17、八つの秘宝 1
《八つの秘宝》
八つの秘宝
すべて集めし者
命運の天秤
釣り合いし砌
常闇の口
いざ開かれん
八つの戒め
八つの呪い
解き放ちし術
無に無と悟れ
さらば
汝が道
切り拓かれん
……………………
甚大なるムダな苦労を強いられ、やっと八つの鍵を手に入れた俺たちは、地図の五芒星の中心に着いた。
だだっ広い草原の真ん中、地面に張りついた異様な扉があった。それを開くと、地下へと降りる石造りの階段が現れた。
灯りを手に下ってゆくと、その先は小さな部屋へと通じていた。
「わっ、変なモンあるわ」
狭い部屋の真ん中には、台座に乗った天秤だけがあった。
天秤の吊り下げられた皿の片方には、片手に乗るほどの大きさの透明な石が載っている。
だが、片方にしか物が載っていないせいで不釣り合いだ。軸は傾いてほとんど縦に向いている。
「何やコレ。キレイな石やなぁ。これも水晶やろか?」
アルは食い入るように石を見ながら問う。
「そうだと思うよ。えーと…『八つの秘宝/すべて集めし者/命運の天秤/釣り合いし砌/常闇の口/いざ開かれん』って書いてあるから、集めてきた八つの鍵をこの天秤に載せるのだと思うよ」
ジェンスは本を俺たちに示した。
「どういう流れで、そうなるん?」
「『命運の天秤/釣り合いし砌』だろう?この大きな水晶と天秤を釣り合わせるには、ちょうど水晶の鍵を八つ分の質量が必要だと踏んだんだよ」
「ふーん、そんなもんやろか?」
「とりあえず試してみようよ。でも、そのあとの文、『八つの戒め/八つの呪い/解き放ちし術/無に無と悟れ』の意味が解らないんだけどなぁ」
ジェンスは本を見ながら一人でブツブツ言い始めた。
「でもな、鍵って鍵穴に入れるもんやん?お皿に載せるだけやったら鍵の意味ないことない…?」
この理不尽な島では今さら、そういうことは思わないほうがイイ。
ともかく、集めてきた水晶の鍵をぜんぶ取り出し、目の前に置かれている天秤の、カラの皿へ載せた。
最後の一つを載せてピッタリと静止させ、完璧に釣り合った瞬間、地鳴りが聞こえてきた。と、同時に目の前の壁が左右に分かれて開いた。
「スゲー仕掛けだナ!」
何だか分からないが、たしかにスゴい仕掛けだ。その奥には通路が見えている。
「この鍵、記念に持って帰ったらアカンのかな?」
アルが水晶の鍵の一つを皿からヒョイと持ち上げた。すると、その瞬間、壁は再び地響きを立てて閉じてしまった。
「バカ!何してんだヨ!」
「失礼こきまくりました。あんまりキレイやったもんで置いていくのんも惜しくて、ついつい出来心で」
アルはニタニタしながら急いで鍵を皿へ戻した。