暴君様×最古からの囚人
嵐がまたキマシたぁァァ!
ぜひ!最初から読むとなるほど!ッてなります!
暴君の妹は一条葵という。
この子は、私が一条家に着たばかりの頃、優しく接してくださった方である。
可憐で機敏で綺麗で毎日仮想していたくらいだ。
体が不自由なのに心は誰にでも優しい。
そう、暴君野郎とは正反対である。
彼女は早朝に薔薇の傍で倒れていた。
しかし、その原因をわかるものはその場にはいなかった。
私だけがこの屋敷内に滞在していたのである。
もちろん案ずる私はどうしてか聞くのだが、その薄く綺麗な口から重々しい内容を聞くとは知らなかった。
不意打ち。
そう、訓練してきた私が不意をつかれたのだ。
いとも簡単に警戒もなく。
まぁ、それは当然なのだろう。
心を託した相手にまさか知らぬものがあるなんて思いもしない。
ましてや嘘や真実を隠されていたなんて思うまい。
それほどまで激愛していたのだから。
尊敬していたのだから。
聞いたとたん私はこれほどまでに不幸な人はいないと思った。
いや、食べれないことよりも空しいことはないが、すっぽりと心の中に穴が開いた。
自分で自分を悲しい奴と思った。
一番嫌いな思われ方を自分自身で成し遂げた。
私は何もかもが悲しい物語。
私は何もかもが悲しい物語。
私は何もかもが悲しい物語。
私は何もかもが悲しい物語。
私は何もかもが悲しい物語。
私は何もかもが悲しい物語。
---で終わると知っていた。
葵さまは胸をきゅっと掴み。
これまで見たことのない冷酷な瞳で自分の体を憎むのだった。
自分の存在や人生を悔やむのだった。
「・・この心臓は瑠子亞のモノ。この体の中に全ての記憶が刻まれている。そして、未来さえも・・・。」
「どういうことですか?記憶って・・未来って。」
私は悲しき囚人の話を聞く。
囚われた小さい体から吐き出た呪いを聞く。
--お母様の心臓は、代々、公家二使家と一条家を渡り歩いている最古からの心臓。
つまり、心臓は何回もの手術でいろんな体に移り変わっていった。
その後遺症なのか、受け継いでいた自分の世代の記憶も同時に受け入れられているらしい。
だから、自分が生きてもいないはずなのに昔のことを覚えている。
いわゆる【転生】しているということと同じことかもしれない。
お母さんの次に葵お嬢様が選ばれ心臓を変えられた。これが事実である。
しかし、動き続ける心臓には普通寿命があるはずなのだ。
だが、その心臓は【時刻ミノ心臓】と呼ばれ、歴史書みたいな役割を果たす。
だれが、何のために造ったのかはわからない。
昔の話だからだ。
その心臓も粉々に燃やされたら終わったしまう。
これは普通だ。
しかし、そうならないように備わっている能力がある。
それが、透視能力とでもいっておこうか?
・・未来を見ることが出来る。
予測が出来る。
危険なことを知ることが出来る。
すなわち、この心臓には過去も未来も現在も、全ての次元を知ることが出来るのだ。
だから、消えない。壊れない。不滅なのである。
しかし、心臓と違って体は老いてしまう。
人間だったらその分の寿命まで生きるし、吸血鬼の寿命もあるかもしれない。
自殺と考えるならそれは出来ない話。
そう。もしかしたら自殺が起きるかも知れない。
しかし、自分自身で死ぬことは出来ない。
心臓が体を占領している限り。
自分の感情だけでは死ねないのだ。
これを聞いて幸運か不幸か・・・どっちといえるだろう。
自殺はいけないことだ。
しかし、この出来事を知り人生を生きるのはどうだろう?
公家二使家と一条家がこの心臓を守るため、その身を閉じ込める。
・・囚人。囚われた者。
最古から守られてきたこと。
昔からずっと囚人だったのだ。・・・--
「悲しい過去があるのよ。自分のことじゃないのにくっきりと思い出す。そして、同じ感情を持つこともある。窮屈な空気と太陽と世界しか私にはないの。誰もが私、いえ私たちを高価な人形扱いで見てきた。・・・貴女はどうなのかしら。私の姿をしって・・?」
「私は葵様が大好きです。どんな記憶があっても、能力があっても
・・優しいお嬢様には変わりない。」
そうだ。
彼女は変わらない。
昔に同情したって、今の生活は葵様の意思。
葵様の意志で生きていらっしゃる。
私は幼い葵様に寄り添った。
まだ、こんな年なのに・・・。
しかし、この心臓はお母様でもある。
恋しているのがお母様なんて、少し面影さえも感じる。
前よりも恋愛対象が薄れてしまっている私も確かにいた。
彼女はにこやかに笑う。
強い風が吹き荒れた。
薔薇の花弁と共に私たちの間を切り裂くように。
まさに彼女の・・な顔を隠すように。
吹き荒れた。
それは、これから起きる彼女が壊れることへの合図となる。
強く強くカレタチは騒ぎ発てる。
「・・はっ・・・・・・・・・!?」
心臓の高鳴りと息を吸う音が同時に起きた。
「そんな・・・まさか・・。」
「私は、二世代バンパイア。貴女が思っているより長生きしてよ?そうね・・・230歳くらい年上かしらね?ふふ・・・。
人間なんか・・真実を知ったら、今までどおりなんて行かないの・・・・
忌み嫌うの。私を・・・憎んで憎んで・・・・・しまうでしょ?」
冷酷で闇黒で漆黒の吸血鬼。
彼女は一条家のもの。
そう、暴君野郎の妹。
妹でも違うと思っていたけれど・・・血が繋がっているなら、しかも、彼は純血なのだから・・・
葵様も、吸血鬼というこれまた重いものを背負っていた。
囚人という傍ら吸血鬼も任されている。
それもこれも全ては私たちが入れ替わったことで起きるものだった。
そんなことは今の私には考えられていなかった。
その理由も考えられなかった。
次何がおきるのかッッ