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あたしだけの暴君様!  作者: 白木院 初
Round 2:時刻ミノ心臓
20/30

暴君様×心からの結び

どうぞ!

葵様は一人で宿命を負ってきた囚人である。

昔から絶えてきた彼女の宝石の涙は、


今、溶け流れ行く。

滴った涙は過去と共に去っていく。

けして、忘れてはならない。

しかし、心からの思いはそんなものを消してしまう。

ずっと彼女に苦痛を与えたくないのなら。

考えさせる時間を与えてやるなと、どこからか聞こえてくる。


それが心と心を通わせた者同士にできる、未来のための糧となろう。




カラメル色のまつげが静かに開いたとたん、固まっていたはずの雫は下へ滴り落ちた。

傾げていたはずの首や背筋がまっすぐになり、垂らした手が膝へと重なる。


「そのあと迎えが着たわ。目を覚ましたときには、お兄様がいて私を受け止めてくれたの。

・・・どう?貴女も同じ事をしたのよ?少し残酷な罰を受けてしまったけど。どうかしら?」


私は涙を流していた。

小刻みに震える手。


「・・・。あなたも引いたの?」


彼女の瞳は長いまつげで見えない。

それは、下をうつむいていることを意味していた。

小刻みに震えていたのは私ではなく葵様だったのだ。

長く生きているのかもしれない。

しかし、小柄な彼女の中に多大なる辛さ、苦しさが押し込まれていると気づくと胸が痛んでくる。


「葵様・・。」




<ギュッ>


「・・・。波瑠・・・。」


「そんなわけないじゃないですか!」


確かに呪いは惨いものである。

母のものであったこの心臓。

しかし、そんなことは関係ないことだ。

・・いや、少しばかり恋の感情は冷えてしまったけど・・


「波瑠はアルと同じ。人間でもいい子なのね・・。波瑠なら受け入れられる・・。」


人間は絶対に許せないのだろう。

あの家系も許せられないのだろう。

そう、彼女らは認識していた。


何年も何年もの月日を繰り返しても脱獄することは出来なかった。

囚人として囚われの身として利用されては利用されてきた・・・彼女たちの気持ちを考えずに。

人間でも吸血鬼でもこんなことを生み出したのならそれは災厄・・悪い奴なんだろう。

こんな心臓なけらばいいのに。

どうすればこの心臓が・・・消えるのだろうか。

しかし、それと同時に葵様が消えることを意味している。



「私は・・何も出来ませんが・・・この忠誠心は捨てません。こんなことでいやになる私の心ではありません。」


しっかりと彼女を抱きしめた。


「ぼ・・柊聖様もいますし、この私もいます。だから、その苦しみを少し分けてください。」


「・・・。恋愛関係はもてないかもしれませんよ・・」




























「え・・。わっわかってらしたん・・ででですかっっ!」


「そうよ。貴女簡単だからね。ふふっ。」




完全に失恋モードに突入である。

私はため息をついた。


「ごめんなさいね。貴女の心とてもうれしかったの。うれしかったの。こんな小さな世界の中であなたと出会い楽しかった。・・でも、恐くもあった。もし、私の正体を知ったらどうなるのかしらって。試すような発言もごめんなさい・・。どこか・・強い結びがほしかったのかもしれない。人間のようにすぐきれてしまうような関係ではなく、冷たい関係でもなく。温かく強い結びがほしかったのかもしれないわ・・。」


彼女はささやかな微笑みを見せた。

いつもの彼女のようにしかし、何処か吹っ切れたようだった。

私たちの心の中で確かなものを感じた瞬間だった。



いよいよこの最終です!


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