表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

「わたしの時間を、あげましょう」

作者: 埋木花咲

連載途中の暇つぶし程度の物語ですが

読んでいただけたら、とても嬉しいです。



連載中「死神様がいるセカイ」

http://ncode.syosetu.com/n7411cg/

僕がこの世界からいなくなったら。


そんな事を時折考える。

考えては、項垂れ、考えては、空を見る。


僕の世界はいつも真っ暗で。


答えはただ一つ。


誰にも悲しまれないままで。

何も変わらない。




ある日、僕の元に一人の少女が訪ねて来た。


彼女は言う。

「あなたの時間をください」と。


僕は笑って答える。

「あげられるほど立派なものじゃありませんよ」と。


少女は悲しそうな顔をして俯く。


だから僕は

「わたしの時間を、あげましょう」

そう言って、彼女が望むだけ時間を差し出した。




ある日、僕の元に一人の青年が訪ねて来た。


彼は言う。

「あなたの時間をください」と。


僕は笑って答える。

「何時間欲しいですか?」


彼は指を折り折り数え、ピースサインを僕に向けた。


だから僕は

「わたしの時間を、あげましょう」

そう言って、彼が望むだけ時間を差し出した。




ある日、僕の元に二人の男女が訪ねて来た。


僕は言う。

「わたしの時間を、あげましょう」と。


二人は笑って答える。

「今度はあなたにプレゼントです」


驚いて顔を上げる。


「僕らに時間をくれた、お礼です」

そう呟いて、青年が僕の目に手を当てた。




まず初めに、光があった。

そこに人影が二つ、揺らめいていた。


そしてそこには、色があった。




青年が言った。

「あなたの時間をください」と。


少女も言った。

「あなたの時間をください」と。


そして僕は答えた。

「あげられないほど、素敵なものです」と。


そして思った。

僕は何時間、彼らに与えたのだろうか、と。




その日から、僕の周りには、色が溢れた。

その色、ひとつひとつを並べて、小さな紙に世界を映し出した。


僕のその『作品達(こどもたち)』は世界中に羽ばたき、沢山の人に時間を与えた。

それは、美しいものを愛でる時間であったり、懐かしい思い出に浸る時間であった。




僕は今、最期の『時間』を創り上げる。


それは、真っ黒に塗りつぶされていて、とても汚かった。

だけど、それが僕自身が長く見てきた世界だった。


その中に、二つの点を置く。

それはさながら、あの二人のようだった。




ある日、僕の元に二人の男女が訪ねて来た。


青年は言う。

「あなたの時間をください」と。


少女も言った。

「あなたの時間をください」と。


そして僕は答えた。

「残り全てをあげましょう」と。




こうして、僕は、この世界からいなくなった。

そして世界は何も変わらなかった。


ただ一つだけ。


ある人は僕のために涙を流し、ある人は僕のために祈りを捧げた。

またある人は、僕の『作品達(こどもたち)』と僕の『時間』の本を書いた。


こうして、無くなったはずの僕の時間は、今だに刻まれ続けている。

盲目だった僕が視力を与えられて

絵描きとして活躍し、最後は自ら死期を選ぶ

というお話でした


あなたの『時間』は、価値あるものですか?

もし「あなたの時間をください」と言われたら、どうしますか?

そんなことを考えながら読んでもらえたら幸いです。

そしてその質問の向こうに答えが見えることを願っています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ