おっくう
エンピツ一本けずって
ノートに言葉を綴る
当たり前のことだった
慣れ親しんだことだった
パソコン 携帯 指先だけで
言葉を綴るようになってから
おっくうになってしまった
エンピツ一本けずって
ノートに
おっくう、を
ゆっくり書いてみる
お、のクネリ
っ、の払い
く、の引っ込み
う、の流し
いつかこしらえた鉛筆ダコが
ぺっこり凹んで笑っていた
一文字書いて
一息ついて
一文字書いて
一息ついて
浮かない顔していた
母の顔が浮かんだ
おっくうは
おっかあと
泣き出して
母の好きなたんぽぽ柄の
便箋と封筒を買いに出た