暴君様×出会い
奴はかなりのヤリテの大金持ち暴君である。
そんな生意気小僧の暴君様にはすっごく可愛げな妹様がいる。
体が弱くて不自由ないたいけな妹をかわいらしくほとんど一人で世話をしてきた暴君様。
よそから見ればいたいけなかわいそうな兄妹。
私から見れば・・・妹だけには優しい・・かなりの拷問っぷりの兄上様。
人を人と見ないその暴君さまさまな態度に、なぜか同い年兼お世話係の私。
公家二使波瑠
代々一条家に使えてきた伝統のある家系なのである。
使えるのはいいけど・・この暴君野郎だけには使われたくない。
だったら、いたいけな妹様にずっとついていたい。
ささやかな夢。
いたいけな妹様。
彼女は【一条葵】様。
細い白い手はまるで絹みたいに滑らかで繊細で、長いまつげとフアフア蜂蜜色の髪。
少し香るのはお花の蜜。
透き通ったアパタイト、いやサファイア並の綺麗さを誇る瞳。
なんともいえない人形のようなかわいらしさにいつもいつもため息をつく。
というか、私は彼女が大好きなんです!
衝撃の告白をします。
私は葵さまが好きなんです!
だから、べたつく兄貴野郎が気に食わない!
同じ瞳を持つなんて許せない。
そしてたまに、その瞳に見とれる私も許せない。
・・・
やはり、大金持ち特権の門の向こうの噴水に私は目が離せなかった。
綺麗な声でなく鳥や、滴る水と、手入れの行き届いた木々や屋敷。
綺麗。
金持ち。
そんな言葉しか浮かんでこない。
初めて、祖父からつれられた私は、父の後を受け継ぐことになる。
それは、私が20歳の誕生日を迎える1週間ほど前だった。
余計に美しさを際立たせた春空は薄い青で、目の前に立つ、よく似た色の瞳をした車椅子に座った【人形】と横に立つ【人形】が私たちを出迎えたのだ。
「ご機嫌麗しゅう、老爺。そして、ようこそいらしてくれました。孫殿。」
女の子の声でなんともいえない上品な言葉使いがまたもや私たちに頭を下げさせた。
まだ、名前の知らなかった私だったがすぐに気づいた。
【この人たちが私の使える・・・ご主人様だ。】
悲しくもそう思った。
だってどう見ても違いすぎる。私たちの立場と目の前にいるあの人たちじゃ。
そして、そう思わせる言動と姿に引け目さえも感じていた。
黙っていれば人形だって気づかれまい。
絶対的な自信がある。
そして、どこか私はほっとした。
人形なんて思われたくもないから。
なのに、いともたやすく私はそう思っていた。
かわいそう?
違う。
しょうがない?
そう、生まれてしまったのだからしょうがない。
今でも思うほど私はひねくれた考えをしていた。
祖父がお辞儀をすれば機械的に私だってする。
ご主人になるわけなのだから。
「坊ちゃま、お嬢様。これは孫の波瑠と申します。来週辺りから入らせていただ来ます。どうぞよろしくお願いします。」
「よろしくお願いします。」
頭を下げれば、彼女等は微笑むのだ。
こちらこそ。といって。終わらせた。
背中を向けた彼女等に私は、いい兄弟ですね。と呟く。
「・・・君もそういうのか。」
車椅子を引いていったご主人様はチラ見でそういう。
その言葉に妹だろうご主人様はただ暗く下を見た。
花々がご主人様たちの背中をかき消すように私たちの目の前を通り過ぎる。
私は目を見開いた。
自分の考えはこの人たちに受けてもらえるのではないか?
孤独だった私の希望と屋敷生活のスタートがここで開始された。
・・・
そして、今に到る。
「・・・波瑠!学校へ行くぞ!」
「わかってるって!」
私を変えたのもこの暴君様。
【一条柊聖様】
いえ、私は暴君野郎と言っています♪