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2-6.覚醒
灰色の空、大地の割れ目、鼻をつく異臭、肌を刺す吹雪、
朦朧とする意識、おれは一番最初の記憶の中にいた。
強烈な悪臭、その臭いをたどっていくと人間の死体が転がっている。
まだ、死んで間もないその遺体は赤色のペンダントを首から下げていた。
おれはなんとなくそのペンダントに見覚えがあった。
手を伸ばし、それに触れる。その瞬間、おれは目を覚ました。
真っ暗な世界だった。そこに魔族がいた。
トリストンと呼ばれる災厄の源が、そこで気色の悪い笑みを浮かべていた。
おれの感情は激しく揺れ動いた。
怒りと怒りがぶつかり合い、うねりあい、どうしようもない膨大な力が生み出される。
体からうねるその膨大なエネルギーを排出する術を、言葉をおれは知っていた。
「レグネシア・・」
そう唱えた瞬間、世界を分断する真っ赤な閃光がトリストンを貫いた。