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9、帝国の目論見



 じっちゃんが出てゆくと、ジェンスは俺のほうへ向き直った。意味ありげにニタリとする。気味が悪い。



「君は、いつ見ても父上に似て男前だね。そっくりそのまま若返らせたようだよ」


 急に何を言い出すんだ。気持ちの悪いヤローだ。



 俺は自分の容姿のことを言われるのは好きじゃない。どんな容姿だろうが死んで灰になりゃ、みんな同じだろうが。


 それに、親父なんかに似てると言われても嬉しかない。



「うるさい」


「ふふふ、照れなくてもイイよ。それはそうと、君は甘い物は嫌いなのかい?」


「ああ」


「残念だね。おいしいのに。女だけ、もしくは男だけしか相手しないのに似ている…きっと君は、人生において半分は損をしているよ。世の中には甘い物も辛い物もあるのに。…あ、茶柱」


 ジェンスは湯飲みを揺すりながら覗き込んで言った。…お前の言うことは意味が解らん。



「ティティスに行く仕事が入ったのかい?」


「そうだ」


「そうなんだ。じゃあ、ティティスが中央帝国に攻め滅ぼされたのは知っているのかい?」


「ああ」


「理由は知っているかい?」



 少し考えた。逆らったからだろう。それしか知らない。


「逆らったんだろう」


「あのね、帝国は何が目的だと思う?」


 俺に聞かれてもな…何が目的なんだ?噂では世界を我が物にしようとしていると聞いているが。



「世界征服か」


「平たく言えばそうだよ。…ここだけの話だけどね」


 ジェンスは菫色すみれいろの大きな目で上目遣いに俺を見、肩をすくめた。あまり声を大にできないことらしい。



「世界中の国々を手に入れようと思えば、君ならどうする?武力にうったえて、滅ぼしてばかりするかい?」


 話に間をとったのか、ジェンスは急須のフタを開けて中を覗いた。イイ物でも見つけたかのように一人でニタリと笑う。



「闇雲につぶすだけじゃあ国はモノにはならないよね。廃墟ばかりじゃ、どうしようもないもの」


 俺が答えずにいると、そう言葉を継いだ。



 そりゃそうだ。国を滅ぼしたなら領地は増えるかも知れないが、つぶさずに征服したほうが得る物が多いだろう。


 ジェンスの向かいに腰を下ろす。俺のか、じっちゃんのか分からない、半分残った飲みかけの茶をあおる。すっかり冷たくなっている。



「武力は十二分に持っているとして…いきなり攻め込むのじゃなければ、国を手に入れるには、まず、どうするか…自分に付くかどうかを知らなくてはならない。そのためには、その相手にとって困る手段で…例えば、取られたくないものを要求して出させるとかしてね、どれだけ逆らうか反逆度を試すんだよ」


 ジェンスは半ばひとりごとのように言った。



 何が言いたいのか解るような解らないような…まあ、ともかく言ってみりゃ、まつりごとというのは下層の俺たちには分からないところで、そんなことが国同士で行われているということなんだろう。



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