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2、古城へ 前編



《古城へ》



 晴天続きから一転、今日は下り坂なのか、梅雨らしく重苦しい空はどんよりとしている。遠くの空気までが白く霞んで見える。


 道中、何度も思っていることだが、何で俺までついてこなくっちゃならないんだ?三人で勝手に行きゃイイだろうが。



「あ!あれちゃうん?古いお城、見えてきたで」


 城だ。平野の向こうのほうに古城が見えている。丘の起伏の具合に隠れて見えていなかっただけのようで、それは突如として視界に姿を現した。


 地図どおり岬の突先にある。だが、それよりも、城の向こうにそびえる山とも何とも言い難い奇妙な物体が気になった。



「何やねん、あれ?スゲぇ!けったいな形やなぁ、ひゃははは!」


「アハハ!キノコだ、キノコ!命名、キノコ島!」

 アルとボンがそれを指差して肩を叩き合い、さもおかしそうにゲラゲラ笑っている。


 それは島らしいが、たしかにキノコに見える。よくもまあ、こんなに極端で奇妙な形になったものだ。


「あのけったいな島は宝とは関係ないん?」


「うん、地図には島のことは何も書いていないよ。ともかく、岬の形状からしても、あのお城に間違いはないよ。行ってみよう」


 三人はうなずき合ってから歩き出した。つれてこられただけの俺は傍観しつつ、あとに続いた。



 魚の干物のような生臭い潮のにおいが強くなった。その一帯には海風が強く吹きつけている。浴びているだけで肌や髪がベタつくような風だ。


 城は昔の様式で、苔か藻の類いが生えている石造りの古い外観をしていた。壁についている鎖が海風の影響なのか、ヒドく錆びついて赤茶けた汚れが壁に垂れて尾をひいている。


 だが、どこも崩れ落ちてはいないようだ。それにしても、こんな辺ぴな場所に人間なんて住んでいるのだろうか。



 開け放されたままの正面口をくぐる。床は、ひし形をした白黒のタイルで埋め尽くされている。それは規則正しく奥まで続いていた。


 陽光も奥までは届かず、目が慣れないせいか薄暗くて見通しが悪い。



「誰かいますか~?」

 よく通るけど間延びしたジェンスの声が玄関の広間に響く。


「誰もおらんのかなぁ」


「さあ…?きれいだし、誰か住んでんじゃないのかナ」


 ややあって、コツコツと足音が聞こえてきた。



「お客様ですか。いらっしゃいませ」

 現れたのは小綺麗ななりの小柄な爺さんだった。黒い品のある服を着、うやうやしく頭を下げる。ぜんぶ白髪だ。


「お客というか…」

 アルとボンは口ごもった。来た動機が不純だからだろ。住人のいる城の宝を狙ってちゃ泥棒だろうが。こいつらは、ハナっから誰も住んでいないとでも思っていたのか。


「そんな入口で何ですから奥へどうぞ。ぜひ、あるじにお会いください」

 爺さんはそう言い、先に立って歩き始めた。




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