暴君様×蒼き瞳が輝くトキ
鋭い葵!が!!
一条家は目利きの達人である。
秘める思いの深さは誰よりも深く、闇黒なほどに底を見せない。
脳裏に何が写っているかなど見当もつかない。
ただ知るのは『人形』にも間違えられるほどの見かけが良いということだ。
誰にも本当の姿など見せない。
見せてしまったらそれなりの代償がつくからだ・・。
大学の帰り。
“自分に出来ることを考えろ”なんてことを言われたが何をすればいいかわからずにいた。
<ヵチャ>
「お食事をどうぞ。」
考え事は時間を忘れさせてくれた。
ただ、その時間何かかけていたような気がする。
皿を葵様の目の前に置くと袖を掴んできた。
上目遣いで何かを訴えているようだった。
葵様は傍のメモ用紙に手をかけた。
『元気がないけど大丈夫?』
そこには私を心配する言葉が書かれていた。
こういうところが私に気を持たせる。
いや、もうこの気持ちは違うものになっている。
“忠誠心”そんなものだろう。
というか恋愛感情を具体的にどんなものだったのか良くわからなくなってしまっている。
そうこう考えると答えるのが遅くなってしまっていた。
「はい。大丈夫ですよ、葵様。」
「・・・たやすく話しかけられるほどお前は偉くなったのか?」
(!)
「しっ失礼しました。」
長いテーブルの端と端。
葵様の向かいには暴君野郎。
遠いはずなのに心の中のそこまで響き渡る声だった。
その時、鋭く尖った瞳や唇が暴君野郎の目の前にあった。
声を大切にしているはずなのだが暴君の声よりも大きい声で放つ。
「お兄様!そろそろ私も限界でしてよ!なぜそんなに冷たいことしかいえないのです!波瑠はとても頑張っているというのに。波瑠は私の大切な方なのですからお兄様も大切にしてください!」
暴君野郎は目の色を変えずただそれを聞いていた。
暴君は食事台の上に膝を乗せ考えるような行動をした。
そして、ため息をつく。
「・・・言葉に騙されるのもたいがいにするのだな。言わせてもらうが葵。・・・・・・お前に優しくしているのは巫女に言われたからだ。それ以外に親しむつもりもない。吸血鬼は単独でいい。葵。お前も列記とした吸血鬼なら人間に慣れ親しむな。」
「へ~。では、お兄様には話しかけませんわよ。」
「・・・・・・・・・。」
そう、彼はつかの間忘れていた。
自分が吸血鬼ではないことに。
しかし、いい気分。
あの暴君野郎が言葉で負けているところなんて早々見られないものだ。
少し、にやける。
心が和やかになっているはずなのに1人だけまだ漆黒をまとっていた。
生き返ったルビーがサファイアの奥底で輝いていた。
<ヵチャ・・>
いつの間にか静かな空間になっていて鋭い金食器を置く音だけが響きわたる。
薄いピンク色の唇が彼を残酷にさせる言葉を放つ。
私は覚悟をしていた。
あの時の予言を聞いていてから、この日を待っていたのだ。
きっと天才暴君もいずれか、と思っていたのかもしれない。
闇が放つとき彼は微動だにしなかったのだ。
「そろそろ話していただきたいのです。
一条家当主のあなたの口から。
これまでの出来事とあなたが知っていること。
・・・しらばっくれても駄目ですわよ。全てこの心臓が宣告したことですから・・・。」
私は終えた晩餐で片づけを始めた。
そして、二方にワインを勧める。
「あら、お兄様。飲まないのですか?大好きでらしたでしょうに。」
「・・・飲むと制御できなくなるんでな。」
彼は、暴君野郎は、天才は、口を開く。
次回からあの暴君の語りが入ります!