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10、不思議の館



《不思議の館》



一つ

人居ぬ館

えのうらに





……………


 日も暮れかかったころ、一つめの秘宝のある館に着いた。どうやら誰も住んでいないようだ。


「勝手に捜してもイイのかナ…?」

 ボンが誰に向けてでもなく遠慮がちにつぶやいた。あつかましい野郎のくせに今さら何だ。



 見たかぎり、誰も住んでいないわりには荒れてもおらず、今の今まで人の気配でもあったかのようだ。



「ちょ~タンマ。なぁ、一つ素朴な疑問なんやけど」

 アルが片手を大きく挙げて疑問を口にした。


「秘宝秘宝って言うとるけど、秘宝ってどんなんなん?」


「そりゃ、秘宝っていうくらいだからサ、金塊とかキラキラした高価な宝じゃないの?」


 ボンが答えると、アルは考え込んだ。


「いや~、その、宝っちゅ~んがイイ加減やん。ピンからキリまであるやんか。米粒ぐらいの宝石かも知れんし、人を愛するラブリーなハートが宝かも知れんし」


「ハハハ~、うまいナ」


「ひひひッ、せやろ~?まあ、テキトーにソレっぽいのでエエか。はい、捜そ」

 アルは手を一つ打って皆を促した。イイ加減な奴だな。


「あ。注意書きがあるよ。え~と、秘宝は水晶でできた鍵だって」


「すごい!水晶やって。かっこエエなぁ」




 長い廊下にたくさん同じ戸が並んでいる。屋敷中の数ある部屋を一つ一つ見てゆくのは大変だから、手分けすることにした。


「あれ?さっきと同じ部屋やん。また同じ部屋、開けてもたんか?」

 俺について回っているアルが疑問の声を上げた。


「違う」


「え~。窓も家具も同じやんか。も~!同じ部屋ばっかりで頭こんがらがるわ!どこが違うっちゅ~ねん」


「花だ」


「花?前の部屋の花瓶にも花あったやん」


「花瓶の白い花が一本多い」


「いつの間に花の数、数えとんねん」

 そんなにすぐ数えられるわけないだろ。直感だ。


 部屋へ入り、水晶の鍵を捜し始める。


「こーゆーのんは、どっか隠してあると思うねや…」

 アルはブツブツ言いながら物色を始めた。


「あ!あった!」

 いきなりアルは額縁のうしろから透明な鍵を見つけ出してきた。



「めっちゃセコい隠し場所やな、こんなとこ隠して。ヘソクリみたいやし」


 普通なら引き出しや小物入れなどから捜すところだろう。隠した奴と同じひねくれた感性なのか?普通とは思えない。




「見つけてきたで~」


 集合場所に決めていた玄関口にはボンとジェンスがすでに着いていた。もうあきらめたのか、二人とも退屈そうにしている。


「どこにあったんだい?」


「どこって…絵ぇのうしろやけど」


「やっぱりそうかぁ」


「何がなん?」


「いやね、この詩が水晶の鍵のありかを表す暗号になっているみたいなんだよ。額縁のうしろにあったのなら確信が持てたよ」


 それを聞いてアルが目を輝かせた。二人とも、この手の話が好きな変人だからな。


 ジェンスは、くだんの本を開いた。


「一つ、人居ぬ館、えのうらに、ってあるだろう?水晶の鍵の一つが、人の住んでいない館の絵の裏にある、っていうことなんだよ」


「へぇ~!せやったら、あとも楽勝やん。えーと、次は大森林か」



 …こいつら、明らかに楽しんでやがるな。





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