暴君様×愛ナキ/雫に映る物語
蒼い姫からぜひ見てください!
葵様は未来を見ることが出来る。
それもこれもあの争いから後の事。
そこから彼女は変わってしまった。
しかし、一回だけ取り留めるきっかけを得る。
だが、しかし・・・
だが、しかし・・
また難関なモノが彼女を狂わせる。
感情あるもの全てが唯一、必ずといっていいほど狂うことがある。
それを一番わかっているのは、歴史を見てきた呪いの心臓のみ。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああ・・・。」
彼女は絶望の淵にいた。
<コンコン>
一つのドアの音が鳴る。
彼女は息を潜めた。
<コンコン>
彼女は静かにベッドから足を下ろした。
布団に包まりながらドアの前で誰だと問う。
すると男の声が聞こえた。
「葵さんはいらっしゃいますか?僕の名は・・・アルって言えばわかるかな?」
「ア・・・ル・・。」
その男は数年前、出会ったものである。
しかし、いじめられた帰りから会うことはなかった。
「入っていいかな?」
「ダメよ!」
即座に答える。
数年前といっても彼はもう立派な大人だろう。
こんな姿を見てしまったら彼もまた逃げるに違いなかっただろう。
彼女もそう思った。
ドアの鍵をすぐに閉め、その場から遠ざかった。
「・・・大丈夫だよ。僕は知っているよ。君の事。
“葵お姉ちゃん”。」
赤い目が元に戻った。
高鳴る鼓動も治まってくる。
恐る恐るも彼女はドアの鍵を開けた。
<ヵチャ>
『!!』
目の前には、彼女より50センチは違う男が立っていた。
しかし、顔からは昔のアルの面影を感じる。
「・・・失望したかしら。」
「いや・・そんなことはない。そうだね。噂はほんとだったんだね。葵お姉ちゃん。・・っていうのもなんかおかしいね。子供のままだと、ははっ」
「大人になっても良いのだぞ。」
そういうと彼女はくび元を触る。
「・・首輪は解けたのだから・・本来の力は発揮できよう。」
眩いばかりの光が放つ。
一瞬の出来事だった、彼女は見かけの10歳くらいから20歳まで成長したのだ。
「っきっ君は!?」
「私は吸血鬼。不死身といわれるもの。今度こそ退いたでしょう?」
彼女はなぜ、彼を追い出したいような口ぶりで言うのだろう。
私にそんな疑問がわいた。
しかし、彼は微動だにもしない。
「美しい・・。」
「・・・アル。やはり、この姿でいるのはやめるわ。」
するとまたもや眩い光が放たれる。
次に目を開ければ彼女は元の10歳の体に戻っていた。
「なんで、貴方は恐がらないの・・?」
「・・・僕は・・・・・そうだ。葵お姉ちゃん。」
「貴方なら・・・葵でもいいわ。」
そっぽを向く彼女。
そんな光景に目を丸くさせながらもまたにこやかに笑うのだ。
「僕の家へおいで葵。僕はね、君を迎えに着たんだよ。」
彼はそういうと彼女の腕を取る。
ドアを開ければそこに広がる風景は鮮やかな山々。
「君は今日から変わるんだ!僕が守ってやるからさ!」
「えっちょっと待ちなさい!アルっっなにをしようとしているの?」
なにも答えず彼は山奥へ走っていく。
山奥には大きな屋敷がたっていた。
「ここって・・。」
「僕の屋敷だよ。」
屋敷の隣には、大きな湖が広がっていた。
屋敷からは町並みが伺える。
しかし、そこだけは妙に静かで、でも、温かい匂い。
彼女はあることに気づいた。
「この湖、なにか・・・感じる。」
「あぁ、ここは代々僕の祖先が受け継いできたもので、月環の湖って言うんだ。ここには町を守る水の巫女とその精霊がいるっていう伝説だよ。」
湖の上を涼しい風が吹きつける。
神秘なる光景だった。
「ここでは、ある儀式が行われる場所。それは哀しいものなんだよ・・。」
「アル・・貴方はいったい・・・」
「それより、僕の家を案内するよ!来て!」
そして、また腕を取るのだった。
何かを隠しているそう思える。
・・・
2人はそれから暮らすことにした。
何もないわけではない。
いつのまにかにご飯も出来ていて、お風呂も、ベッドも綺麗になっていた。
そんな光景に、使用人がいるのだろうと思わせる。
しかし、静かなところには変わりはなかった。
ある日の夜。
彼女はついに問う。
「アル・・。聞きたいんだが、ここに人はいない・・・のでしょう?」
「・・あっ?気づいちゃった?」
「・・・そろそろ話してくれないでしょうか?貴方の正体。」
ベランダに出ていた彼女たちは息を潜めあう。
「僕は人間だよ。ただ、少し弱すぎるモノ。」
「弱い?」
「そう、ここで育ってきたから・・ここから離れると・・そうだな。君の前みたいな状態になる。つまり、力が弱まんだ。僕はこの湖に縛られている・・護衛だよ。ただそれだけ・・。」
悲しき目で彼はそう語る。
「じゃあ、いじめられていたのもそのせいなの?」
「僕が弱いからだよ・・。今も・・・かも知れないね。」
そして、にこやかに笑うのだった。
しかし、彼女はなぜかその姿に手を取る。
「アルはいつも笑っていますね。笑うということは高等な生き物にしか出来ないこと。アル、貴方は消して弱くはない。弱くしているのはあなた自身です。弱音をはいてはいけません。」
「・・」
彼は驚いた表情をした後、彼女の手を取り、夜空の月夜を眺める。
「・・アル」
彼は何も言わずに、ただただ空を見上げるのだった。
・・・
ある今宵。
赤き炎が町中を包み込んだ。
『争い』
『戦争』
そう呼ばれている。
「アル!町が!!」
「何!!はあっ!」
アルは町を見た瞬間。
急いで外へと出た。
「葵。君はこの屋敷の中でじっとしているんだ!決して来てはならないよ!」
「どうして!?」
「これは、僕の一族が果たすことだから・・・。」
<バタン --->
アルの姿が真っ赤な炎の中へと溶け込んでいった。
彼女はただただ見守ることにした。
「グハッ・・・」
静かな屋敷に響き渡る声。
その声につられて彼女は約束を破る。
決して見てはいけない光景が。
決して彼女は見てはいけない。
その光景が【月環の湖】に広がった。
「見てっすよ~。なんも香んないしおいしくないっす!」
「うむ。手遅れだったか・・・変えたれたんだろ?」
「そーだねぇ・・・退散して、実験で薬を作ってまたやり直せばいいさ。」
黒い影が一瞬見えたときだった。
湖に浮かぶまたしも影。
しかし、その影はピクリともしない。
そして、月が写る中で誰かが無慚な姿で発見された。
彼女はその2つの光景に驚いた。
「あれは・・・・」
彼女はとっさに足を動かし、影に寄り添う。
「ははっ。葵か・・。」
<!>
「なんで笑えるの!あんなに傷つかれでおきながら・・・アル!」
彼女は大きく彼を揺さぶった。
「だってさ。笑うって事はさ高等な動物にしか出来ないんだろ?
僕はね。うれしいんだ。
葵・・お姉ちゃんにあえて。この身に生まれて。
・・・俺は弱いやつだと思った。だけど、こうやって使命を真っ当出来た。」
「誰がこんな・・・誰がこんな・・」
彼女は涙を流す。
涙は彼の体に染み渡る。
そして、彼女は町並みを見た。
人々が焼け死に戦いあう。
喚き声、憎しみの声。
「人間は・・・なぜ同じものを殺す・・。欲のためだけに・・。
仲が良くても・・いずれは別れる運命だし。そんなの・・・哀しすぎるじゃんか・・。なぜぇっうっ。」
「・・あれ・・?葵、君はその心臓をもっているのか・・?」
「・・アル?」
「そう・・か。君が僕の守るべきものか・・。ははっ・・」
彼は彼女の腕の中で力を弱める。
そして、頬に手をあてた。
「葵・・。僕さ、実は・・・・・」
彼女の頬に血の跡がついた。
「君の事、初めて会った時から好きだったんだけどな・・・。けして、役目じゃなくて・・・。」
「っっアル。・・・他に隠しているものがあるでしょ?」
「・・・僕はね・・・。君のその心臓と特別な血を守るためにいる一族。
・・・でも、それも僕の代で終わりだ。」
そういうと笑った顔で彼は息をふき取ったのだった。
「アル?・・・ ・・・ ・・私もよアル。」
彼女は何度も彼の体を振り、そして、優しく抱きしめたのだった。
次に形のない方へと目を移す。
「あのものも・・哀しい運命。人間は脆いがゆえに儚い。すぐ傷つき傷つけ・・。
それを繰り返す。愚かなモノ。」
誰のせい?
誰のせい?
誰のせい?
人間のせい?
人間のせい?
私がこんな思いをするのもこの心臓のせい。
この体のせい。
アルが死んだのは役目のせい。
家系のせい。
私を守ったせい?
この心臓を守ったせい?
なんでも不幸な私のせい?
強く握り締めた拳から血が流れる。
「まずは争いをやめない人間からだわ・・。」
漆黒の女王が誕生した。
闇黒に染まれし吸血鬼。
月夜の中で赤い光が線を描く。
吸血衝動でもなければただの気まぐれでもない。
これは、憎しみから生まれた愛ナキものの破壊である。
次は・・・【暴】ですw