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4-4.永遠の循環

死怪と呼ばれる怪物とは、すぐに遭遇することになった。

ネリーとおれで光の精霊リヒトの力を使い、光源を確保する中、

そいつは突然現れた。

一目見るだけで人の世界とは隔絶した存在と気づけるそれは、

口から毒液をはくことで攻撃してくるようであった。

聖域の精霊ハイリヒトゥームの力を借りることで浄化はできるが、

一時的であれ毒によるダメージを受けるのは萎えた。

アリーなどは新調したばかりの鎧(また、新調したのかよ!とツッコミたいが、、)に

毒液をかけられ、怒り狂ってザッパザッパと敵を倒していたが、

おれとネリーは連中のおぞましい姿に少しビクついていた。

「こらっ、男ども!何ビビってんの。レディに何やらせてくれてんのよ!」

「いやいや、お前、一体何匹連中を倒したんだよ。レディとか冗談は夢の中で言っとけ!」

おれは左から襲ってきた死怪の攻撃を避けつつ、ハイリヒトゥームの魔法で浄化を行う。

そんなこんなで死怪を打ち倒しつつ、綺麗に整備された石階段を降りていく。

やがて、ひらけた場所に出た。

まるで闘技場のような形であり、中央に壁で囲われた空間、

その周囲には中央の空間を囲うように椅子が配置されている。

「ねえ?なんだかすんごい嫌な予感がするんだけど、、、。」

アリーが周囲を警戒しながら呟く。

「僕もこの空気はおかしいと思う。殺気が漂ってるっていうのかな?

この場所に足を踏み入れたら、大変なことになりそうだなと思う。」

ネリーが補足してくれる。

「奴が、、、ルベルがいるのか?」

「ううん、多分違うと思う。だけど、戦闘準備と補助魔法をかけた上で

踏み込んだ方がいいみたいだね。」

ネリーはそう言うと、杖を構えて呪文の詠唱をはじめた。

「力の精霊ライストゥング、我が声を聞け。

戦地赴く友に正しき力の祝福を!」

おれたちの身体能力はネリーが唱えた強化魔法により、

常人の数倍近い能力値まで引き上げられた。

「みんな、気を抜かないようにね。」

「ああ!」「もちろんよ!」

そして、おれたちは闘技場の中央の空間に足を踏み入れた。

周囲を警戒しつつ、数歩進んだ時だった。

中央の空間の左右に設置されていた像が急に動きはじめた。

これは古代のからくり兵士と呼ばれるダンジョンでは頻繁に遭遇する

対侵入者用の仕掛けだ。

機械仕掛けのゴーレムが襲うというシンプルなものだが、

このゴーレムの強さが尋常ではなく、非常に効果的なトラップでもある。


からくり兵士は、光沢を放つ真っ赤な鎧を装備し、

片方は長大な斧を、もう片方は長大な槍を手に持っていた。

戦闘はすぐに始まった。

斧の方がおれを、槍の方がネリーとアリーを攻撃すると言う連携がとられる中、

予想以上に素早い攻撃におれたちは驚く。

「古代の魔法トラップってのは、下手すると現代のものより高性能かもな!」

「だね!だけど、相当やり手の術者じゃないとこのレベルのトラップははれないよ。」

「ぜひ、そいつの顔を拝んでみたかったがな。」

会話をする程度の余裕はあったが、雨のようにふりそそぐ斧の一撃を避けつつ、

おれたちは一度距離をとった。この戦闘で1つわかったことがある。

連中はダメージを負うと鎧にヒビが入り、それが拡大していくようだ。

つまりは鎧を破壊できればおれたちの勝利か。

アリーも同じことに気付いたようで、剣を握る手に力がこもっている。

乾いた地面を蹴り、おれとアリーは同時にからくり兵士に襲いかかった。

光、炎、氷の魔法剣を組み合わせて強烈なダメージを与えながら、

合間に上位魔法による攻撃を加える。

「いい感じにひび割れお化けになってきたみたいじゃない?とどめよ!!

光の精霊リヒト、我が声に従え!

聖者の槍よ、さまよう罪人に贖罪の一撃を!!」

帝都で最上位魔族に使った光魔法の上位魔法版だった。

現れた2本の光の槍は、まっすぐにからくり兵士に向かい、その体を射抜いた。

次の瞬間には、敵の鎧は粉々に砕け散った。


粉々に砕け散ったからくり兵士の残骸を眺めながら、

ネリーはぼそっと呟く。

「滅びてしまった国のダンジョンで、この子たちは

いったい何を守護してたんだろうね。」

「ネリー、、、?」

「守りたかった誰かはもういない。でも、守ることから逃げ出したら何も残らない。

この子たちの生き方って昔の自分に似てるなって。」

「ネリー、あんたはたしかに大切な人を守れなかったのかもしれない。

でも、逃げ出したら何も残らないから戦ってたの?

違うわ、帝都の人々を守りたかったんでしょう?だったら、胸を張って。」

「アリーは優しいんだね。ありがとう。

リネス、本営の人たち、魔族に焼き払われた街を見て泣いてた。

武器もないのに魔族に突っ込んでいって死んで、

きっとこんな虚しさとか絶望感があったんだろうなって。」

「ああ、きっとそうだろうな。おれも誰かを守りきれなかった時の苦痛は知ってる。

こんなこと、一刻もはやく終わらせてやりたい。」

「2人とも、戦いはまだ続いてるのよ!元気出して。」

「お前はいつも元気じゃねーか。最初の頃の憂いをたたえたインテリキャラはどこいったんだ。」

「そんなキャラを売り込んだ覚えはないわ!

私はいつだってこんな感じの空気読める子なのよ!」

「自分でそれいうのかよ。」

ネリーはこのやり取りを眺めながらくすりと笑い、おれたち2人を見て呟く。

「元気な2人を見てるとぼくもなんだか元気になれる気がするよ。」

その眩しい笑顔を眺めつつ、おれたちは迷宮探索を再開する。


「ねぇ!さっきから同じとこぐるぐる回ってる気がするのは私だけ?」

「気のせいだと信じたいが、おれもまったく同じことを考えてた。

これ迷ったぞ、、、たぶん。」

「あー、もう!こんな土っぽいとこで残りの人生過ごすのだけは勘弁よ!」

「おれに怒りをぶつけられてもだな。」

おれたちは時間迷宮について事前に情報を得ていたので、

少し進むたびに壁に印をつけつつ進んでいた。

だが、ほんの少し前から同じ印が何度も視界に入ると言う恐ろしい事態に陥っていた。

「時間迷宮ってさ、時間と空間という2本の糸があって、

時間の糸だけ渦を巻いてるみたいなことなのかな?」

「なんだか学舎にいた頃を思い出すような小難しい話ね。」

アリーがげんなりと呟く。

「もしそうなら、この動かない空間に時間を捻じ曲げてる

何かがあるのかもしれないよ。」

「たとえば、どんなものだ?」

「んー、そうだな。魔鉱石には時の精霊の力と共鳴するものもあるよね?

たとえば、このループの中で僕たちはトラップとして仕掛けられた

魔鉱石を見落としてたのかも。」

「よし、もう一度、慎重に歩いてみようぜ。」

時間迷宮のループ空間は、石造りの道が続き、等間隔で

からくり兵士を模した石像が置かれていた。

そのうちの数体の瞳に設置された他とは違う色の石に最初に気付いたのはアリーだった。

とんでもないドヤ顔を決めながら、彼女はおれに石を差し出してくる。

「デレ目、これって魔鉱石よね?」

「デレ目ゆうなし、たしかにそうだな。なるほどなぁ、石像に隠してたのか。

手の込んだことをするよなぁ。」

「でもよかったね。これでこのループからは抜け出せるはずだよ。」

ネリーの予言は見事に的中し、おれたちはやっとこさ無限のループを抜け出すことに成功した。

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