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5-5.土の精霊神殿

魔道車に揺られること1週間、おれたちは帝国領を抜け、

東側国家群に到着した。

地理的には、帝都から真東のテトの橋を渡った地域のことだ。

ここから川沿いに北西に少し進むと旧ガルベンシアの遺跡がある。

かっては栄えた要塞都市も一度滅んでしまえば、過去の遺物でしかなくなる。

ルベルに滅ぼされ、そして人間側が奪還した今でも、

ガルベンシアへの帰還民はなく、荒れ果てた街には時折

野生の獣も出るため危険極まりない。

俺たちは、ガルベンシアの土の精霊神殿のそばにテントを張り、

火を起こして食事の準備を始める。

「アリーさ、最近鎧を装備しなくなったよね?」

ネリーがふと気付いたらしく声をかける。

「気付いてくれた!私って基本的に後方支援だから軽装にしてみたのよ。」

「普段着もそんな感じなの?すごく素朴っていうか、落ち着いてるよね。」

「うん、そうよ。あんまりガチャガチャしたのは好きじゃなくてね。」

「へぇ!ね、リネス、アリーの私服ってなんだか素朴でいいよね!」

「んー、ああ、そーだな。」

おれはリーニャとのおしゃべりに夢中になっていて生返事する。

一瞬、殺気のようなものを感じたのだが近くに魔族でもいるのだろうか。

そのあと、アリーは寝るまでまともに口もきいてくれなかった。

ネリーとリーニャの残念な人を見る目が痛い。

やはり、話はちゃんと聞くべきだと思った。


土の精霊神殿とは、土を司る精霊ボーデンを祀る場所であり、

大規模な土木作業が行われる時には、工事関係者が集まり

万事うまくいくことをお祈りするために使われる。

神殿は地下と地上階に分かれており、基本的には地上階しか

使われないが、一部の上位神官は地下の施設を使うことを

許可される。俺たちは皇帝権限であらゆる施設へ入ることが

許されているので、問題なく入れるはずだ。

真っ白な四角い建物には地上階に通じるスロープ、スロープの

左右に1つずつ扉が設置されている。

精霊の祭壇へは左右の扉から2組に分かれて侵入する必要がある。

扉の先には守備兵代わりのからくり兵が待機しており、

合言葉を言わなければ攻撃される。

俺たちは神殿へ侵入する前に通信石で帝都の神官から説明を受けた。

祭壇へは手続きさえ分かっていれば問題なく到達できた。

「なんだか綺麗な場所ね、、、。」

アリーが感嘆の声を漏らすのも理解できる。

そこには縁を白縹の美しい水が流れ、

中央には平たい透明な祭壇が設置された空間が広がっていた。

「あの中央の祭壇で祈ると精霊が答えてくれるんだったよな?」

「はい、そうでしたね。精霊との会話は誰が行いますか?」

リーニャは全員の顔を見て尋ねる。

「私にその仕事任せてもらえる?どうしてもやりたいの。」

「ああ、いいけどどうしたんだ?」

「貿易の谷のあの魔法陣は父の術に似てた。それがどうしても気になるの。」

「そうなのか?わかった、それならアリーにお願いするよ。」

「ありがとう。」

アリーは静かに祭壇に進み出て、跪いた。

そして、胸の前で手を合わせ祈りを捧げる。

すると次の瞬間、アリーの姿は消えてしまった。

おれたちは何があったのかと動揺する。

「きっと、精霊様が別の場所に導いてくれたんだと思います。」

リーニャは神殿の天井を見つめながら呟く。

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