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ヴァルハラの指輪  作者: 吉城 桜
一章   外の「世界」で
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八節   なんでもない

 繰り返し、くりかえし。君は再び彼女に出会って。

 繰り返し、くりかえし。君は再び未来、過去、今と語る。

 街中歩く君のそばに、再びわたしは歩いてく。

横目に倒れる君をみて、助ければよかったと後悔して、未来はせて、君もきっとめった斬り。

 そんな回想をしながらフードの外に広がる風景を覗いていた。君はなんとも睦まじそうに未来と話を弾ませて、少し嫉妬をしてしまう。けれどもわたしは泥人形。君に語り掛けることもできない。だけどほんの気まぐれに君に話しかけたくなった。手を伸ばしたくなった。

*  *   *

 背中に正体不明の寒気がして。手を伸ばされてそのままくびり殺されそうな。

それがなんだか解らなくて気持ちが悪い。いや、これを恐怖というのだろうか…?

「オウカ!下がりなさい!」

気が付けば彼女を庇ってそれに向かって叫んでいた。たいそうそれは驚いたようで伸ばした手を止めていた。

「スクルド、いきなり叫んでどうしたの?彼女がどうかしたの?」

疑問符だらけのオウカは何も感じていないよう。私だけ…?

「怖がらなくてもいいよ。わたしは単になんでもない・・・・・・だけだから。」

それは視界を開けるようにフードの端に指をかけた。

*  *   *

 それはいつか読んだ、読んだ記憶がないから備わっていた知識かもしれない。けれど知っていたそれはわたしに酷似していると思った。神々に作られた兵器、人と神をつなぎとめたそれと、彼女と彼女をつなぎとめるわたし。自己など持たない彼女の人形、神々の命でしか動かない泥人形。

 やっぱり、そっくりで思わず安堵してしまう。わたしだけでなかったと、わたしは人の初めてではないのだと。

 それにわたしは敬意を表して、羨望も現して、わたしはそれからこう名乗る。名前はないけれどこう名乗る。

「エルキドゥ。神と人のつなぎ目のなんでもない土くれ人形。」

どうぞよろしくなんて彼女と未来に言ってみる。


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