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2-5.誰も守れない

「リネス!?リネス、飲み込まれたらダメだよ!」

私とネリーの目の前でリネスは広域呪詛に飲み込まれた。

この魔法は相手の激しい感情を媒介に精神を侵食して、

悪夢に閉じ込める禁術の一種だ。

「ネリー、そのデレ目は今の状況じゃ戦力にならない。」

私は広域呪詛に飲み込まれた人間を何人か見たことがある。

生気を失った瞳、まるで糸に吊り下げられたように力の抜けた体。

この状態から元に戻れた人間はいない。

だから、私はリネスよりも目の前の災厄と対峙し、戦うことにした。

勝てる確率なんてほぼ0だ。だが、何もせずやられるのも嫌だった。

「ひひひひっ。ほんとうに愚かですね?

ここで逃げ出せばもう少しは長生きできるのに。

まあ、どちらにせよ近日中にはここのものを連れて、

あなたたちが帝都と呼ぶ場所を滅ぼしますがね。」

「そんなことさせないわよ!いま、ここで死になさい!

光の精霊リヒト、我は禁にふれ、

咎められし悪魔の罪人を解放せん!禁術の18章ノイル」

「ほほう、人の身で古の禁術を使いますか。」

トリストンは面白いものを見るような好奇の目で私の姿を眺めている。

私は召喚魔法と呼ばれる悪魔を解放する禁術を使用した。

術者の魔力を全て食い尽くして、最上位魔族すら喰い殺す悪魔が現れる。

戦いはすぐに始まった。身を翻し、攻撃を次々と避けるトリストンと、

疾風の如く攻撃を繰り出す上半身は人、下半身は4足の獣のような悪魔。

「まさか悪魔と戦うことになろうとは。ほんとうにあなたたち人間とは面白い生き物です。」

トリストンは悪魔の攻撃、魔法を全て防ぐ。

悪魔ですら司令魔族には歯が立たないのか。

こんなにもやつらと人の間には実力の差があった。

必死で守りたいと思っても守れない。

奪われて奪い尽くされて大切な人も、大切な場所も。

司令魔族には半端な魔法も攻撃も効かない。

さきほどから、ネリーが劣化魔鉱石による赤眼への攻撃を行なっているが、

まったく当たる気配すらない。

私は魔力を使い果たして使い物にならない。

悪魔が勝てないなら、私たちは負けるしかない。私は全力で祈った。

「なんですか?期待して見ていればこれで終わりなのですか?」

そう言ってトリストンは右手で軽く悪魔をはたく。

その瞬間、悪魔は断末魔の叫びをあげて息絶えた。

「そんな・・・・。」

トリストンは軽く手を上げて何かを唱えた。

次の瞬間、空が割れ巨大な隕石のような炎の塊が現れた。

「ひひひひっ。禁術というものはこのレベルでこそ威力を発揮するのですよ?」

「ネリー!魔力供給魔法はつかえる?」

「うん、大丈夫だよ。でも、どうするの?」

「時間がない。とにかく、私に魔力を分けて。」

「う、うん!命の精霊レーベン、我が声を聞け。友に暖かなる光を!」

体に流れ込んでくる魔力の質、量共に凄まじいものがあった。

「あんたって見た目では分からないけど、ほんとにすごい魔力量よね。」

ネリーの有り余る魔力が体に流れ込んできて、

力を取り戻した私は高位魔法を使う準備をする。

「ネリー、よく聞いて?私が奴の攻撃を防いでいる間に転送魔法を使って。

みんなを帝都まで逃してほしいの。」

「わかった!僕、頑張るよ。」

「土の精霊ボーデン、我は汝の祝福を求めん。

土の壁、鋼鉄の意思、我ら弱きものに神々の加護を!」

トリストンの禁術が直撃する寸前で私の魔法は完成し、

絶対防御の魔法が発動した。

ネリーが転送魔法を詠唱し終えるまで持つかは分からないけど、

すさまじい衝撃に耐えながら私は仲間のことを信じて待ち続けた。

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