表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/157

20、八つの秘宝 4



 帰りのことは考えないとして、とりあえず今は八つ足から逃れられた喜びと共に、張り詰めていた緊張の糸が切れて疲労感が、どっと押し寄せてきた。



 …とは言っても、やはり帰りのことが気になる。どうすりゃイイのだろうか?考えただけで、かなり頭が痛い。



「何だヨ、ここは?」


 一息つき、前を見遣る。床には飛び越えるのが不可能な幅の底知れぬ溝が口を開けている。


 その向こう、距離にして、ここから二十メートルほどか。『大魔王』とデカデカと書かれた板が立っている。ちょうど立て看板のようだ。


 手近な所を見ると、かごには投げる用の球が用意してある。大きさが御手玉に似ている。


「『大魔王を倒す』は、もしかして、ホンマに『倒す』んか??……しょーもな~!!」



 くだらない。あまりにもくだらない。ハラが立つのを通り越して、イイ加減なさけなくなってきた。



「よし、投げるのならオレに任せるんだ。これでも、魚をくわえて逃げようとしたドラ猫に一発で当てたくらいの命中率なんだぜ?」


 この際、ドラ猫は関係ないだろ。



 ボンは球をにぎりしめた。そして、自信をみなぎらせて『大魔王』の直線上に立った。大きく振りかぶって……



 投げた。



「当たった~!」


 言うだけのことあって、見事に一発で命中だ。『大魔王』が倒れると同時に、何かが頭上から落ちてきた。ちょうどボンのモジャモジャのクセ毛に刺さった。


 よく見りゃ赤いリボンのついた金の鍵だ。


「うはははッ!!毛ぇに鍵、か、鍵が刺さっとる!あはははッ!」

 アルが床に転げて笑っている。大げさだな。


 ボンは金の鍵を自分の髪から取った。


「やったー、金の鍵じゃん!でも、鍵は手に入れたけど、肝心の財宝はどこだろ?」


 ボンが辺りを見回す。アルも一緒になって探す。



 …こいつら、鍵より財宝目当てだったのか?まったく、あきれる。財宝より、帰れるということ自体が、かけがえのない財宝だと思わないのだろうか?


 よく見ると、右のほうにそれらしき豪華な扉があった。


「財宝は、こっちの部屋かナ?」

 ボンとアルが先に立って扉を開けた。こういう場合だけは自発的だな。



 それらしき部屋へ入ると、部屋の一番奥に偉そうに鎮座している宝箱があった。大きさは棺桶くらいか。


「大きい宝箱やなぁ!きっと、持ちきれんぐらいの財宝がギッシリ詰まってんねんで」

 アルが目を輝かせて言った。



 鍵はかかっていないらしく、ボンが簡単に開けた。


「何やこれ…?」



 アルがそういう言葉を発するだけの理由があった。宝箱の中には金銀財宝はなく、一枚の紙片が入っているだけだったからだ。



 誰も手を出そうとはしない。仕方なく俺がその紙片を手に取る。




 白い紙片の中央にポツンと、こういうふうに記されていた。











『はい、ご苦労さん。』









《おわり》


《第3話へ、つづく》

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ