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仲間集めⅠ


「失礼しました。」

職員室を出て天見が扉を閉めながらすこししょんぼりとした表情をしている。

「ダメでしたね..」

当然の結果だったのかもしれないがやはり落ち込んでしまう。

「人数あつめてこいかぁ」

ぶつぶつとつぶやきながら俺は天見と二人で登校した2時間ほど前のことを思い出していた。



-2時間前

「お前が声劇部を作ればいいんだ!」

「え、わ、私がですか?」

あまりに突然のことだったのかかなり驚いている様子を見せている。

「ああ、元々部はあったんだ、訳のわからない部活を申請して許可が出ないとかはともかく三月まではあったんだ、だから職員室に直々に頼みに行けばいけるはずだ。」

「で、でも人数が..」

「一人じゃ流石にきついだろうし俺も職員室について行ってやる、なんなら説得だって俺がしてやってもいい、行動しないことには何も始まらない、そうだろ?」

「はい、」

とうなずきながらも少し考えているようにも見える。

「そうですね、考える前に行動しないと何も始まりませんもんね!行きます!」

俺が考えていたよりも前向きな意見が帰ってきて少し驚いた。

「へぇ、結構前向きなところあるんだな」

「いえ、なんというか狭山君の今の言葉が父のいつも言っていた言葉に似てて」

少し懐かしそうで、どこか悲しそうな表情で天見は語り始めた

「行動しないと何も始まらない、考えることはいつだってできる。でも行動を起こすことは今しかできないんだ-!って」

「そのお父さんの事天見は好きなんだな」

「え、」

なぜか少し驚いたような顔をする、流石に、ここまで語っておいて嫌いですなんて言うやつはいないと思うが。

「そう、ですね、好きです、昔から、今だって..」

誰でもわかるような作り笑いをし、内心は辛そうで、とてもさみしいような感じがなぜか手に取るようにわかった、俺がそのようなものを見抜く能力が高いとかそんなわけじゃなくこのときの天見はなぜかとてもわかりやすかった、辛そうな感じはしているのに何も嘘はついていないというようにも感じる、身内で何か不幸な事があったのかもしれない、とても気になったが天見に深くきくのはやめた方がいいような気がしてこれ以上何も言わないようにした。


「まあ、とにかくだ!」

微妙に気まずくなりそうだったので話を戻すことにした。

「昼休みに職員室前に集合!うまくいくかわからないけど、いや、俺がなんとしても部を認めさせてやる。まかせとけ!!」

「はい、頑張りましょう!!」

天見も元気に返事を返した。


と、自信満々に言ったところまでは良かったが、

「却下」

即答だった。

しかも、元顧問の先生が出張で夕方に帰ってくるらしく、伝言を受け取るといった先生がまた生徒指導の和田という市内でも厳しいと有名な先生であった。

できる限り頑張ってはみたものの対して話も聞いてもらえず終わった。

「夕方には顧問だった小西先生が帰ってくるから聞きたいことがあるなら続きは小西先生に聞いてくれ」

いや伝言受けるって言ったのあんただろ!


という突っ込みは言葉には出さずに職員室を出ようとする。

「まあ、部活を始めようとするのはいいことだがやはり人数を集めてから来ないと許可はおりんだろうな。」

助言を聞き職員室をでた。

そして今に至る。


「部員って何人必要なんだっけ?」

「えーっと、5人からと書いてあります。」

天見が生徒手帳の部活についての項目を読みあさっている。勢いでやるといったと思っていたがこいつも真剣なんだとおもう。

「5人かぁ、なかなかきついな..」

今更だけど、入りたいやつがいなかったから廃部になったわけで、そのじょうたいから5人も見つけるなんてなかなか至難の業だ。

「とりあえず放課後だ、顧問だった小西先生にいろいろ話を聞こう、もしかしたらまだこの学校に4人部員が残ってないとも限らないし。」

そう、5人が部活活動条件なら運が良ければ4人いるかもしれないんだ、まだなんとかなる可能性は残っている。

「はい、わかりました、でわまた放課後にここで、お会いしましょう。」

「おう。」

軽く挨拶を済まして自分たちの教室に戻っていく。

「おーーっす狭山」

「午前中ずっと爆睡していて今日まだ会話をしていなかった千林が挨拶をしながらこっちに近寄ってきた。さあどうする。」

1.殴る

2.蹴る

3.両方

「これだ!!」

狭山は3を選択した。

近寄ってくる千林の腹を殴りさらに同じ場所に蹴りを一発食らわせた。

「うおぉぉぉぉぉぉ」

何かをスロー再生しているような声を出し千林は吹き飛んでいった。


「という、茶番はここまでにしてと、」

「親友を殴ったり蹴ったりして茶番という一言で終わらせないでもらえます?」

生きのいい突っ込みが帰ってくる。

「え?親友?誰のことだ?」

「あんた無茶苦茶白状っすね!!」

千林との恒例行事を終わらせて席に着く。

「あんたらも本当に毎回毎回騒がしいわね」

「いいだろ別に」

関目がいつものように喋りかけてくる。

「お前もいつも話しかけてくるよな」

「席が隣なんだからいいでしょ別に、」

何でこいつ怒っているんだろう、いつものことだけど少しのことですぐ突っかかってくる別に嫌なわけではない中学からの数少ない知り合いだ、そう、ただの知り合い、

(何で自分に言い聞かせるようになっているんだろうな)

関目との付き合いは確かに長いが、こいつには、あまり自分のことを知ってほしくないと思う自分がいる。たぶんそれはこいつは俺のことをこんな会話をしていてもいいやつだと思ってくれているのが伝わってくる、でも俺はこいつが思っているほど、いいやつじゃない。

「お前も大概騒がしいけどな」

「うっさいわね!」

ゴン!!

すごい音が響く、

「いってえー」

俺がいろいろ考えているうちに、千林と関目のいつものような喧嘩をし始めた、俺たち三人は端から見たら仲がいいんだと思う、でもどこかギクシャクしている部分もあった、俺たちもなんとなくはわかってはいたが、誰も何も言わなかった、その言葉を誰かが言った瞬間にこの関係が崩れそうな気がしていたから。

「いつかは変わるのだろうか、」

「「は?」」

つい言葉に出してしまったせいで二人に変な目で見られた、ごまかすように窓を見る、そういつか、本当の親友ってやつになれるといいな、頭の中でそんなイメージをしているとなぜだか千林、関目と一緒にいる天見の顔も浮かんできた。

何でこんな見たこともない絵面が浮かんでくるんだろうか、少し不思議に思う。

キンコーン….

チャイムが鳴った、考えるのもやめて俺は寝ることにした…..


気がつけば放課後だった。

ほとんどの生徒が帰った中千林はまたもや一人爆睡していた、

(今日はこれから天見と職員室に行くしほっとくか)

千林を当然のように放置して廊下に出る。

途中天見のクラスをのぞいてみたが姿がなくもう職員室に向かっているのだろう。

「やる気出してるんだな」

自分だけが空回りしていないことを実感できて少しだがほっとする。


(困ったときがあったら俺を呼べよ)

昨日の夜の自分の言葉をふと思い出していた。

今思えば人のために何かをするっていつぶりだっけ?

何がこんなに俺を変えてしまったのだろう…..

ふっ

昨日からずっと似たようなこと考えてるなと思い少し苦笑していた。

今更考えなくても原因はわかっていた。でもあまり思い出したくないことだからそっと心の中に封じ込めておくことにする。



「狭山君」

職員室の入り口の前で少し緊張するように俺をまっていた。

「昼は狭山君が先生と話をしてくれたので今回は私が小西先生に部活についてききます。部活を作ってからも全部狭山君に頼むなんでできませんので、少しずつ自分でも行動しようと決めました。」

思ってる以上にやるときはやるんだなと素直に思った。

「おう、りょーかい、けど一応俺も話を聞いておきたいしついて行くぞ」

「わかりました。で、では、よ、呼んでみます」

すごく緊張してるのが手に取るようにわかった。あんまり表立った行動は慣れてないノだろう。

「し、しつれいします。あ、あの、小西先生今いらっしゃるでしょうか?」

そういえばどんな先生なのだろうこの学校は進学校で生徒が多い分先生も大勢居る、担当を持たない先生は、あまり覚える機会がない。

「あら、天見さん」

こちらに近づいてきて声をかけているのはすごくきれいな女の先生だった。

ってか天見は面識あったのか。

そしてここからは天見が一人で頑張るとの事なので後ろで話を聞きながら見守ることにする。

部活動をするに当たっての注意事項などをいろいろと聞いている。思っていた以上にうまくやれていそうな感じだった。


「そう、それと声劇部にはまだ三年生の部員が一人残っているわよ」

一番知りたかった情報だ、声劇をしたいなんて言うやつは悪いがあまり居そうにないし、

一人でも先に見つかっているだけで少し気持ちが楽になる。

「ほ、本当ですか!?」

天見も驚きと同時にすごくうれしそうな顔になっていた。

「お名前はなんて言うのでしょうか。」

「三年B組の菜ノ花ゆりさんよ」

お花畑が似合いそうな名前だーとか思ったことを口に出してしまいそうになる。

「ふふっ、本人も良くそんなことを言っていたわ」

おっと声に出てたようだ。

とにもかくにもコレで希望が見えてきたのかもしれないな。

この後入部するに当たっての手続きの話などを聞き職員室をでた。


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