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出会いの日

午後の授業が終わり振り向くと千林はまだ寝ていた。

「おい、千林いいかげんおきろよ」

「んー?」

一声かけるだけで起きるのになぜ授業中ずっと寝ていられた!!

などという疑問は放置しといて。

「また帰りお前のとこよってっていいか?」

「・・・うんいいよ」

まだ寝ぼけているのか反応が遅れている。

玄関を出て門へ向かう。グランドでは野球部が練習している。

「こんな暑いのによくやるよな」

「・・・うんそうだね」

「おまえ、まだ寝ぼけてんのか!?」

「・・・うんそうだね」

だめだこりゃ

せっかく出し少し悪ふざけしてみるかとしょうもないことを思いつく。

「お前の顔面にボール投げ付けるぞ」

「・・・うんそうだね」

「ほんとにいいのか?全力で投げるぞ」

「・・・うんそうだね」

「後で文句言うなよ」

「・・・うんそうだね」

よし!これで本人にも許可もらえたし。

「おーい野球部!」

と野球部の方によっていく

「ん?何だ狭山」

「ボール一つ貸してくんね?すぐ返すからさ」

「ま、いいかすぐ返せよ」

「おう!サンキュー」

少し千林と距離をとる、振りかぶり思いっきり力を込めて千林の顔めがけて投げる。

「よけろ!千林!!」

投げた後に千林に声をかける。

「・・・っは!」

ボールが顔面に当たる寸前に千林はボールをよけた。

後ろ壁にあたり狭山の足下まで転がってくる

「ありがと!引き続き練習頑張れ野球部諸君!!」

呆然としている野球部員たちに適当に声をかけながらボールを返し千林がいるところへと戻っていった。

「あんたなにしてんだよ!!」

「いやお前が当てていいっていってたんだぞ」

「いってねーよ」

「まあ、当たらなかったんだしいいじゃねーか、そろそろいこーぜ」

「どこに?」

まだ少し不満げな顔をしていた。

「おまえんちだよ、本当寝ぼけてたんだなお前」

など喋りながら千林の家に向かう。

千林は寮生だ、学校からも近く俺もよくここによってから家に帰っている。

「めしー」

「ねーよ」

「腹減ってんだってお前の代わりに食べるから、な?」

「な?じゃねーよっちだって腹減ってんだ」

「まあまあ」

などと会話しながら冷蔵庫を開け魚肉ソーセージを手に取る。

「そういえば今日の関目はいつも以上にあわあわしてたけどなんかあったの?」

「いや、特にたいしたことは」

「そう?ならいいんだけど、結構古い時からの顔見知りなんだからあんまむげには扱うなよな」

「千林・・」

「千林はバカだけど結構周りのことを考えてたりする時があるまあ、バカだけど」

「あの、こえにでてるんすけど、あんたどんだけ僕のことバカだとおもってんすか?」

「まあ全人類の中でも上位で戦えるぐらいには、よかったなお前は人類の中でもバカの中のバカつまりただのバカだ」

「ぜ、全人類だと….ふっ、そんな照れるな」

正真正銘のバカだなこいつ

というのは声に出さずにぐだぐだと過ごす。まあいつものことだ。

「じゃあそろそろ帰るわ」

「おう、また明日」

などと軽く挨拶をして寮を出る。

ぶらぶらと歩き少し喉が渇いていたからコンビニに寄ることにした。

コンビニに向けて歩いているとコンビニから外に出る人がいてたまたま目があった。

「あ、」

今日何度目だろうか、今日初めて会ったばかりなのにまた天見と遭遇した。これで朝昼晩全制覇だぞとか考えながら軽く挨拶する。

「よう、天見よく合うな」

「狭山君、こんばんはです」

せっかく合ったんだし少し喋りませんかと言われコンビニで飲み物を買った後二人で近くの公園に向かった。二人分のブランコがあったのでそこに腰掛ける。

「すいません夜中なのに引き留めてしまって」

「いいよ、帰ってもすることなかったし」

天見はそこで狭山が制服を着ていることに気づいたらしい。

「学校帰りにどこか寄り道してたんですか?」

「まあ、いつもつるんでるやつのところに行って適当に喋ってたって感じかな。」

「そんな中のいいお友達がいてうらやましいです。」

ふと今日で天見に合うのも三回目だが廊下で会ったときも昼休みの時も、一人でいたことを思い出す。あんないっぱい提出物があるのなら誰か手伝ってくれてもいいはずだし、昼だって友達と食べればいいはずなのに何で一人で

「あんまり友達とかいないのか?」

聞いた後にすごく失礼な質問だと気づく。

「はい」

少しつらそうな顔をする。

「ごめん、こんな何も考えずに質問して」

いいですよといいながら怒ってないと示すためか少し無理しながらも少し笑顔を作っている。

「私昔から体が弱くて普段から学校をよく休んでたんです。一年生の頃まではまだ月に二回休むぐらいでよかったんですが二年生になってからもう少し頻繁に休むようになったんです、そして運悪く始業式から一週間休んでしまい….」

途中まで聞いただけでもだいたい察してしまう。新学期のはじめ一週間休んでしまったらほとんどが友達の輪ができているなかなか簡単にその輪に入るなんてできない。

「部活とかは?」

たぶんこんな悩みを抱えているんだし入ってないんだろうと思いつつも聞いてみる

「入ってないです、入っても体調崩して休みがちになったら部員の方に申し訳ないですし」

なんでだろう天見と初めて会ったときもだがなぜが助けてあげたいと思ってしまう。この気持ちは何なんだろう。

「もうすこしさ、積極的に生きていいと思うぜ」

と考えているうちに口が先に動いていた。

先ほどまで下を向いて喋っていた天見が顔を上げる

「部活なんてサボりで休んだんじゃなく体調不良で休んでるやつに本気で文句言うやつなんていないしさ、今日だってそうだ誰だっていい教室の少しでも喋ったことのあるやつにでも課題運ぶの手伝ってもらったっらよかったんだ」

「で、でもそんな友達でもないのに」

「そうして友達ができてくんだよ」

誰に対して言ってるんだろうなと心の中でついつい思ってしまう。俺だって友達と呼べるようなやつがいっぱいいるわけじゃないのに、たぶんこれは天見に対してじゃなく自分に対して言っているんだろう。今日合ったばかりなのにすごく踏み込んでしまった感がある。

「どうしても無理ならさ」

どうせだしもっと踏み込んでやろうと思う。

「これから困ったときがあったら俺を呼べよ」

あ、これは流石に踏み込み過ぎたかなもう少し押さえないと

「今日合ったばかりだけどさ、もうそのくらいお前が俺に頼んで迷惑なんて思わねーぜ、だからさ助けてほしいときは何でも言ってこい」

そうそうして友達ができていくんだと思うから俺はそうする、天見のためじゃない自分がそうしたいからそうするだけずいぶんなれなれしかったかもしれないがこれでいいと思った。

「はい」

天見は少し目が赤くなっていた今まで友達というものが全然できたことがなかったのだろうさっきの言葉が心に響いたのかすごく自然な笑顔を作る。

「なら、これからはよろしくお願いします狭山君」

「おう、こちらこそよろしくな天見」

こうして俺たちが初めて出会った長いようで短い一日は終わった。


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