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仲間集めⅡ

「三年の教室かぁ~」

今思えば三年のクラスがある三階には一度も行ったことがない。部活などに入っていて先輩後輩関係がある人たち以外はたいていこんな物だと思う。

(やっぱり無駄なオーラあるよな….)

小学生でも中学生でもそうだと思うが、やはり違う学年の生徒の居る教室はなかなか入りにくい。

現に天見が横で緊張している様子を見せている。っていうか、こいついっつも緊張してんのな。

「え、えーっとB組はあそこです。」

指をさしてこちらを向いている。その指先が少し震えている。いや、そこまで緊張するものなのか。

「あー、うん、お前ここで待ってろ、俺がきいてくるよ」

流石にこのまま行かせると、すごい声の裏返った状態で菜ノ花さんとやらを読んでしましそうだ。

「い、いえ、もともと私のために部を作るのを手伝ってもらっているのです。こ、ここは、私が..」

「いやもうその気持ちだけで十分だから」

俺と会話している時点で緊張している奴に任せてはいけないしな。

「い、いえ!!」

それでも自分が行くと主張する。結構意地っ張りなところがあるようだ。

「わかったよ、いってこい」

なかなか引きそうのもなかったので、行かせることにする。


コンコン

「し、シツレイシマフ」

放課後なのにわざわざ律儀にノックしてから入る。ってか最初からぼろぼろじゃねーか。なんだその棒読みは、しかもフって、大丈夫かほんとに、っていうかこんな奴に劇なんてできるのだろうか。

(なんだろう、とてつもなく不安になってきた)

不安になっている俺なんて見えていないのだろう、ロボットのようにそのまま教室にむかって声を出している。

「あ、あの、アノバアウイさんは、い、いらっしゃいます、でうか!!!」

ええーーー!

俺の想像を遙かに超えていた。三年生も聞き取れず少し困った様子だ、

(ってかアノバアウイさんってほぼあってねーじゃねーか!)

流石に見ていられなくなった。

天見も完全に混乱している。

「すいません、このクラスの菜ノ花ゆりさんってまだいますか?」

「菜ノ花さん?えーっと今日はきてないわよ」

「あ、そっすか、すいません、失礼します。」

扉を閉める、

「居ないみたいだなー」

・・・・・・・・

返事がない、まだ固まってんのかこいつ。

「あれ?」

横を見ると天見の姿がない。

「ま、まさか」

急いで三年の教室に戻る。

扉を開けると、

「アノバアさんはアノバアさんはアノバ…」

さっと腕をつかむ。

「し、失礼しましたー。」

扉を閉める。そのまま流石に恥ずかしさがあったので中庭まで連れてくる

「アノバアノバア、ア、ア。、さん…」

まだ言っていた。流石に菜ノ花さんとやらにも失礼だぞこれは。

「おい、おい天見」

「はっ、狭山くん?」

目が覚めたようにこちらを見てくる。

こいつにとっては気を失っているような状態だったのだろうか。

「いないだってさ、菜ノ花さん」

「そ、そうでしたか..」

そうでしたかって、こいつマジで緊張しすぎで記憶飛んでるってどういうことだよ!!

などという事は声に出さないようにしておかないとな。

「私、そんなに緊張なんかしてません」

おっとまた声がでてたか。

「いや、ばりばりしてただろ」

「そ、そんなことないです」

ぷいっとすねたように首を振る。

どれだけ否定したいんだよ,,,,

「まあ、それはいいとしても今日はどうする?部員集めでもするか?」

「そ、そうですね…はい、やります!!」

やる気はいいんだけどな緊張しがちなのがなンとも惜しい。


職員室であるかわからない部室の鍵をもらうのも面倒だったので一度俺のクラスであるD組で作戦会議を行うことにした。

「おう、狭山じゃないか」

ドン!!

教室の扉を開けたら中に千林が居たので速攻で扉をまた閉める。

「狭山君?」

「いや、教室の中にUMAがいたから…」

へ?という顔をしながら天見がこちらを見てくる。

「よし、お前の教室に行こうか」

別に遭遇してもいいのだが、厄介か厄介じゃないかと言うと厄介なので、D組から離れることにする。

ドン!!

扉がものすごい勢いで開く。

「人を馬呼ばわりするなーーーー!!!!!」

・・・・・・・


「いこう、天見」

「あ、は、はい」

「ちょっと、ちょっと、」

スルーしてそのまま立ち去ろうとしたが、せんば、いや馬に肩をつかまれる。

「なんか用か?馬」

「だから馬呼ばわりするなーーー!!!」

「いや、お前がいきなり馬呼ばわりするなって叫び始めたからフリなのかなって..」

「いやいや、僕の耳を侮るなよ、お前がユマって言ったのはっきり聞こえたんだぞ!!これローマ字にしたらUMAつまり馬だろ!!僕を馬鹿にするなよ!!」

確かに耳は悪くないんだろう、俺が小声でUMAっていったのがなんとなくでも聞き取れていたんだし、ってか

「俺が言ったのはユマじゃなくてユウマな!!」

バカな千林のためにゆっくりとカタカナ読みのようにUMAと言って聞かせるってかマジ奇跡的な解釈だよな、確かに馬とよめるけどさ、

「え、えーっと」

天見がすごくおどおどしながらこちらを見ている。

「あー、わり、紹介が遅れたな、こいつは馬馬ユウマ(ばばゆうま)だ、クラスではこいつのことを親しみを込めて馬って読んでる」

「なるほど!馬さんですね!私は二年E組に天見ともうします。よろしくです。」

「うん、よろしくって馬じゃねーーー」

このまま放置してても面白そうだったが、流石にせんば、いや馬はともかく天見を巻き沿いにするのはかわいそうだ、とりあえず改めてせんば、いや馬の説明をし、E組に逃げようとしたがせんば、いや馬にがついてきそうだったのでD組でも変わらなさそうだしD組の教室を使うことにした。

「ところで、せんば、いや馬はこの時間までは何してたんだよ」

「あー、寝てたよ、うん」

「お前ほんとよく寝るよな」

「いや、そんなことより早く普通に読んでくれませんかね?」

「馬馬?」

「僕は千林だー!!!!!」

「わかった、わかった、落ち着けって」

「お2人仲がよろしいのですね!」

「いや、俺はそんなこと一度も思ったことないよ?」

「あんたマジで、縁切っていいすか」

などといういつも通りのやり取りをしながらふといいことを思いついた。

「なあ、千林、お前部活やってなかったよな」

「そーだけど、だから何?」

「この天見がさ、声劇部ってのを復活させたいらしいんだ、その人数集めの最中なんだけど、お前入れてもあと2人必要なんだよな」

「いや、僕を入れる前提で話を進めないでもらえます?」

「え?」

ここで何故か天見が不思議そうにこちらを見て来る

「どーした?」

「いえ、菜ノ花さんがそこに入るのであと1人でいいかと……」

「え?あとひとり誰か入る人決まってんの?」

「いえ、私と、菜ノ花さんと、狭山君と、千林さんで4人?ですよね?」

「あれ?行ってなかったか?俺は入るつもりないぞ」

「え?……」

物凄く天見が慌てている。 こいつの中では俺ももう部活の一員だったのかな?なら少し申し訳ない感じもした。でもなぁ……

「興味無いからな〜声劇には」

(あ、)

でたよ、安定の声に出てるパターンだ…… なんで俺はこう思ったことをすぐ言葉に出してしまうのだろうか、流石に自分から部を再建するぞと言っておきながら興味無いは酷いというレベルじゃない、天見もやはり先程までのおどおどしていた感じの3倍には焦っている様子が見えてきた。

流石にまずかったな……

「い、今思えばそうですよね…! もともと声劇部に入りたかったのは私ですし、」

すごく作り笑いしているのがこちらにも伝わってきて少しグサッときてしまった……。

それを見て少し慌てながら天見がフォローを入れてこようとする。

「で、でも、こうして部活を立て直すきっかけをくれた狭山君には感謝しています!!」

「そう言ってくれると助かるんだけどな。」

「はい、狭山さんが入らないとしても、もう部員が二人増えましたから!」

「だな!俺も五人揃うまでは全力で、手助けするし頑張ろうぜ」

「はい!!」

二人でガッツポーズのような姿勢でやる気を入れる。

「あの、ちょっといいすか?」

横から、せんば、いや馬が何か言いたげにしている。

「なんだ?」

「その二人に僕が入っているのは気のせいですかね?」

「気のせいじゃないですよ?わ、私は会ったばかりなのに部活に入ることをすぐ了承してくれた千林さんに感謝しています!!」

「ふっ」

あぶないあぶない、天見があまりにも目をきらきら輝かせて言う物だから思わず笑ってしまいそうだった。

一方千林も俺やサッカー部、関目相手ならともかく、合ったばかりの女の子にこんなに目を輝かされて感謝され入らないとも言いづらくこちらに助けを求めるような視線を送ってくる。

ビジッ!!

天見が千林の方を見ていて俺の方を向いていなかったから俺は満面の笑みで親指を立て、後は任せたぜ!という雰囲気をおもいっきり漂わせた。

いつもなら「この薄情者が!!」などと言ってきそうな展開だな、流石に天見に思いっきり見詰められている状況では言わないだろうけどな。

「この薄情者が!!」

あー、そうだ、こいつバカだった。

「え、は、薄情?」

ほら見ろ天見がおどおどし始めたじゃないか。

天見があまりにもどうしたらいいかわからない表情をしていたので手助けすることにした。



「で、改めて入る気はないか?」

数分後もう一度一から説明して部活の誘いをしてみる。

「ん~声劇か、申し訳ないけどあまりやりたいとも思わないかな」

「良かったな天見、入るってよ」

「いや、あんたちゃんときいてました!?」

「っつってもさ、お前寮で暮らしていて部活もしていなかった退屈だろ?いい時間潰しにもなると思うぜ」

「ふっ…」

なぜか千林にドヤ顔をされた。

「僕はこう見えても結構忙しいんだぞ?だから遠慮するよ」

なんでこいつイケメンオーラ出してますみたいなしゃべり方して言ってくるんだよ。

「そっか、仕方ないな」

とりあえず入る気はないんだろう、まあこいつもこいつなりにすることがあるんだろうし。

「うん、悪いな狭山」

謎にまだイケメンオーラを出して返事をしてくる。くっそ、その顔はまぶしすぎて直視できないレベルだ

「ああ、気にすんな、でも一ついいか?」

「なんだ?」

あまりに直視できないレベルのイケメンオーラだったのでここは本人に言ってやることにする。

「お前がそんなイケメン感だしても、きもいだけだぞ」

「ほっとけ!!」

そう、直視できないレベルできもかった。なにより千林が俺イケてるぜ!って感じで喋りかけてくるのに声に出して笑いそうになっていた。


「さてと、」

千林といると話も進まないだろうし教室を出ることにした。

「あ、」

「どした?」

「6時を回りました。」

「え?」

その言葉を聞き自分の携帯で時間を確認すると、6時5分と表示されていた。この学校は部活動を指定ないものは6時には完全下校という制度がある。つまり今日はもう部活を続けれない。

「帰るか」

「そうですね」

結局部を再建しようと行動を始めた俺たちの1日目は満足に活動もできずに終わった。


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