばれる「魔族の血を飲んだ人間たち」。彼らは超人的な魔法力で、
人間が魔族に負け蹂躙される未来を少しだけ先延ばしにしてくれている。しかし、故意か意図せずかは
分からないが、魔族という憎むべき相手の血を飲み、魔族と同じ赤い目をした彼らを人々は疎み、
避けていた。彼らは悪魔とか赤目などと呼ばれ不吉な存在とされる。
しかし、そんな彼らでさえ最上位魔族や司令魔族には歯が立たない。
結局のところ、人間はいずれ滅ぶ運命にあるようだ。
そしてもう一つが私のようなパターンで、国からミリーと呼ばれる精霊力を
宿す使い魔を託されて、魔法が使えるようになる場合である。
私は学舎を首席で卒業してマリルで与えられる中では上位の部類の生命を司るミリーを得た。
そして、卒業後すぐに戦場に出てマリルという国を半年ほど延命させた。
だが、不快な灰色の空に雪が降り続けていたあの日、
マリルは司令魔族の侵攻を受け、たった数時間で陥落した。
魔族には、
最下位魔族
下位魔族
中位魔族
上位魔族
最上位魔族
そして頂点に君臨する4体の司令魔族と呼ばれる序列が存在する。
マリルを襲ったのは司令魔族の1人ルベルという巨大な爪と漆黒の装甲をもつ魔族だった。
その魔族は複数の下位魔族を連れて、マリルの外周壁の正門に突如現れ、街を破壊し始めた。
人間は全力で抗った。その際、9割のミリー使いが最前線で命を落とす中、私は逃げ出した。
国を捨てて生き延びる道を選んだ。父の行方を知る前に死ぬわけにはいかなかった。
母は父の失踪後、精神が不安定になり、調査団が最後に目撃された町リンガルシアに移り住んでいた。
だから、マリルという国を捨てることになんの躊躇いもなかった。そして私は裏切り者と呼ばれることになる。
私は国を捨てたのち、帝国に移り住み、圧倒的な力を求めて、禁術と呼ばれる悪魔の術にのめり込んでいくことになる。




