暴君様×逆吸血鬼
熟成パーティーから読むと話が繋がります!!
暴君様は残酷で冷酷な恐ろしい闇黒の帝王サマ。
冷血且つ美しき薔薇の棘にあたる、吸血鬼サマである。
しかし、だからといって葵様までもが吸血鬼ではない。
彼女は純粋な女の子である。
綺麗で可憐で素敵な女性でいてお優しい私のプリンセス。
そして、『特別な血を持つ』私は・・
吸血鬼サマ方に狙われし、もはや主人公である特別な人間。
変に言えば、特別且つ異常以上の血を持つ器である。
暑苦しい体温は涼しげな夜空と風でひやされつつある。
そして、私たちが走っている場所はどこか知らない湖の近くの草原だ。
風のように速く、まるで人の足ではない。
いや、そうなのだ。
本当に知ったわけではないが奴等を見た限り、あの言葉を聴く限り・・やはりこの方もなのだろう。
純血の吸血鬼。
それは、昔話にでてきそうなあの不死身で血を吸うという化け物だろうか?
『赤い瞳』
『純白の肌』
『尖った牙と爪』
『人間以上の能力を持つ』
まさに、今の我が主、暴君にあてはまる。
私が見てきた姿とはまるっきり違う。
甘い蜜の香りも青いきれいな瞳も今の姿からは一向にわからない。
でも、声は同じだし性格は少し違うけど似ている。
やはり、主なのだ。
先ほどまで見えなかった月光が湖に綺麗に映っている。
映った月を目指すように暴君は私を抱き上げて冷たい水の中を歩み進めた。
ドレスが濡れ始める。
月の中にすっぽりと入った。
湯気が出ている私の体は先ほどよりも視界が見えないほどに出ている。
「・・・すまない。俺が傍にいながら。」
暴君は悲しげな顔で私を見つめた。
それは、とても子供のようで悲しそうで、でも、心の強さはゆらいではいない。
ただしっかりと決意していた。
彼が出したのは、赤いドクドクな器を二個。
すると、月の当たっている部分の湖の水を両方汲んだ。
唇を鋭い歯でギュッと噛む。
滴る赤い血は1滴1つの器に入れられた。
血は混ざり見た目は透明なただの血水に変わる。
すると、私の首筋にその歯が近寄ってくる。
「なにするんですか!?」
「・・・・・・・。すぐに楽になる方法だよ、波瑠。」
私には恐怖しか残っていない。
それはとても残酷なもので特別だといわれても、私が他人ならきっとその事実を哀れんでしょうがないと思う。
特別な血を持つもの=私自身。
特別な血を持つもの=私自身。
特別な血を持つもの=私自身。
特別な血を持つもの=私自身。
特別な血を持つもの=私自身。
その前に私は、そんなことを望んでもないし生まれてからそんなことに関わったことはない。
記憶のないものにやってもいないことに、「貴女だ」と言われたって知らないものは知らない。
それが普通である。
しかし、私たちの関係は私がどうこうの問題ではなく何をしたからでもない。
脾肉で凝血して息が心臓が止まりそうなくらい過酷な現実だと思う。
やわらかく白い肌にその白よりも奇妙に真っ白な薔薇の棘のような歯がかすかに触れる。
吐息が妙にくすぐったくて体のそこからぞわぞわする。
ためらうように時間が流れた。
だが、改めて決心したのかその歯先は不覚にも深く突き刺さった。
感情が高まる時、人は目にある穴から塩分を含んだ水がこぼれてくる。
そして、白い真っ白い【モノタチ】へと零れ落ちた。
首筋には痛みと快楽と赤い血と涙と・・・歯の刺さった痕。
「・・・しょっぱいな。」
彼の歯には赤い血がついていた。
その赤い血を当然のように2滴2つの水の入った器へと垂れる。
それもまた無残にも無惨にも無慚にも透明な血水に変わった。
私と彼の血が入った血水と私のだけが入った血水。
鮮やかな月光に照らされた2人と2つ。
彼は私の胸の前に自分と彼の血が入ったほうの器を差し出す。
しっかりと私の血だけが入った器を片手で持ちながら。
そして、彼は紛れもなく・・・
『微笑んだのだった』
深みのある赤い瞳は悲しみの深さに等しい。
私はなぜ知らなかったのだろう?
なぜわかることが出来なかったのだろう。
その努力を知らなかったのだろう。
悲しくも私自身、体の暑さから気が遠くなる気がしていた。
気絶しそうなくらい頭の中も体の中も蒸発しそうだっだ。
知ることも考えることも不可能と言えた。
彼は唇に飲めと言わんばかりに押し当てた。
私は器を手にする。
私たちは同時に一秒の差もなく口にした。
清らかな湖・・。
月の影がそこに映っている。
そして、その部分に私たちはいる。
そして、異なる血を飲んだのだ。
私は息が苦しくなった。
何もわからないまま
そして、消えるように私たちは深く深く底へ底へと・・
沈んでいったのだった。
・・・
・・・・
・・
・
・
・
・
・・
・・・・
・・・
黄色い月。
きらびやかな星空。
青い湖。
ベランダの見える大きな窓。
赤い棘のある薔薇の入った花瓶。
高級そうなカーペット。
豪華な部屋。
純白の肌。
尖った爪。
目が覚めると何処かのベットに寝ていた。
目が大きく開くと我に戻った。
「生きて・・る?」
「・・・起きたか、波瑠。」
呼びかけたのは私の主暴君様。
暴君を見つめたとき高鳴る鼓動を抑えられなかった。
「・・・何かほしいのはあるか?」
体は冷め切っている。
「・・・温かいものが・・・・
【飲みたいです】」
・・・Are you thirsty?
Yes. My master.
---I'm thirsty.
(・・・君は喉が渇くのか?)
《はい。我が主。》
《私は喉が渇いています。》
暴君様は吸血鬼で、私は特別な血を持つもの。
そして、その血には何でも出来てしまう。
例えば、【血を交換するとか・・】