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ヴァルハラの指輪  作者: 吉城 桜
一章   外の「世界」で
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三節   時/未来

時々、本当に時々。忘れた頃に眩暈めまいがする。忘れるなと、私に叫ぶように。世界が反転するように、そう、極端に言うのであれば脊髄を身体から引き剝がされるような。立っているのかさえ分からなくなる。

 その中に見える「世界」があって。

 ――炎の渦。舞う剣撃。白い装束は風を切る。

そこはすでに|ここ(街)でなく、一つの戦場。

 錦糸を束ねたような髪を流して彼女は剣を取る。それは、確かに■■■というのに相応しいと思った。

「…カ、オウカ?」

変わらず酷い眩暈に時々襲われる。私の顔を覗き込んできたのは明るい青い目・・・

「ごめん、ちょっとぼうっとしてた。」

彼女は不満げに頬を膨らませて言う。

「どこがちょっとなのか、ぼうっとなのか、説明がほしいわね。」

なるほど、よく見てみればその程度はなかった様。私はスクルドに抱きかかえられる姿勢でいた。

「あ、ええと。」

あの眩暈で倒れることはなかったのだけど、

スクルドと出かけているときになんて運が悪い。

「体調が悪いのなら私の我が侭なんて断ればいいのに。」

「いや、スクルド。君は断ったら不貞腐れるなり、拗ねるなりでまた...」

「こ、公衆の面前で!女神の恥曝しですか!オウカはバカですか!いいえ、バカなのね!そうなのね!」

ああ、地雷だった。こういうのは滅多にいうものじゃないと再確認をするハメになってしまった。

「分かった、ごめん!そんなつもりじゃなかったんだ!」

スクルドをなだめるためにも必要な言葉だ。

未だ幼さが色濃く残る顔で言う。

「本当ね?ええ、なら赦してあげるわ。」

切り替えの速い返答。

「それは、ありがとっと。」

うん、どうやらほんの一時的なものらしい。

立ち眩みもない。

 私と同じくスクルドも立ち上がる。

「今日はもう帰りましょう。」

「え?」

思わずスクルドを見つめ返す。私の胸までしかない身長の彼女からそんな重い声音が発せられると思わなかった。

「帰りましょう、あなたの体を休ませるのが優先です。」

...

「うん、分かった。」

静かに短く敬意をこめて答えを返した。



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