出会い
遅刻……それはいつものことだった。そのまま遅れて教室に入り、ぼーっと授業を受け放課後には大して多くもない友達とだべりながら帰る日々、こんなとてもありきたりで特に面白くもない人生を俺は過ごしていた。彼女と出会うまでは。
どの学校でも当然のことなのだろうが学校に遅れてきたら職員室に行かなければならない。下駄箱で上靴に履き替えそのまま職員室に向かおうとすると目の前をクラス全員の提出ノートをもって歩く女の子が今にもノートを落としそうにふらふらな状態でそこを通り過ぎていった。その子をみてどこかで見たことがあるような気がするが思い出せないでいた。
ガタッ
「あっ」
その声と同時に女の子の持っていたたくさんのノートは地面に散らばっていた。
それを俺は見ていたが特に知り合いというわけでもなく見たことあるのも気のせいだと思いそのままその子を無視して歩いて行った。
少し歩くと
ガタッ
「ああっ」
さっきとほぼ同じような音と彼女の声で振り返るとさっきと全く同じことになっていた。
流石に見ていられなかったのでその子の元へと歩いて行きノートを集めるのを手伝った。
「ほら」
「え、あ、ありがとうございます」
まさか助けてくれると思ってなかったのか彼女は少し驚いている表情だった。
「またノートが散らばるのを見るのもいやだし半分持ってやるよ」
「そんな、見知らぬ人にそこまでしてもらうなんて申し訳ないです。」
「いいよ、これ職員室に持っていくんだろちょうど俺も用があったし」
「で、でも..」
あくまで人に迷惑をかけたくないのか申し訳なさそうな顔をする。
「さっさとこないとおいてくぞー」
流石にしびれを切らして勝手に半分もって職員室に向かった。
「あ、まってくださーい」
それを追う形で彼女も職員室へと向かった。
「ありがとうございます」
用事が終わり職員室をでたあとすぐにお礼をされる。
「まあついでだしな」
「隣のクラスの狭山君ですよね」
「俺のこと知ってるの?」
まさか一方的に自分が知られているなんて思いもしなかったのか少し戸惑ってしまう。
「はい、あなたは結構有名人ですよ」
「ま、まじか、」
何で有名人になっているかと考えてみてもいい噂が立っているようにはとても思えない。
「でも、噂とは、全然違っていい人だったんですね」
ニコッとうれしそうに笑いながら言っていた。
その笑顔があまりにも無邪気な笑顔で少しグッときてしまった。あれ?でもさっきの言い方からしてやっぱり俺悪い噂流れてるんだ……。
すこし落ち込みそうになったが、いい人と言ってくれた人にたいして落ち込んだ顔をするのも失礼だし持ち直さないと
「そんで、君の名前は?」
自分の名前は知られているんだし改めて名乗るのも変だし彼女の名前を一方的に訪ねてみる。
「私は2-E組の天見といいます」
「天見ね、、これも何かの縁ということでこれからもよろしくな」
「はい!」
天見はまたさっきのように無邪気な笑顔を作っていた。
教室につき一人の男が話しかけてきた
「やあ、狭山また偉い重役出勤なことで」
「教室に入るなりなれなれしく話しかけてくるこの男の名は千林いつもなれなれしく俺に話しかけてくる正直めんどくさい」
「いや誰に向かって話してるのさ」
「読者だよ」
「は?」
……
そしてしばしの沈黙
「ってことでおはよう千林」
「え?何なんだったんだよ今の、にしても俺の評価低すぎだろ」
などという茶番(ただの暇つぶし)をしながら休み時間を過ごす。
「なあ、狭山聞いてくれよ」
「いやだ」
「あんた冷たすぎませんか!?」
「冗談だよ、で、何だ?」
「今日の朝たまたまサッカー部の奴らをみかけたからさ、いっつもぎゃーぎゃーうるさくていらいらしてたからスライディングをかましてやったのさ!」
ものすごく誇らしげにこのことを語る
「いや、落ちが見え見えなんだが」
「そうそれで今もサッカー部の連中に追われてるんだ頼むよ狭山かくまってくれ」
「めんどくさい」
「めちゃくちゃ白状っすね!?」
などという内容のない会話をしていると
ガタン
ものすごい勢いで扉が開く音がする。
「千林のやろうは今ここにいるかー?」
クラス全員の視線が千林へと向かう
「頼む狭山おまえだけが頼りだ」
「ったく、しゃーねーな」
「狭山・・」
あー助かったという顔をする千林
「おーいサッカー部、千林はここにいるぞ」
「お、毎回悪いな狭山」
「いーよこの時だけはサッカー部の見方だぜ俺は」
「くっそー俺をだましやがったな~」
「毎度だまされるおまえが悪い」
「二度とおまえを頼ったりしねーぞ!」
などと叫びつつサッカー部に連れて行かれる。
そこでチャイムがなった
授業が始まる。
といってもまともに授業を受ける気がない俺からしたら寝たり、ぼーっとするだけだ。
「今日の休み時間もえらく賑やかだったわね」
「賑やかだったのは千林とサッカー部の連中だ」
「端から見たらあんたも賑やかに騒いでた一員よ」
授業中にもかかわらず声のトーンを変えずにそのまま話しかけてくる女の子の名前は関目栞、割と長いつきあいでそこまで毎日喋るほどの中ではなかったはずだが今年席が横になってからは結構喋るようになった。
「そーいえばさっきの休み時間あんまり知らない女の子と歩いていたけどあんたそんな友達いっぱいいるような人だっけ?」
「あれは、さっき知り合ったばっかだよってかなんで知ってるんだよ」
「べ、別にたまたま靴箱の付近をあるいててあんた見つけたら知らない女の子と歩いてたから気になって付けてたわけじゃないわよ」
「うわ...」
これ絶対二次元に行ったらツンデレキャラで通るだろこいつ、実際金髪でちゃんと容姿もツンデレ感ででるし。まあ今のこいつにデレはないと思うけど。
「うわってなによいいじゃないたまたま見かけた知り合いが知らない人と喋ってたら気になって後追っちゃうのなんて普通のことじゃない」
「いや、ないと思うぞ」
「そ、そんなこと…あ」
その饒舌な喋りが止まり何か慌てたような顔をしている。
周りを見渡してみるとみんなの目線が明らかにといっていいほどに俺たち二人に向けられていた。
「えーっとそこの二人修羅場になるのはいいがそーいうのは場所をえらべよ~」
という先生の軽い言葉で周囲が少しクスクス笑う程度でこの場は収まった。
再び休み時間になると。
「さっきはよくも裏切ってくれたな」
「いつものことじゃねーか」
「毎回裏切られてるこっちのみにもなれよーーーーー」
授業時間ずっとサッカー部に拘束されていてやっと解放されへとへとになって千林は戻ってきた。
「だいだいおまえがサッカー部にスライディングかますのが悪いんだろ」
「だってさー、あいつらいっつも廊下広がって歩いたりギャーギャー騒いでてみてていらいらするんだよね」
割とまともな意見だった..
「にしてもほどほどにしとけよあいつらなかなかあれてるやつだから何されるかわかったもんじゃねーぞ」
「まあ、はたから見たら僕たち二人も十分あれてるけどね」
「おまえと一緒にするな」
「ほんとさっきからなかなかひどいっすね!?」
などと喋っていると
「狭山さっきの授業でよく恥をかかせてくれたわね」
俺と会話した後授業全部を睡眠に使っていた関目が目覚めるなりこちらに文句を言ってくる。
「あーあまたいつもの痴話喧嘩かよくもまあ懲りずに」
「いっつもサッカー部に追いかけられてるあんたに言われたくないわ」
「あれは、あいつらが一方的に悪くて僕は無実だ」
「いや、普通にいつもおまえから仕掛けてるだろ」
「って、そんなことはどうでもいいのよ」
「毎回毎回授業中にあんたに恥をかかされるこっちの身にもなってみなさいよ」
「それもほとんど関目が悪いんじゃないの?いつものことだけど」
「千林は黙ってなさい」
と言いながら授業で使っていた辞書の角を千林にぶつける
あー相当痛いぞ、あれ.. などと考えるも声には出さず見守っていた
そしてまたその鈍い音がわりと教室全体に聞こえるぐらい大きく周囲の目がこちらへと向く
「ほらみろ、今回だって僕を殴ったから目線がこっちに集まってるじゃんか」
「んぐぐ・・」
と声にもなってないような音を発し
「と、とにかくこのかりはきっちり返してもらうからね」
といい勢いよく教室をでる。
キーンコーンカーンコーン
・・・・・・・・・
勢いよく出て行った関目は顔を真っ赤にしながら席に着いた。
そしてその授業は特に何もなく終わり。
昼休み
「千林、食堂行くけどおまえどうする」
「・・・・・・・」
一応出していた教科書を机にしまいながらで千林の方をみてなかったせいで独り言見たくなる
「おい、千林」
と振り向くと千林は授業が終わったにもかかわらず爆睡していた。
「ったく…」
と、ため息をつきながら一人で廊下に出る。
「ここの学校の食堂ってぼっちに厳しいんだよな」
学校の食堂の席は四人席、三人席、などしかなくいわゆるテーブル席という一人席が存在しない。さらには人が多いためなかなか三人席などを一人で占領するなどできない。
「仕方ないしパンでも買って中庭行くか」
俺と千林は割と暇になると中庭にいることが多いが、単純に人が少なく静かで落ち着くからだ。
「あ、狭山君だ」
今日初めて聞いた声だ後ろから聞こえてくる。
「えっと、天見で名前合ってるよな? 悪い、名前覚えるの苦手でさ」
「はい、合ってます」
「狭山君はこんなところで何してるんですか?」
「まあ、一人で食堂行く気分にもならないしな。」
「うちの学校の食堂いろいろきびしいですもんね」
少し苦笑いをしていることから察するに食堂に対する意見は俺と同じなんだと思う。
「ここいいですよね、昼休みはよく来るんです、静かで鳥の鳴き声や風の音がすーっと聞こえてくる感じが好きで」
だよなーと思いながら少し疑問に思う
「ちょっとまて」
「何ですか?」
「おまえ昼休みよくここに来るのか?」
「はい!お昼を済ませるのはほとんどここです」
先ほど行ったように俺と千林もここによく来るしかも昼休みだ、なんで朝合ったとき気づかなかったんだろうと疑問に思うがすぐ解決できた。
こいつ影薄そうだもんな。
などど軽く喋りながら二人で中庭に設置されている椅子にすわり俺はパンを食べ始める、天見は弁当箱を取り出す。
ってか何で一緒に食べてるんだろうか。
などと疑問に思いながら彼女の弁当箱の中身を少し見てみると思わず咳き込んでしまった。
「だ、大丈夫ですか!?」
天見はおどおどと慌て自分が何かしたのかなと少し焦っている。
「だ、大丈夫だけど、その弁当箱の中身…」
「はい、たこ焼きです!!」
満面の笑みで答える。
「え?弁当箱の中身がたこ焼きってどうなの?」
「なにか問題があるんですか?」
天見は本当に何が問題あるんだろうかという顔をしたこ焼きを口の中へ運ぶ。
その満足そうな顔を見たらまあ、いいのかなと思えてしまいそこからは何も言わなかった。
そこからは特に喋ることなく時間が過ぎていく。
キーンコーンカーンコーン
予鈴のチャイムが中庭に響き渡る。
「じゃあ私はそろそろ教室にもどります」
「おう、じゃあな!」
・・・・・・
別れの挨拶をしたはずが天見は不思議そうにこちらを見ている
「どうしたんだ?」
「狭山君は戻らないんですか?」
結構普通な疑問だった
「んーもう少ししたら戻るよ」
「予鈴から授業までって5分しかないんですよ?」
「まあそうだな」
「ここから教室までって割と距離ありますけどゆっくりしていいんですか?」
「まあ、最悪遅刻してもいいしな」
・・・・・・・
無言でこちらを見つめてくる
「どうしたんだ?」
「いえ、もしかしたら昼休み本当は一人でいたかったけど私が声をかけたからしょうがなく同席してくれたのかなと」
あ、なるほど
ぼそっと俺はつぶやきながら彼女が何を言いたいのか理解する。
要するに自分のせいで俺が昼休み自由にできなかったから今からその分を取り戻そうとしてると思われてるようだ。
・・・・・・
単に授業がめんどくさい何でいえないしな。
変な気を使わせるのも申し訳ないと思い。席を立つ。
「じゃあ俺も教室戻るとするわ。」
二人で軽く会話しながら教室へ向かう
「じゃあ改めてまたな」
「はい!」
といいお互いの教室に入っていく。
キーンコーンカーンコーン
そのタイミングで本鈴がなる。
「あんたが昼明けの授業ではじめからいるなんて珍しいわね」
教室に入るなり関目に声をかけられる。
「まあ、いろいろあってな」
特に長く会話する気にもならず自分の席に着く。
ちなみに後ろの席を見ると千林はまだ寝ていた。