2章 旧ガリア王朝 2-1.歓迎
かって、ガリア王朝と呼ばれる光の精霊リヒトの加護を受けた国が存在した。
国民の元にはある程度の年齢になるとどこからともなく光のミリーが
現れ付き従うようになる。
そのため、国民全員が光魔法を使えるという特別な国であった。
おれは以前、この国を訪れレジスタンスと呼ばれる民兵組織と行動を
共にしたことがあった。いま、おれが光魔法を得意とするのは、その時に教えを
請うた師マティアスがいたからである。
滅ぼされ、魔族が跋扈する旧ガリアでいまだレジスタンス活動を
続ける彼らの身を案じていたのもある。そんな背景もあり、第一回遊撃任務で
おれは旧ガリアを目的地に選んだ。
旧ガリア領土に到着し進軍する中で、おれは魔族が異常に多いことに気づく。
中位魔族までなので赤目の俺や通常のミリー使いであれば対応できるが、
あまりにも数が多い。光の精霊の加護がわずかに残る旧市街地に入るまでひたすら戦い続けた。
「ねぇ、いくらなんでも多すぎないかしら。朝からこれで20回目よ。」
目の前にはトカゲのような形状に漆黒の対魔力装甲を帯びた魔族がいた。
「あー、鬱陶しい。」
アリーは新調したばかりの青い鎧に傷をつけられてご立腹のようで、
その魔族に対して疾風の如く斬りかかる。一瞬で決着がついた。
「なぁ、お前強すぎないか?何を食ったらそんな強くなるんだ?」
「食べ物は関係ないわ。それより、日々の鍛錬が大切よ。身体の強化、
知識の習得、毎日毎日、真面目にやってはじめて強くなれるの。」
そういえば、毎日毎日アリーが魔導書を読んでいる姿を見ていた。
「本を読んでる時だけはかわいい女の子って感じなんだがなぁ・・・。」
おれのその言葉に顔を赤くして、なぜか慌て出す。
「そ、そんなこと言っとけば女の子にモテるとか思ってるの。あ、甘いわよ。デレ目」
「だから、デレ目ゆーなて。」
おれとアリーがいつものコミュニケーションを取るのを見守るネリーの笑顔が眩しい。
そんな仲間との楽しい時間は足元に打ち込まれた銃弾によって終わる。
「貴様ら人間のようだが、ここはわがガリアの領地。どういった用件か?
答えによってはこの場で魔弾を全身に打ち込むぞ!」
姿の見えない声の主は緊迫した様子でそうすごんできた。
「突然の訪問については謝る。俺たちには連絡手段がなかったんだ。」
そう言っておれはマントのフードをおろした。
「おれは帝国からはけ・・・・!?」
「おにーーー!おかえりなさい!!」
何だか見覚えのある少女が胸元に飛び込んできて、おれの自己紹介タイムは無事に終了した。