暴君様×変わり果てた晩餐/下弦の月夜
下弦の月夜とセットで1話です!
最初から読むと内容が繋がります!
暴君様は漆黒の似合う野郎である。
そして、時には光を放つ救世人物でもある。
なにを考えているかわからない腹黒天才暴君野郎は・・・
罪を犯した。
先を考えず自分を大切にせず主を立派にやってのける。
全ては自分に返ってくる。
全ては残された私たちが悲しみや苦しみを受け継ぐことになる。
薄暗くなった晩餐にやはり小さい子達は寝ただろうか?
高い塔の上に聳え立つ漆黒の王になりうる存在。
それこそ高貴なる純血である吸血鬼様である。
天変地異、この言葉に当てはまる。
昔で言うならご恩と奉公的な関係。
一条家と公家二使家。
純血の吸血鬼である家系と特別な血を持つ家系。
契約を結ぶことにより、特別な血は守られることになる。
しかし、私たちの代でそれは歴史上大変な結果を生む。
血を交換するなど今までそんな考えするもの、いや・・実行するものはいただろうか?
いないだろう。
そう断言できる。
私は、ほのかに温かい灯りを見てにこやかに笑う。
これから記憶が消える。
意識がない。
意識のない中で私は力に体を乗っ取られる。
ここからは、第三者からになる。
紅き瞳は速さで線に見える。
黒い闇に栄える町が炎に照らされる。
悲鳴と嵐の音、ガラス木が折れる音---・・・
燃え盛る。
「ぎゃぁぁぁぁああああああああああああああああああああああ!なんだ!!」
町中の人々が家を出る。
人々たちは反射的に身を守ろうと何が起こったのか確認しに外へ出ている。
しかし、それはマイナスの行動でしかない。
どの道、不幸しか待っていないのなら、何も知らず一瞬で死ねたほうがまだマシだ。
しかし、現実で現在で恐怖を感じながら死ぬと言うことはかなり勇気が要りそうだ。
でも、そうしてしまうのはこれまた人間の行動なのかもしれない。
人々は包まれた暗闇と熱さに犯人を見つける間もなく逃げ去っていく。
子連れの母親は転ぶ子よりも先を取り自分自身の欲に虐げられる。
現状で自分の足を引っ張るものは必要ない。
欲まみれた奴が案外生き残る。
それは、焼け死ぬよりもはるかに引ける。
人間の足では、それこそ一般の人には逃げる間に闇に追いつかれてしまう。
そこそこの足でも目の前の炎におびえ足がすくむ。
子供は高く泣き鳴くばかりで、信者は祈るばかりで・・
よい方向へとはいかない。
だって、漆黒で暗黒で地獄の業火、純血である吸血鬼。
今や意識のない強き者が暴走している。
=終わりの日を迎えるのだ。
そんなことよりも逃げるが勝ちだ。
頭を使うのがいいだろう。
それは今を生きるものの定めではないだろうか。
「あっははははははははっはーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー・・・・・ ・・・喉が渇いた・・もう、飲みたい・・・」
吸血鬼は空中で止まった。
大きく息を吸うと時限を狂わせるような衝動が起こった。
どこかの塔の鐘が鳴る。
どこかの塔の鐘が鳴る。
どこかの塔の鐘が鳴る。
どこかの塔の鐘が鳴る。
どこかの塔の鐘が鳴る。
それは食餌の始まりだ。
凍りついた体から見る見るうちに湯気のようなものが立ち昇る。
「なんだこれはっ!」
「神様!!!どうか!たすけてぇぇぇぇぇぇ」
「僕たちがなにしたって言うんだ!」
「うえぇーーーん!」
「早く逃げるぞ!!」
・・・・
・・・
・・
・
・
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア・・・・・。」
町の人数分の悲鳴が聞こえたと思いきや消えた。
ただただ家々が燃え盛る。
鐘の音がなり続ける。
無数の服や靴だけが乱雑においてあり、その中には白きものだけが見える。
【人々は骨と乱切りされた肉片だけが残された】
町は【無き海】に沈んでいった。
もう、透明なモノではない。
見えるのは鮮やかな血だけである。
吸血鬼はそれを飲み干した。
いや、・・・その液が勝手に体に吸い込まれていくようにも見える。
また、静かな晩餐になった。
晩餐はまだまだ続くのだろうか?
暴れた吸血鬼は何処かへと歩み去った。
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優しい月が彼を見つめている。
心地よい風が彼を包み込む。
湖に浮かぶ傷ついた彼は一条柊聖、いまや一条家の当主である。
湖の水が揺らいだ。
底から聞こえるのは綺麗な声。
「・・・水の精か?・・・」
『何をなさっているのですか柊聖様。貴方はここにいるべきではありません・・。』
湖から湧き出た1つの光が柊聖の周りをゆっくりと回っている。
どうしたの?と何回も聞いている。
「・・・俺には、もうあいつを止められない。・・・守ると老爺に約束したのだが・・。」
『やはり、あの者は貴方のところの子でしたか・・。あの血で変えたのですね?」
うなずくことなく何もいわずにいた。
図星だったからかもしれない。
水の精はくるくると回りそして、柊聖の体の中に消えた。
『貴方に私の力を貸しましょう。人々を救って下さい。あのものをその血で救ってやってください。』
光が彼を包んだ。
彼は悲しそうな顔をしていた。
しかし、決心したかのように、彼は水面にたった。
「・・・なにしてんだよ。」
彼もまた、闇に消えた。
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盛り上がる晩餐に人々は笑顔でいた。
しかし、隣町に誰もいないことを知らず、そびえる塔に誰かがいることも知らず盛り上がっていた。
そして、またあの変わり果てた晩餐会が始まった。
吸血鬼は欲を欲するがあまり次々の町へと出かけた。
人でいうショッピング。
人からいうと世界の終わり。
一日も経てば国の1/120は喰われている。
血を飲まれていた。
これが何回も続けば国一つ。
何年もかければ世界は終わっていた。
しかし、吸血鬼は今を生きている。
吸血鬼は・・・
主の下で働いている。
それは、世界が助かることを意味している。
しかし、現状の人々からは考えもつかない幸福だ。
闇から光が現れる。
その出来事は血を交換した日から1日半。
日が昇っている時間を除いた36時間。
吸血鬼は暗い月の下で変わり果てた土地で2人きり。
救世主と吸血鬼。
2人きりの密会が行われた。
「・・・君を救いに来た。」
吸血鬼は甘い香りに誘われて紅い目を細めた。
「柊聖・・様。・・助けて・・くだ・・。」
一瞬意識を取り戻したがまたもや力は吸血鬼、波瑠の体を押さえた。
「・・・俺の波瑠を返してもらうぞ・・。」