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9、宮殿へ



《宮殿へ》



 近づくと、池みたいに小さな湖が見えてきた。その中心に浮かぶ小島に宮殿はあった。…しかし、宮殿といっても何だかようすがおかしい。



「めっちゃ小さいし!」

 いち早くアルがツッコミを入れた。


 たしかに大きさが変だ。宮殿をそのままの形で普通の一戸建てくらいに縮めたように小形だ。造りは豪華なくせに、しみったれて貧相だな。


「小人とかが住んでるんかな?」


「さぁ?それなら小さいのも説明がつくよね」

 アルの疑問にジェンスが答えた。



 宮殿の建つ小島へは正面にかかる橋で渡ることができた。近づいてみても、やはり小さい。


 宮殿へと入る。中は一本道だった。数歩ゆくと、もう突き当たってしまった。



 正面には小さいが装飾の豪華な扉がある。扉を開くと、両開きの戸の向こうには、茶の間のようにせせこましいが、それなりに威厳に満ちた部屋があった。


 そこには白装束に白髪、長い白ヒゲの爺さんがいた。残念ながらと言うべきか、爺さんは普通の人間の大きさをしていた。


 王の座るような椅子に座っているところを見ると、この爺さんが島の王なのだろう。この忌ま忌ましい御触れの元凶であり、悪の枢軸であり、実に腹立たしい。



 近づくと、白髪の爺さんは友好的な態度で俺たちに向かって何かを言った。しかし、何を言っているのかさっぱり解らない。聞いたこともないような発音で理解できない。


「古代の言葉だよ。書物が発見されていて発音は研究済みだから、たぶん少しだけなら僕でも解ると思うよ」


 ジェンスは言い、王のそばへ寄ってワケの解らない言葉を話した。感じからして相手と同じ言語なのだろうが、こちらには解らない。



「なぁなぁ。あれ、俺らが解らんことをエエことに、悪口、言うとったりして。このアホどもを今すぐ崖から落として魚のエサにしろ!とか」

 アルがボンをつついて言った。


「まさか。ンなことねぇだろ~」


「いや、分からんで~。堂々と悪口、言い放題やんか」

 アルはニタニタしながら言った。



 それからジェンスと王のやり取りがしばらく続いた。



「神のお告げどおり、異国から勇者たちが来た、と、おっしゃっているんだよ」


 お告げの勇者か。迷信っぽくてくだらんな。それが、この国の『伝説の冒険物語』というヤツか。



 二人は再び向き合って意味不明な会話を始めた。意味が解らない会話を目の前でされるのは、たしかにイイ気はしないな。



常闇とこやみの洞窟に大魔王がいる。大魔王を倒してこの国に平和を取り戻してほしい、だって」


 平和を取り戻してほしいと言われても、この島は十二分に、のどかで平和そうに見えるが。



「大魔王よりも鍵だよ、鍵!あれがなきゃ帰れないんだヨ!」

 ボンが言うと、ジェンスは爺さんに古代語とやらで言い直した。


「金の鍵は常闇の洞窟に流れ着き、今は大魔王が持っているはずだ、と、おっしゃっているよ」


 それを聞いてボンは眉根を寄せ、残念で不服そうな顔をした。


「あ。それと、常闇の洞窟には財宝も眠っている、と言ってらっしゃるよ」


「…財宝ッ??!」

 ボンとアルは、にわかに反応した。現金な連中だ。



 どちらにせよ、ヒマな悪趣味に付き合わねば、この変な島からは出られないというわけだな。考えただけでウンザリする。



「どこへ行きゃイイんだ」

 俺が投げやりに言うと、ジェンスはうなずき返し、王に話しかけた。


「常闇の洞窟は八つの呪いで閉ざされているから、八つの呪いを解くためには、この島に散在する八つの秘宝を見つけ出すのだ、と、おっしゃっているよ」


 ジェンスが言うことを裏づけるように、王はジェンスが開いて持っていた地図のページを指差して何か言っている。ジェンスは王に地図を見せた。





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