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4章 時渡の国 4-1.時渡の国

終焉の一夜により人々は本営を、家族を、財産を、友人を、戦力を失った。

そんな中で唯一の朗報は帝都が無事だったことだ。

帝都すらも攻め落とされていたら、人の住まう場所は地上から姿を消していた。


帝都の無事がわかったのち、俺たちは一度帝都に戻り、事の顛末を皇帝に伝えた。

皇帝は本営の人々を帝都に受け入れることを決断し、難民の受け入れが始まったことで、

ひとまず本営の件は一段落となった(食料、住居の問題などはあるが、、、)。

人間側の最後の砦は帝都となった。その事実は人々を追い込むと同時に結束を

高めるものともなっているようだ。

この最後の砦を守るためには俺たちはルベルを倒す必要がある。

残る3体の司令魔族のうち、ルベル以外はあまり活発なタイプではない。

混沌のマルサス、守護のロバンの2体のうち、ロバンは貿易の谷に鎮座し、

マルサスは姿を見せたこともない。

つまり、ルベルを倒せば人間側が突如魔族の侵攻を受ける可能性は下がるわけだ。


俺、ネリー、アリーはどう動くべきかの決断を求められることになる。

そして、その方向性を確定付けるための会議ということで

アリーが指定したカフェに集まったのだが、、、。

「ここは国の未来について語るにはちとポップすぎないか?」

「そう?あんまりむずかしく考えないほうがいいわよ。

気持ちを落ち着けて、ゆったりした中で考えるほうが案外、

ナイスアイデアに行き着くわよ?

ほら、お風呂とかトイレの方がアイデアひらめくじゃない?」

「あ、ああ、まあそうだな。」

間違ったことは言っていないのだが、なんとも言えないアリーの姿を眺めつつ、

おれはルベルの言っていた時渡の国について説明を始めた。

この大陸には太古の昔、時の精霊ツァイトの祝福を受け、発展した国があった。

国名を時渡の(ときわたり)と呼び、帝都の北西のなだらかな丘陵地帯に存在していた。

彼らは精霊の力を借りて、時鐘と呼ばれる現代でいう時計のような機器を生み出したり、

時間制限はあったものの少しだけ過去に旅をする装置をも開発した。

しかし、急激な発展は周辺国から警戒され、火種を振りまくことになった。そして、

偶然リンガルシアとの国境付近で起こった民間人同士の小規模な争いをきっかけに、

国同士で2年にも渡る殺し合いがはじまった。

「いつの世も戦争ってなくならないものなのねぇ。

今でこそ、魔族っていう共通の敵がいるからいいけど、

連中が駆逐されたら、また人間同士で争いが始まるのかなぁ。」

アリーは天井を見上げて、どこか落ち込んだ様子でつぶやく。

「なんだか複雑だよね。」

それにつられたのか、ネリーもため息をつきつつ、言葉を続ける。

「説明の途中でごめんね、続けて。」

アリーに先を促され、おれは語り始める。

当初、圧倒的技術力と魔法力を誇る時渡の国は快勝を重ね、

リンガルシアは追い込まれていった。

しかし、いざリンガルシアが落とされるとなった段階で突如として、

時渡の国はこの地上から消えた。

いや、正確には人と技術が消えたと言うべきか。

のちに周辺国の調査隊が派遣された際には、時渡の国は廃墟と化し、

時間迷宮と呼ばれるダンジョンが静かに口を開けていたという。


ある賢者曰く、人の道を外れようとした時渡の人々を導くものあり。

その名をリーニャと言い、迷える人々を永遠の循環の中に導いたのだと言う。

つまりは、時渡の人々は技術の全てを地下に建設した永遠の循環、

侵入者の方向感覚を狂わせ、取り込んでしまう迷宮の中に隠したと言うことらしい。

「なんだか、夢があっていいわね!地下の迷宮なんて!」

アリーのテンションが上がっているのはなぜだろう。

この子はどうやら迷宮とか洞窟みたいなのに夢やロマンを感じるタイプみたいだ。

「えー。でも暗くてジメジメしてそうで僕は嫌だな。」

なんとも女の子っぽいことをつぶやくネリーに優しい目を向けながら、

「大丈夫さ、かっての超技術国家が作った迷宮だぞ。

坑夫が掘ったトンネルとはわけが違うって。」

「そうだよね。でも、あの迷宮は悪い噂しか聞かないよ。

一度入ると出られないって。」

「あの迷宮の中は時間と空間が歪んでいて、

一度入ると無限のループにとらわれるってあれか?」

「うん、それだよ。帝都の冒険者の中にも何人か

消息不明になった人がいるんだ。」

その話を横で聞いていたアリーの顔が青ざめる。

「ちょっと、それ本当なの?想像以上に危ないところじゃない?

いやよ、わたしはそんな迷宮で一生過ごすなんて!」

「まあ、そういうなって。どうせただの噂だよ。

ちゃんと帰還してる人間だっていくらでもいるんだから。」

「あ、そなの?じゃあ、問題ないわね。」

「アリーって、ロマンとかファンタジーみたいなのに惹かれるけど、けっこー臆病よな。」

「いや、待ちなさいよ。デレ目!だれが臆病ですって!」

「まあまあ、2人とも。喧嘩しないで。とりあえずはリスクを承知した上で、

その時間迷宮に行くしかないみたいだね。」

「ああ、そうだな。帝都からだとだいたい2日くらいかな。みんな、今日はゆっくり休んでくれ。」

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